若冲展に行って来ました!!
東北大震災で辛い思いをしている東北の人たちを元気づけようというジョー・プライス氏の思いから日本が世界に誇る絵師「伊藤若冲」展が、春から東北3県で順次開催されています。その最後の開催県である福島の県立美術館に「若冲が来てくれました」展をみに行ってきました。
東北に足を踏み入れるのは大学生以来です。その時はバスケットボール部の合宿で山形まで行きました。まだ東北新幹線はなく、お盆の帰省の方たちですし詰めの東北本線に乗り、学生なのでお金は無く自由席の空いた席を仲間と変わり番に座って山形にたどり着いたのを覚えています。
あれから30年たち、みちのくにも新幹線が走り、朝6時半に出雲を発った私はやくもと新幹線を乗り継ぎ、指定席に悠々と座り、3時過ぎには福島の人になっていました。
福島県立美術館の閉館時刻は5時です。少しでも長く若冲作品をみるためにタクシーで美術館に向かいました。運転手さんが連日来館者が多く、列になって並んで入場していることを教えてくださいました。時間が限られているので並ばなければならないと時間のロスだと思いながら、でも、平日の閉館時間も近い時刻なので、そんなには混んでいないだろうとも思いながら、はやる気持ちで、早く美術館に着かないかと気もそぞろにタクシーの運転手さんと会話していました。
会場に着くと、タクシーがたくさん出てくるお客さんを待っていましたが、入場の行列はなく、待つことなく美術館に入ることができました。
なんて、ラッキー!!!
と、同行のみるみる会員の房野さんと喜びながら、いよいよ企画展示室に入りました。
対話型鑑賞を知り、実践するようになっての悩みは「作品鑑賞時間が長くなる」ということです。特に今回は房野さんと一緒なので、二人で作品の前で「あーだ。こーだ。」と話しながらみているとどんどん時間がたちます。その上展示作品の多いこと!!じっくりみていると閉館時刻が来そうです。それなのに「若冲」の部屋までたどり着きません。「パスしよう」と声をかけ、速足で「鳥獣花木図」の展示室まで行きました。あのままみ続けていたら閉館時間までに若冲室にたどり着けなかったと思います。これからの鑑賞の教訓は「時間のない時は展示順を無視して、メインを最初にみる」ことです。学芸員さんごめんなさい。
若冲の「鳥獣花木図」は圧巻でした。何度も図録や作品集でみていますが、やはり本物の持つ力を間近で感じました。大きさ、絵の具の盛り上がり、マス目の丁寧さ、どれひとつとっても圧巻です。その上、妙に魅力的な???な動物たち・・・。見たこともない動物たちを話しを聞きながら想像して描いた若冲が描くことをきっと愉しんでいたのだろうという思いが伝わってきました。どの動物の表情もそれはそれはかわいらしく、どこか自慢げで、どの自慢げな表情は、きっと若冲の思いを反映しているのだろうと思いました。
そのほかにも名作と言われる作品がキラ星のごとく並び、情けないですが、「あれもこれも、美術の教科書に載っていたな。」などと思い、その本物がみられて、なんて素敵なんだろうと、遠路はるばる、東京での研修会にかこつけて足を延ばして正解だったと、本当に思いました。
また、福島県立美術館の展示室の途中には休憩室が何か所かありますが、その休憩室からみえる風景もすてきでした。一幅の日本画作品をみるような風景になっていて、遠くのビルが樹木で隠され、近くの竹林は構図を考え整理されながら植栽されているように思いました。もっと時間があれば、ここでしばし時間を過ごし、また新たな気持ちで作品に向き合えると、この休憩室の配置の配慮にも感心しました。
