★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

乾くるみ『イニシエーション・ラブ』

2011年02月18日 | 小説・漫画・書籍
最近、色々と本を読んでいたのですが、今日は、その感想を。
乾くるみ著、『イニシエーション・ラブ』。



久々に、

( Д ) ゜ ゜ !!!!!!!!

ってなる鮮烈的な叙述トリックミステリを読みました。

私にしては、かな~り珍しく、恋愛物だったりします(*^^*)b
ええ、男女の恋愛小説ですよ。
BLじゃなくってね。

BL以外の恋愛物って、あんまり読まない私にしては、ホント、珍しい。


と・は・い・え!!!!!!
この小説は、普通の恋愛小説ではなく・・・。
私自身、その作家さんのご著書を読むのは初めてだったのですが、とにかく、帯についていたキャッチコピーに物凄く興味を覚えて。それで、読み始めたですよね。

「必ず、再読したくなる!」
「一見、普通の青春恋愛小説。でも、最後の2行で全く違った小説になる!」
「最後の2行は絶対に最初に読まないで!」
「凄い叙述トリック!!」

などなど。

めちゃめちゃミステリらしい、そのキャッチコピーに惹かれたと言うわけです。


物語は・・・というと。

この小説は、sideAとsideBの二部構成。

舞台は現代ではなくて、バブリー色の強い1987年。
主人公は大学4年生の鈴木夕樹という男子。
恋愛に関しても、オシャレに関しても、全くの奥手で、女の子と付き合った経験のない真面目なオトコノコです。
そんな彼が、人数合わせのためのピンチヒッターとして合コンに呼ばれます。
けれども、古風な彼は、合コンで知り合ったような男と簡単に付き合う女の子なんかと付き合いたくはない・・・と、乗り気じゃないまま、とりあえず参加。
がしかし。
その合コンで、古風で大人しくて真面目そうな、成岡繭子という歯科衛生士をやっている20才の女の子に一目惚れ。
互いに惹かれあった2人は交際を始め、やがて、心も身体も結ばれます。
そして、これまでは学校とバイトだけだった彼の生活はガラリと変わり。
彼女と過ごす幸せで充実した毎日に。
ラブラブで幸せ絶頂の、嬉し恥ずかしい恋人時代~~~♪♪

・・・・・・というのが、第一部、sideAのお話。


そして、物語は、第二部、つまりsideBへと進みます。

時は流れ、鈴木は、大学を卒業し、社会人に。

もともと、東京の大手企業に内定を貰っていた彼ですが。
静岡にいる繭子と離れたくないために、その内定を蹴って、静岡の企業に就職。
けれども、入社早々、才能を評価された彼は、2~3年の間、東京本社への派遣が決定されます。
東京へ派遣されるというのは、将来の幹部候補生になるということ。
つまり、将来の出世を約束される、誰もが憧れるポジション。
けれども、繭子をを置いて、静岡-東京の遠距離恋愛になるのを恐れた彼は、全然嬉しくありません。
しかし、これは会社の辞令。断るわけにはいかず、結局、鈴木と繭子は遠距離恋愛へ。

この頃になると、2人の関係も、ちょっとマンネリ・・・というか倦怠期に入っていたのですが、遠距離になることで再燃。

鈴木は時間的にも、金銭的にも、かなりの無理をして、毎週末は静岡に戻り、繭子との時間を維持しようと努力します。でも、慣れない東京生活に、段々と体調を崩していくのでした。

繭子は相変わらず、一途に鈴木のことを想ってくれているのですが。
やがて、鈴木は、東京の生活にも慣れ、東京での仕事も評価され、更には、東京本社で一番人気の、才色兼備な同僚・美弥子に告白されたことでどんどん自信を付けていきます。そして、そんな彼の心は、静岡の繭子から離れていき、美弥子と二股をかけるようになるのです。


学生の頃は、「自分には繭子しか居ない。彼女と一生を添い遂げるんだ」と固く心に誓っていた鈴木。
そんな誓いを破って、繭子から心が離れていく自分自身に腹を立てたりと、色々と葛藤する鈴木。

しかし。
「この人しか居ない!」と熱く想うのは、恋愛経験の中における、一種の通過儀礼・・・イニシエーションなのではないか?
子供から大人になる過程での恋愛。
それを経験し、そして、その恋愛から卒業することで、人はやっと大人になる。

自分と繭子の関係も、そのイニシエーション・ラブで。
それを卒業して、自分も一人前の大人になるのではないか?

