昨日はケータイからで、詳しい感想が書けなかったので・・・。
今日はPCから、感想を書いてみました。
10月25日発売の、藤木稟さん著『陀吉尼の紡ぐ糸 探偵・朱雀十五の事件簿1』。
この作品は、以前、別の出版社から刊行された、藤木さんのデビュー作とのことで、絶版になっていたのが、今回、角川ホラー文庫から復刊されました。
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私は発売日当日にゲットして、半日没頭していたのですが、その翌日、翌々日と本を開く機会がなく・・・昨日の日曜日に読み終わりましたです。
と言うわけで、面白くて没頭しちゃって、約2日で読み終わった・・・ということですね(^^)b
私は、藤木さんの作品は、『バチカン奇跡調査官』シリーズしか読んだことなかったのですが、奇跡調査官とはまた違った世界観の物語でとても楽しめました。
さて。
どんな物語かというと。
舞台は昭和9年の浅草。
でも、この事件の発端となるのは、もっともっと時代を遡って、明治29年の浅草。
高等学校の生徒達数人が、夏期休暇の最終日のちょっとした冒険・・・ということで、肝試しをしたあと、吉原で女を買おう・・・という計画を実行します。
夜の神社に集まった仲間達は、それぞれ自分が知っている怪談話を語り、蝋燭を吹き消していくわけですが・・・。
最後に、藤原巧という帝大狙いの秀才が語った怪談・・・彼らが今いる浅草の神社の境内で、実際に起こったという神隠し事件。
そして、その神隠し事件で、物の怪に取り憑かれそうになりながらも、命からがら逃げおおせたのが、幼い頃の自分なのだ、この神隠し事件で自分は双子の兄と親戚の叔父を亡くしているのだ・・・と信じがたい告白をする藤原。
そして、時は流れて、昭和9年。浅草。
件の神隠しの因縁で知られる大銀杏の木の下で、男性の変死体が発見されます。
第一発見者の話では、その死体の顔は、大手鉄鋼会社の社長だった・・・ということ。がしかし、奇妙なことに、30代半ばのはずの社長の死体は、髪が真っ白になっており、まるで老人のようだった・・・と。
しかも、さらに奇怪なことに、その死体、首が間逆についており、あろう事か、第一発見者の男を見ると、腕を伸ばして「おいで、おいで」をした!?
もし、首がへし折られて間逆を向いていたのだとしたら、それは確実に死んでいるはず。それなのに、手を動かして「おいで、おいで」とは・・・。
腰を抜かした第一発見者が警察に駆け込み、やがて警察が駆けつけるのですが、その時にはなんと、件の死体は忽然と消えていたのでした。その間、約20分。
夢かまやかしか・・・と疑われる中、確かに、被害者と思われる鉄鋼会社の社長は行方が解らなくなっています。
しかも、その大手鉄鋼会社というのが、「藤原鉄鋼」。
消えた死体になっていた社長というのは、冒頭のシーン、そう明治の時に、自らの神隠し体験を語った、藤原巧の息子だったのです。
この不可解な事件について調べることになった、新聞記者の柏木は、取材中に軍人と揉め事を起こし、三面担当を外されます。
興味のない花柳界担当に異動になった柏木は、吉原を取材するため、吉原自衛組織の頭・朱雀十五という青年と知り合うことになるのでした。
この朱雀十五という青年、女性と見紛うばかりの美青年で、元は帝大法学部を首席で卒業した検事だったとか。
しかし、とある事故で視力を失って以来、検事の職を辞め、弁護士になり・・・今回、新たに、吉原の自衛組織の頭として迎え入れられた・・・とのこと。
吉原の近くで起こった謎の事件と言うことで、事件に興味を持つ朱雀。
そして、この事件に、自らの因縁のようなモノを感じて、担当を外されたにもかかわらず、勝手に調査していく柏木。
~~~~というようなお話です。
で。
私、何の前知識もなく読んだのですが。
この探偵の朱雀十五なる人物、「美貌の盲目探偵」というキャッチフレーズだったのですね。
なので、てっきり、目の見えない寡黙な美青年が、人の話を聞くだけで、状況を推理・判断する安楽椅子探偵物かなぁ~というイメージを持っていたのですが。
これが、またまた全然違って!!
