キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

秋の山辺の道を行く2

2018-09-28 10:46:42 | 歴史
               

               「ふすまぢを引き手の山に妹を置きて山路を行けば生けるともなし」

               万葉集巻二ー二一二の柿本人麻呂の歌です。「亡き妻を引き手の山に

               おいてたどる山道は、生きた心地もしない」妻との別れを痛烈に

               悲しむ歌です。山辺の道の途中衾田陵という御陵のそばに、犬養

               孝先生の字になる歌碑があります。千三百年以上も前、この道を

               悲しみに暮れて歩いた一人の男がいた。その思いを美しい言葉で

               詠み、それが今の世に残されて、秋のとある日、初老の私がその

               道を辿っている。思えば不思議に浪漫を感じることではあります。

               

               日本最古の道と言われる山辺の道は、今の奈良桜井から天理、天理

               から奈良へと通じる道でした。今回はその南道を天理から桜井の方

               向に歩きました。天理の起点は石上神宮です。日本最古の神社の一

               つで、うっそうとした森に囲まれた荘厳な雰囲気の神社です。

               

               天岩戸の故事に関係があるということで、神社の周辺や境内には

               たくさんの鶏が徘徊して鬨の声を上げているのは面白い光景です。

               

               昔は大寺であった内山永久寺跡。今は歌碑一つだけで、潔いくらい

               何も残っていません。永久寺という名前がある意味ふさわしい?

               山の辺の道マップを持って歩くと、立ち寄りスポットとそこまでの

               距離所要時間が書かれていてます。

               

                   

               内山永久寺の後に、夜都伎神社に立ち寄りました。名前のように

               うっそうとしたほの暗い木立の中の静かな神社でした。

                山の辺の道ははるけく野路の上に乙木の鳥居朱に立つ見ゆ

               広瀬東畝という日本画家の歌だそうです。山の辺の道を詠んだ美

               しい歌です。この歌のように、朱色の鳥居があるはずなのですが?

               石の鳥居しか見つけられませんでした。

                   

                   

                   

               道の所々に歌碑が立っています。万葉の、それも柿本人麻呂の歌が

               多いようです。

                あしひきの山川の瀬の響るなべに弓月が嶽に雲立ちわたる

               これも柿本人麻呂の歌。雄大な情景歌です。

               

               

               この辺りは大和古墳群の一角で、小高い山で、側に池がある所
             
               はたいてい古墳のようです。犬養先生の「ふすまぢ」の歌碑の

               すぐそばには、西殿塚古墳という比較的大きな古墳があります。

               継体天皇の手白香皇后の衾田陵ということになっています。卑

               弥呼の墓という説もあるそう。古代ロマンの香り。

               

               

               九月の末にしては暑く、途中でそうめんなど食べながら、汗だくで

               長岳寺までたどり着きました。南コースのちょうど中間地点です。

               弘法大師創建の古刹です。大寺ですが、静かな雰囲気のお寺で、花

               の名所、紅葉の名所でもあります。かなり歩いてようよう辿りつい

               いたので、疲れ切っていて、詳しく拝観する元気がなく、惜しいこ

               とをしました。

               

               お寺の内外にたくさんの猫ちゃんがいて、我が物顔で徘徊してい

               ます。鷹揚なお寺なんですね。

               石上神宮から長岳寺まで八キロほど、日ごろ歩かない私にはなか

               なかの距離でしたが、彼岸花の咲くのどかな田園風景の中に、古

               代を探す、楽しいハイキングでした。            
コメント
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