今日は、先日見た、映画の感想を。
この火曜日に見て来ました、映画『グランド・ブダペスト・ホテル』。
ウェス・アンダーソン監督作品。
予告編と、あと、凄い印象的な映画館のディスプレイ(ピンク色の箱のプレゼントが大量に積んである・・・というヤツ)が、かな~り気になって、楽しみにしていた作品です。
で。
私、この監督の作品といえば、『ダージリン急行』は、ちょっとイマヒトツだって。
『ムーンライズ・キングダム』は、まあまあ好きだったのですが。
今回の、この『グランド・ブダペスト・ホテル』は・・・・・・めっちゃツボっちゃいましたですよぉ(≧▽≦)!!
すっごく面白くて、気に入って。
パンフレットも買っちゃいました☆
■『グランド・ブダペスト・ホテル』予告編
1930年代の、架空の国、ズブロフカ共和国を舞台に、超高級ホテルの一流のコンシェルジュと、新人ベルボーイが織りなす交流と冒険とミステリー・・・とでも言いましょうか(^m^)
と言っても、映画の構成は、とても面白い作りになってます。
そして、冒険といっても、そんなに痛快なものではなくて、かなりシュール。
私は大好きでしたが、好き嫌いは別れる作品かもですね。
まず、冒頭は、現代。
旧ズブロフカ共和国。
場所は墓地。
その墓地の中に、ひときわ大きくて立派なお墓があるのですね。
お墓には、なにやら、そこに眠っている人物と思われる胸像まで乗っかってて。そして、墓石にぶら下げられた、大量の鍵。
墓碑を見ると「国の宝」と言われるくらい有名な作家さんだったよう。
そして、そのお墓を訪ねる女の子。
彼女もまた、作家の眠る墓石に、鍵をぶら下げます。
それから、お墓の前のベンチに座り、一冊の本を開くのでした。
この本のタイトルが『グランド・ブダペスト・ホテル』。
そう、この映画のタイトルですね。
つまり、これから描かれる映画は、このお墓に眠る作家さんが書いた作品なのです。
・・・と言っても、実は、そう簡単な構成では無くて、なかなかに凝ってます。
次に舞台となるのは1980年代。
まだ、この作家さんは存命中。
そして、『グランド・ブダペスト・ホテル』を書くこととなった、きっかけというか体験を語りはじめます。
で、舞台は、彼がまだ若かった1960年代へ。
当時、作家として、なかなか良い作品を生み出せないことに悩んでいた彼は、英気を養うため&休養のために、旧ズブロフカ共和国にある、グランド・ブダペスト・ホテルに滞在します。
そこは、かつて、贅沢の極みを凝らした超一流のホテルだったのですが、時代の流れと共に、廃れ。
今では、滞在客もごく僅か。
かつては豪華だったであろう装飾なども廃れていて、なんとも、退廃的な雰囲気のホテルです。
ある日、彼は、そのグランド・ブダペスト・ホテルのオーナーという男性と知り合い、ひょんなことから一緒にディナーをとることになります。
今となっては、かつての栄光が空しい、廃墟のようなこのホテルを買い取った、物好きなオーナー。
彼は、大金持ちであるにも関わらず、このホテルに滞在する時は、いつもバスルームもない使用人部屋だとか。
そんな謎のオーナーに興味を持った作家は、ディナーの時に、オーナーから、かつてグランド・ブダペスト・ホテル華やかなりし時代の頃の物語を聞かされることになります。
そして。
オーナーが語った物語とは。
時代は、1930年代。
グランド・ブダペスト・ホテルが、最高に輝いていた時代。
当時、まだ新米のベルボーイだったというオーナーと、「伝説のコンシェルジュ」と呼ばれた超一流のコンシェルジュの交流と冒険、そして絆の物語。。。。。
という展開なのですよ。
つまり、現代、1980年代、1960年代、1930年代という多重構成になった舞台。
面白いですよね~。
そしてそして、カメラアングルも凄く凝っています。っていうか、独特。
一見、お芝居の舞台っぽくもあるのですよね。
ホテルの外観にはミニチュアを使って撮影してて、それが、いかにもミニチュアって感じで分かるのですが、それが却って、舞台っぽい、良い雰囲気を出しています。
いやいや。
舞台のお芝居・・・というより、箱庭かなぁ。
『ムーンライズ・キングダム』でも感じたのですが、絵本の世界に入り込んだ感覚。
てか、映画自体が「動く絵本」。
とにかく、そういう独特な映像です。
そして、ホテルが可愛い!!