しかし、残念なことに5時少し前には閉館時間を知らせるBGMが流れます。このBGMのせいでちょっとゆっくりと作品に向き合う気持ちがそがれてしまうのは、この館に限らず残念なことです。また、どの公立美術館でも言えることですが、閉館時間が5時に決まっているのも残念です。私の住む島根県の松江にある島根県立美術館は、夏場は日没後30分後が閉館時間となっており、夏は7時過ぎまで開館しています。もちろん警備のことや勤務のこともあるのでしょうが、5時に閉館だと基本、平日に働いている方は平日に美術館に出かけるのは困難だから、土日に行列にならざるを得ないという事態も起きているのではないでしょうか。もう少し夏場は遅くまで開館してくれていてもいいのになあ。というのが、この館に限らず、公立美術館に対する、一般観覧者としてのささやかな願望です。この後、六本木の森美術館にも出かけましたが、土曜の夜10時まで開いていて、話題の美術展でもありましたが、多くの来館でにぎわっていたのをみて、美術館の開館時間にもう少し流動性を持たせれば、美術に興味を持ってくれる人たちが増えていくことになるのかもしれないなどと感じていました。
話しが本論からそれてしまいました。
限られた時間ではありましたが、「若冲ワールド」は本当に魅力的ですてきでした。生きている間に、もう二度とみることはないかも知れません。そう思うと「一期一会」のこの機会を得たことに感謝します。そして、コレクターのジョー・プライス氏の日本を思ってくださるハートと作品をこの東北3県に貸し出し、東北の人たちを元気づけようという懐の深さに頭の下がる思いがしました。
美術館往復のタクシーの運転手さん、この後、会津若松に移動する列車で出会ったご夫婦、若松城の写真屋さん、この旅の途中で出会った東北の人たちは本当に温かく、人情にあふれた人たちでした。困っている人は放っておけないのか、気さくに声をかけてきてくださいました。本当に困っているのは自分たちの方かも知れないのに、人の心配のできる人は大きい人だと思いました。
美術館からの帰りのタクシーの運転手さんが、「政治家なんて、震災のことなんか、もう他人事でしょ。住み慣れた自分の家に一生帰れないかも知れない人たちの気持ちなんか、わかってないですよ。」と話された言葉がとても重たく、でも、「あなたたちみたいに、遠くから、福島に来てくれる人がいるだけで、東北は元気になりますよ。お金も落としていってください。」と冗談めかして語られました。
東北大震災に対して、私たちは何ができるのでしょう。私は、私たち日本人一人一人が、東北のことを忘れず、思い、何かできるアクションを起こすことが大事なのだろうと感じました。
福島の町にも会津若松の町にも避難のための仮設住宅がありました。この住宅のなくなる日が早く来るようにしなければならないのだと思いました。
若冲に惹かれて出かけた東北の地。多くのことを学ばせてもらいました。ありがとうございました。
東北大震災で辛い思いをしている東北の人たちを元気づけようというジョー・プライス氏の思いから日本が世界に誇る絵師「伊藤若冲」展が、春から東北3県で順次開催されています。その最後の開催県である福島の県立美術館に「若冲が来てくれました」展をみに行ってきました。
東北に足を踏み入れるのは大学生以来です。その時はバスケットボール部の合宿で山形まで行きました。まだ東北新幹線はなく、お盆の帰省の方たちですし詰めの東北本線に乗り、学生なのでお金は無く自由席の空いた席を仲間と変わり番に座って山形にたどり着いたのを覚えています。
あれから30年たち、みちのくにも新幹線が走り、朝6時半に出雲を発った私はやくもと新幹線を乗り継ぎ、指定席に悠々と座り、3時過ぎには福島の人になっていました。
福島県立美術館の閉館時刻は5時です。少しでも長く若冲作品をみるためにタクシーで美術館に向かいました。運転手さんが連日来館者が多く、列になって並んで入場していることを教えてくださいました。時間が限られているので並ばなければならないと時間のロスだと思いながら、でも、平日の閉館時間も近い時刻なので、そんなには混んでいないだろうとも思いながら、はやる気持ちで、早く美術館に着かないかと気もそぞろにタクシーの運転手さんと会話していました。
会場に着くと、タクシーがたくさん出てくるお客さんを待っていましたが、入場の行列はなく、待つことなく美術館に入ることができました。
なんて、ラッキー!!!