そんな風に割り切った鈴木は、繭子に別れを告げ。
美しくて、頭も良く、家柄も良い、完璧な女性・美弥子に乗り換えます。

そして、クリスマス・イヴ。

1年前は、「繭子しか居ない!」と熱烈に想い、幸せだったのに、次のクリスマスでは、美弥子と一緒に過ごしながら、なんとなく別れた繭子のことを哀れんでいる鈴木・・・・・・。


・・・・・・・と。これがsideBのお話。

ひと組のカップルの、出逢い→熱烈な恋愛期→倦怠期→遠距離恋愛期→破局を描いているお話。
切ないですよね。
あれだけラブラブだった2人が、ちょっと遠距離になっただけで、すぐにこんな風になっちゃうなんて。
私は、繭子という女性は、正直、あんまり好きなタイプじゃなかったけど。
それでも、凄く可哀相で。段々破局に向かう2人の物語を読むのが辛かったです。
学生で、まだ世界が狭かった鈴木。
けれども、社会に出て、東京で働き、自信も付けていき、段々とその世界が広がって行くに連れ、鈴木は繭子とは違う世界を見るようになっちゃったのですよね。
置いてけぼりにされた繭子。鈴木との間の子供を堕胎までしたのに。
鈴木って、なんて酷い男なんだ!


・・・・・・・・・・・と思っていたのですが・・・・・・・・・・。

まさしく、ラストの2行で、「なんとっっっっ!!!!!!(゜□゜;)っ」という、キョーレツな真相が分かるのです。


まさしく、

( Д ) ゜ ゜ !!!!!!!!

って、なりました!!!!!!!!!!!!!!!!







【以下、ネタバレ感想】







いや、最初から、「??????」と疑問に想った点は多々あったのですよ。
でも、その「??????」の理由がハッキリ分からないまま、モヤモヤしたまま読み進めていたわけですが。

ラストの2行で、そのモヤモヤは払拭されましたです。
すごくスッキリしたというか、「ああ、だからか~」と納得。


とりあえず、繭子のコトですが。

この小説は、sideAもsideBも、主人公鈴木の視点で、鈴木の一人称で描かれています。
特に、学生編のsideAは、鈴木は繭子にベタ惚れで、夢中で、メロメロ。

正直、「お前等、ちょっとウザイ」って想うほどのラブラブっぷりです。
まるで、「世界は2人のために♪」(←古)状態。

がしかし!
正直なところ、私は、繭子が、学生だった鈴木が思っているほど、古風でも、真面目でも、清純でもないと想っていましたですよ!!!
鈴木よ、お前は、絶対に騙されている・・・・・・・・・と。

つーか。
丸々1章をかけて、鈴木が繭子と初めて結ばれるシーン・・・つまり、2人が、童貞・処女を捨てる過程が描かれていた訳ですがね。

それを読んで、私、絶対、「繭子は処女じゃねぇ(--;」と確信しました。
カマトトぶって、童貞君は騙せても、女の目は騙せねぇよ、ケッ!ってね(笑)

だから、私、繭子は全然好きじゃなかった訳ですし、彼女には、絶対になにか裏がある・・・とは想っていたのですが。
その「なにか」が何なのか分からず、ずっとモヤモヤしていました。
「なにか」に思い至らなかったので・・・。
ただ単に、大手企業に内定の決まっている初心な男子大学生を騙して、「将来」を手に入れたいのかなぁ~くらいにしか想ってなかったのですよね。

あと、何かと挙動不審というか。
繭子は、鈴木のことを恋人になってからは、「たっくん」って呼ぶのですよ。
鈴木は、「夕樹」と書いて「ゆうき」という名前。
「たっくん」なんて全然関係ないじゃん。
それは、まあ、繭子なりの理由があって。
「ゆうくん」とか「ゆうちゃん」という呼び方は、学生の頃に、そういう名前で嫌いな友達が居た・・・と。
だから、「夕樹」の「夕」という漢字が、カタカナの「タ」に似ているから、それで【たっくん】。
・・・・・・まあ、そう説明されれば、まあ、ニックネームってモンは、得てしてそういうモンかぁ~とも想うけど。
とはいえ、小学生じゃあるまいに、そんなニックネームの付け方って、ちょっと強引過ぎるというか、無理が無いかなぁ~と。


それから。

時々、変だと想ったのは、その時代背景。
私は見たこと無いし、タイトルしか知らないですが、その当時に流行っていた『男女7人夏物語』とその続編『男女7人秋物語』というドラマに関すること。
そして、国鉄が分割民営化され、JRと名前を変えたこと。

ここら辺の時代背景が、sideAとsideBで、混ざってる気がしたのですよ。

お陰で、読んでいる間中モヤモヤしていたし。
繭子も、単に、清純なフリをして将来有望な大学生をゲットしたかっただけだとしたら、sideBの繭子は、あまりにも可哀相過ぎる・・・と切なくもなったりしていたのですが。

ですが。

なんと!
ラストの2行で、物語の真相はガラっと変わったのです。

てっきり、鈴木と繭子の2年間の恋愛の軌跡と想っていた、この小説が。。。。
sideAとsideBが、同時進行・・・・・・つまり、同じ年の出来事だったことが分かるのですよっっっっっ。

すなわち。

sideAに出てくる大学生・鈴木夕樹、ニックネーム「たっくん」と、sideBに出てくる社会人・鈴木、ニックネーム「たっくん」は、別の人物だったのです。

だから、ドラマとか国鉄の民営化とかの話が混ざっていた訳だ、変だと想ったんだ!