朱雀さん、凄いです。
目が見えないのですが、積極的に動き回って情報収集をする、アクティブな御方です。
しかも、寡黙どころか、超毒舌で、お喋り。
少々、躁病気質を感じるテンションで。
まあ、少し・・・いや、かなり、個性の強い人です。
そんな朱雀に圧倒されていく柏木ですが。
柏木も、過去にいろいろとトラウマのある人で・・・物語が進むにつれ、段々、精神の均衡を崩していきます。
あたかも、奇怪極まりない事件の妖気に当てられていくかのように・・・。
そして、読んでいる私自身も、柏木同様、事件の妖気に当てられた感覚になって・・・何が真実で、何がまやかしなのか混乱していくようでした。
昭和初期という危うい時代。
明治・大正を経て、文化が爛熟していくにつれ、大陸進出だのと言って、軍靴の響きも高まっていく。
そんな独特な時代を背景に、まるで、物の怪の仕業なのではないか・・・というような妖しい事件が起こっていくのですよね。
しかも、男爵家だの大手会社の社長だの、庶民とは違う上流階級の人達の複雑な人間関係。
でも、そんな中に垣間見られる、下世話な男女関係などなど。
作品内に流れる妖しい雰囲気に、とてもツボりました。
そして。
これは現実かまやかしか・・・と読みながら混乱しつつも。
最後には、全ての伏線が綺麗に回収され、大団円を迎えたところは、感動でした!!!
あたかも、この世のモノならぬような事件も、ちゃんと人間の手によるものだった・・・というのは、『奇跡調査官』シリーズにも通じるものを感じました。
っていうか。
いつの世も、物の怪より怖いのは人間そのものなのではないかなぁ~と。
この作品を読んで、つくづくそう思っちゃいましたですよ。
それにしても。
私なりに、色々推理しながら読んでいたのですが・・・・・。
真相は推理できなかったです。
良い意味で、「やられた~><」という読後感。こういうの好き。
うん。
柏木がね、だんだん、おかしくなって行ってるのは、間違いなく、何かアレがナニしてるんだろうなぁ(←ネタバレ防止のため代名詞にてv)とは推理してたけど。
まさか・・・そう来るとはっ。
明治に神隠しにあった人達、2歳で人買いに買われていった女の子、はたまた、大病院の謎の地下室、昼間でも暗いお屋敷・・・などなど。
ぜ~~~んぶ、関係があるお話だったのですね。
読みながら、頭を整理しないと、こんがらがっちゃいそうな複雑な人間関係。
その絡まった糸を、解いていく朱雀の推理は見事。
「目が見えないからこそ、いろいろなものが見える」
という朱雀の言葉が印象的でした。
そして、この、かな~り個性の強い・・・ぶっちゃけ変人な美青年の今後が気になりますね。
来月に復刊される、シリーズ2作目も楽しみです。
今日はPCから、感想を書いてみました。
10月25日発売の、藤木稟さん著『陀吉尼の紡ぐ糸 探偵・朱雀十五の事件簿1』。
この作品は、以前、別の出版社から刊行された、藤木さんのデビュー作とのことで、絶版になっていたのが、今回、角川ホラー文庫から復刊されました。

私は発売日当日にゲットして、半日没頭していたのですが、その翌日、翌々日と本を開く機会がなく・・・昨日の日曜日に読み終わりましたです。
と言うわけで、面白くて没頭しちゃって、約2日で読み終わった・・・ということですね(^^)b
私は、藤木さんの作品は、『バチカン奇跡調査官』シリーズしか読んだことなかったのですが、奇跡調査官とはまた違った世界観の物語でとても楽しめました。
さて。
どんな物語かというと。
舞台は昭和9年の浅草。
でも、この事件の発端となるのは、もっともっと時代を遡って、明治29年の浅草。
高等学校の生徒達数人が、夏期休暇の最終日のちょっとした冒険・・・ということで、肝試しをしたあと、吉原で女を買おう・・・という計画を実行します。
夜の神社に集まった仲間達は、それぞれ自分が知っている怪談話を語り、蝋燭を吹き消していくわけですが・・・。
最後に、藤原巧という帝大狙いの秀才が語った怪談・・・彼らが今いる浅草の神社の境内で、実際に起こったという神隠し事件。
そして、その神隠し事件で、物の怪に取り憑かれそうになりながらも、命からがら逃げおおせたのが、幼い頃の自分なのだ、この神隠し事件で自分は双子の兄と親戚の叔父を亡くしているのだ・・・と信じがたい告白をする藤原。
そして、時は流れて、昭和9年。浅草。
件の神隠しの因縁で知られる大銀杏の木の下で、男性の変死体が発見されます。
第一発見者の話では、その死体の顔は、大手鉄鋼会社の社長だった・・・ということ。がしかし、奇妙なことに、30代半ばのはずの社長の死体は、髪が真っ白になっており、まるで老人のようだった・・・と。
しかも、さらに奇怪なことに、その死体、首が間逆についており、あろう事か、第一発見者の男を見ると、腕を伸ばして「おいで、おいで」をした!?