1960年代では、もう、廃れて色褪せたようなホテルですが、1930年代では、全体的にピンクが基調となった色彩で。
お伽噺のお城のように可愛くて、豪華。
でもでも、言ってみれば、たった30年で、あんなにキラキラしてて可愛かったホテルが、廃れちゃうっていうのも、切ないですよね。
色彩の違いとかで、くっきりと映像に違いを出してて、そのギャップがなんとも。
そして、その退廃の理由が、戦争などの歴史的な動きによるものであるのが余計に悲しい。
で。
そんな可愛らしくて豪華なホテルで働く、新米ベルボーイのゼロという青年。
当時、ホテルには、超一流のコンシェルジュと呼ばれるグスタフという人物がいて、彼がゼロの教育をすることになります。
そんなある日、ホテルの常連だった大富豪のマダムが突然死。
グスタフと親しい関係にあったマダムは、遺言でグスタフに、凄く高価な絵を遺産として譲ることにしていたのですね。
それは、もう計り知れないほどの価値のある芸術品です。
でも、それを快く思わないマダムの息子・ドミトリは、グスタフに、マダム殺しの罪を着せ、冤罪のままグスタフは刑務所へ。
でもでも、でもでも、彼の無実を知っているゼロは、恋人でパティシエールのアガサの協力を得て、グスタフ脱獄の手助けをします。
やっとのことで刑務所から逃げ出したグスタフですが、そこには、警察の追手と、ドミトリが雇った殺し屋がグスタフに迫るのでした。
・・・という感じで、映像自体は可愛らしくて、動く絵本のようでありながら、ストーリーはなかなかにブラックなお話なんです。
そして、要所要所で感じる、当時の時代的背景も、凄く暗い物で。。。陰鬱です。
そのギャップが、怖可愛いというか。シュールと言うか。
凄い独特な世界観を出していましたが、こういう雰囲気の作品、大好きです。
そうそう。
冒頭で、この『グランド・ブダペスト・ホテル』という作品を書いた作家さんのお墓にぶら下げられてた大量の鍵。
この鍵の謎も、映画を見ていたら分かります(^m^)
ブラックな話なんだけど、ニヤリと笑えるシーンも多くて。
この鍵に関するシーンもそう。
っていうか、ホテルのコンシェルジュさん達の秘密組織・・・・・。
なんだか、本当にありそう・・・っていうか、そういう秘密結社的なものって、大好きなので、ワクワクしちゃいましたですよ~。
で。
1930年代の彼らの冒険のお話。
これも、決してハッピーエンドという訳では無いのですよね。
結局は、暗い時代の流れに翻弄されて終わっていく・・・というか。
ホテル自体が辿る結末も、ね。
そういう色々があって、そして、1960年代の、色褪せたグランド・ブダペスト・ホテルがある訳なんだけど。
それが、切なかった。
とはいえ。
輝いていた頃のホテルと、そこに生きた人達の冒険譚があって、当時、それを経験した青年が年を取ってから若い作家に語り、それを作家が小説にし、そしてそして、作家の死後もその小説は読み継がれていく。。。
時代と共に廃れていったグランド・ブダペスト・ホテルですが、物語の中では、きっと、永遠に、あの輝いていたピンク色の1930年代のまま、皆の心の中にあるのかなぁとか思いましたです。
可愛くて、でも、ブラックで、鑑賞後はノスタルジックな気持ちになる、そんな作品だったと思います。
そうそう!!
この映画の主役。
1930年代の伝説のコンシェルジュを演じてる俳優さんって、『ハリー・ポッター』でヴォルデモートを演じていらっしゃる俳優さんだったのですね!!!
全然気が付かなかったです(>_<)
・・・まあ、ヴォルデモートなメイクだと、元のお顔、分かりませんものねA^^;;
そしてそして。
ベルボーイのゼロの恋人・アガサの女優さんって『つぐない』のブライオニーの女優さんでしね。
架空の国を舞台にしてはいますが、ホテルの名前からも想像がつくように、第二次大戦前の東ヨーロッパを思わせる歴史的背景が、そこには描かれていました。
迫り来るファシズムなどの時代背景の中、豪華ホテルの従業員の物語。
コメディでありつつ、シュールで、独特な世界観、豪華キャストに魅せられた作品でした☆