どういうことかというと。

繭子は、もともと、sideBの方の鈴木辰也と付き合っていた訳。
でも1987年、鈴木辰也・「たっくん」は、社会人になり東京に異動。
もしかしたら、自分は「たっくん」に捨てられるかも知れないと想った繭子は、次なるキープ君に、大学4年生の奥手な男子、鈴木夕樹・「たっくん」を選ぶわけですね。

「ゆうき」という名前に、こじつけで「たっくん」とニックネームを付けたのは、同時進行で2人の男性と付き合うことで、名前の呼び間違いが起こったりしないよう。
実際の所、辰也の二股がバレたのは、繭子のことを「美弥子」と呼んでしまったからであり。
そう想うと、同じ二股をかけていても、辰也より繭子の方が一枚上手だったということになりますね。


こうして、東京に異動した鈴木との付き合いの合間を縫って、大学生鈴木と付き合う繭子。

確かに、彼女がsideAの大学生鈴木と会っていない合間の時間は、sideBの鈴木との時間・・・とピタリとハマるのですよね。

大学生鈴木とのデートを体調不良でキャンセルし、「便秘が酷くて入院して、出して貰ってきた」と言った繭子。あれは、社会人鈴木との間の子供を堕胎手術していた事。

女の子の一人暮らしで、ご近所の目がある・・・と大学生鈴木を頻繁に家に連れて行かなかったは、社会人鈴木が彼女の家に、毎週末出入りしているから。

大学生鈴木との2度目のセックスで卑猥な冗談を言ったり。
ラブホテルで積極的になったりしたのは、彼女が、そういうことに既に慣れていたから。


はたまた。
社会人鈴木は、繭子と別れたことで、クリスマスイヴに過ごす高級ホテルでの宿泊や食事をキャンセルするわけですが。
あのバブリーな時代。
クリスマスイヴのホテルは、宿泊も食事も、かな~り前から予約を入れておかないと、絶対確保できない。
そして、大学生鈴木は、「クリスマスイヴは高級なホテルで過ごしたいねv」という繭子の為に、ホテルに問い合わせ・・・・ちょうど、タイミング良くキャンセルが出たので、そこをゲット。
まるで狙ったみたいに、タイミング良く出たキャンセル。
それは、繭子が、社会人鈴木のキャンセルしたホテルを、大学生鈴木に取らせた訳ですね。


などなど。

sideAとsideBが、ピタリとハマリながら同時進行で進むのですよ。

遠距離になってから、必ず静岡に会いに来るのは、社会人鈴木の方。繭子から、東京に行ったことは一度もない。
それは、大学生鈴木と付き合っていたから。
「無理してまで、毎週、会いに来なくても良いよ。体を大事にして」
と社会人鈴木をいたわる繭子だったけど。
実際の所、繭子にとって、社会人鈴木は、東京に追いかけていくほど必死につなぎ止めておきたい相手ではなく。
いざとなったら、大学生鈴木で良かったのでしょうね。
いや、寧ろ、自分がうまく主導権を握れ、しかも、大手企業の内定を取っている真面目な大学生鈴木の方が良い・・・と想っていたのかも。

sideAのラストとsideBのラスト。
両方ともクリスマスイヴですが。
これは、同じ年のクリスマスで。

繭子を捨て、彼女を哀れんでいる、sideBの社会人鈴木ですが。
一方の繭子は、彼がキャンセルしたホテルの部屋を、sideAの大学生鈴木に取らせ、幸せで甘い甘い、クリスマスイヴを過ごしている・・・という。

うわ~~~、これは、本当に気が付かなかった(@A@;
見事に騙されました。
どう考えても、1987年から1988年の、鈴木と繭子の2年間の物語にしか読めなかったよぉ。

繭子が変だ・・・とは想ったのですが。
まさか、時系列がバラバラな同じ1987年の出来事だったとは!

見事に、騙されました(*><*)!!!!!


ここまで、ガッツリ騙されるというのも、なかなかに気持ちが良いもので。

ホント。
可哀相だった繭子が、一変して、怖すぎる女に大変貌!

叙述トリック、凄すぎです!!!!!!!!!!
つか、一瞬でも、繭子可哀相・・・と想った同情を返せ~~~~!!!!!(笑)

いやはや。

女性って怖い。
自分も女性だけど、そう想いましたです。

私も男性に生まれていたら、繭子みたいな女性に騙されていたのかも知れませんね(笑)

面白い叙述ミステリでした!

男性諸君、気をつけたまへっっっ( ̄v ̄)b