奈良市の北の辺りを車でブラブラしていて、法華寺の近くにある海龍王寺に立
ち寄ってみました。こじんまりした門構えのひなびた感じのお寺で、境内も広い
とは言えないながら、これが国宝や重要文化財の宝庫、731年光明皇后の発願
になるという古刹なのです。奈良にはこんな名刹が結構たくさんあるのですが。
私たちが訪れたとき、奈良テレビの取材が来ていました。夕方のニュースでお寺
の様子を流すということ。境内いっぱいに咲く雪柳がそれは見事でした。自生し
ていたものを、今の住職のおじいさんの代に整備したのだとか。ほの赤い桜と白
い雪柳のグラデーションも美しく、決しては華やかではありませんが、気負いの
ない、さりげないお寺のたたずまいに心和みます。「自然体」という言葉が思い
浮かびました。
遣唐使として唐に渡った玄昉が帰路嵐に会い、海龍王経を必死で念じたところ、
無事に日本に帰り着き、このお寺の祖となられたということです。東大寺や法隆
寺などの壮麗さ、このお寺のような古さびた控えめな静寂、奈良のお寺の奥深
さを感じました。