もし、首がへし折られて間逆を向いていたのだとしたら、それは確実に死んでいるはず。それなのに、手を動かして「おいで、おいで」とは・・・。
腰を抜かした第一発見者が警察に駆け込み、やがて警察が駆けつけるのですが、その時にはなんと、件の死体は忽然と消えていたのでした。その間、約20分。
夢かまやかしか・・・と疑われる中、確かに、被害者と思われる鉄鋼会社の社長は行方が解らなくなっています。
しかも、その大手鉄鋼会社というのが、「藤原鉄鋼」。
消えた死体になっていた社長というのは、冒頭のシーン、そう明治の時に、自らの神隠し体験を語った、藤原巧の息子だったのです。
この不可解な事件について調べることになった、新聞記者の柏木は、取材中に軍人と揉め事を起こし、三面担当を外されます。
興味のない花柳界担当に異動になった柏木は、吉原を取材するため、吉原自衛組織の頭・朱雀十五という青年と知り合うことになるのでした。
この朱雀十五という青年、女性と見紛うばかりの美青年で、元は帝大法学部を首席で卒業した検事だったとか。
しかし、とある事故で視力を失って以来、検事の職を辞め、弁護士になり・・・今回、新たに、吉原の自衛組織の頭として迎え入れられた・・・とのこと。
吉原の近くで起こった謎の事件と言うことで、事件に興味を持つ朱雀。
そして、この事件に、自らの因縁のようなモノを感じて、担当を外されたにもかかわらず、勝手に調査していく柏木。
~~~~というようなお話です。
で。
私、何の前知識もなく読んだのですが。
この探偵の朱雀十五なる人物、「美貌の盲目探偵」というキャッチフレーズだったのですね。
なので、てっきり、目の見えない寡黙な美青年が、人の話を聞くだけで、状況を推理・判断する安楽椅子探偵物かなぁ~というイメージを持っていたのですが。
これが、またまた全然違って!!
朱雀さん、凄いです。
目が見えないのですが、積極的に動き回って情報収集をする、アクティブな御方です。
しかも、寡黙どころか、超毒舌で、お喋り。
少々、躁病気質を感じるテンションで。
まあ、少し・・・いや、かなり、個性の強い人です。
そんな朱雀に圧倒されていく柏木ですが。
柏木も、過去にいろいろとトラウマのある人で・・・物語が進むにつれ、段々、精神の均衡を崩していきます。
あたかも、奇怪極まりない事件の妖気に当てられていくかのように・・・。
そして、読んでいる私自身も、柏木同様、事件の妖気に当てられた感覚になって・・・何が真実で、何がまやかしなのか混乱していくようでした。
昭和初期という危うい時代。
明治・大正を経て、文化が爛熟していくにつれ、大陸進出だのと言って、軍靴の響きも高まっていく。
そんな独特な時代を背景に、まるで、物の怪の仕業なのではないか・・・というような妖しい事件が起こっていくのですよね。
しかも、男爵家だの大手会社の社長だの、庶民とは違う上流階級の人達の複雑な人間関係。
でも、そんな中に垣間見られる、下世話な男女関係などなど。
作品内に流れる妖しい雰囲気に、とてもツボりました。
そして。
これは現実かまやかしか・・・と読みながら混乱しつつも。
最後には、全ての伏線が綺麗に回収され、大団円を迎えたところは、感動でした!!!
あたかも、この世のモノならぬような事件も、ちゃんと人間の手によるものだった・・・というのは、『奇跡調査官』シリーズにも通じるものを感じました。
っていうか。
いつの世も、物の怪より怖いのは人間そのものなのではないかなぁ~と。
この作品を読んで、つくづくそう思っちゃいましたですよ。
それにしても。
私なりに、色々推理しながら読んでいたのですが・・・・・。
真相は推理できなかったです。
良い意味で、「やられた~><」という読後感。こういうの好き。
うん。
柏木がね、だんだん、おかしくなって行ってるのは、間違いなく、何かアレがナニしてるんだろうなぁ(←ネタバレ防止のため代名詞にてv)とは推理してたけど。
まさか・・・そう来るとはっ。
明治に神隠しにあった人達、2歳で人買いに買われていった女の子、はたまた、大病院の謎の地下室、昼間でも暗いお屋敷・・・などなど。
ぜ~~~んぶ、関係があるお話だったのですね。
読みながら、頭を整理しないと、こんがらがっちゃいそうな複雑な人間関係。
その絡まった糸を、解いていく朱雀の推理は見事。
「目が見えないからこそ、いろいろなものが見える」
という朱雀の言葉が印象的でした。
そして、この、かな~り個性の強い・・・ぶっちゃけ変人な美青年の今後が気になりますね。
来月に復刊される、シリーズ2作目も楽しみです。