と、同行のみるみる会員の房野さんと喜びながら、いよいよ企画展示室に入りました。
対話型鑑賞を知り、実践するようになっての悩みは「作品鑑賞時間が長くなる」ということです。特に今回は房野さんと一緒なので、二人で作品の前で「あーだ。こーだ。」と話しながらみているとどんどん時間がたちます。その上展示作品の多いこと!!じっくりみていると閉館時刻が来そうです。それなのに「若冲」の部屋までたどり着きません。「パスしよう」と声をかけ、速足で「鳥獣花木図」の展示室まで行きました。あのままみ続けていたら閉館時間までに若冲室にたどり着けなかったと思います。これからの鑑賞の教訓は「時間のない時は展示順を無視して、メインを最初にみる」ことです。学芸員さんごめんなさい。
若冲の「鳥獣花木図」は圧巻でした。何度も図録や作品集でみていますが、やはり本物の持つ力を間近で感じました。大きさ、絵の具の盛り上がり、マス目の丁寧さ、どれひとつとっても圧巻です。その上、妙に魅力的な???な動物たち・・・。見たこともない動物たちを話しを聞きながら想像して描いた若冲が描くことをきっと愉しんでいたのだろうという思いが伝わってきました。どの動物の表情もそれはそれはかわいらしく、どこか自慢げで、どの自慢げな表情は、きっと若冲の思いを反映しているのだろうと思いました。
そのほかにも名作と言われる作品がキラ星のごとく並び、情けないですが、「あれもこれも、美術の教科書に載っていたな。」などと思い、その本物がみられて、なんて素敵なんだろうと、遠路はるばる、東京での研修会にかこつけて足を延ばして正解だったと、本当に思いました。
また、福島県立美術館の展示室の途中には休憩室が何か所かありますが、その休憩室からみえる風景もすてきでした。一幅の日本画作品をみるような風景になっていて、遠くのビルが樹木で隠され、近くの竹林は構図を考え整理されながら植栽されているように思いました。もっと時間があれば、ここでしばし時間を過ごし、また新たな気持ちで作品に向き合えると、この休憩室の配置の配慮にも感心しました。
しかし、残念なことに5時少し前には閉館時間を知らせるBGMが流れます。このBGMのせいでちょっとゆっくりと作品に向き合う気持ちがそがれてしまうのは、この館に限らず残念なことです。また、どの公立美術館でも言えることですが、閉館時間が5時に決まっているのも残念です。私の住む島根県の松江にある島根県立美術館は、夏場は日没後30分後が閉館時間となっており、夏は7時過ぎまで開館しています。もちろん警備のことや勤務のこともあるのでしょうが、5時に閉館だと基本、平日に働いている方は平日に美術館に出かけるのは困難だから、土日に行列にならざるを得ないという事態も起きているのではないでしょうか。もう少し夏場は遅くまで開館してくれていてもいいのになあ。というのが、この館に限らず、公立美術館に対する、一般観覧者としてのささやかな願望です。この後、六本木の森美術館にも出かけましたが、土曜の夜10時まで開いていて、話題の美術展でもありましたが、多くの来館でにぎわっていたのをみて、美術館の開館時間にもう少し流動性を持たせれば、美術に興味を持ってくれる人たちが増えていくことになるのかもしれないなどと感じていました。
話しが本論からそれてしまいました。
限られた時間ではありましたが、「若冲ワールド」は本当に魅力的ですてきでした。生きている間に、もう二度とみることはないかも知れません。そう思うと「一期一会」のこの機会を得たことに感謝します。そして、コレクターのジョー・プライス氏の日本を思ってくださるハートと作品をこの東北3県に貸し出し、東北の人たちを元気づけようという懐の深さに頭の下がる思いがしました。
美術館往復のタクシーの運転手さん、この後、会津若松に移動する列車で出会ったご夫婦、若松城の写真屋さん、この旅の途中で出会った東北の人たちは本当に温かく、人情にあふれた人たちでした。困っている人は放っておけないのか、気さくに声をかけてきてくださいました。本当に困っているのは自分たちの方かも知れないのに、人の心配のできる人は大きい人だと思いました。
美術館からの帰りのタクシーの運転手さんが、「政治家なんて、震災のことなんか、もう他人事でしょ。住み慣れた自分の家に一生帰れないかも知れない人たちの気持ちなんか、わかってないですよ。」と話された言葉がとても重たく、でも、「あなたたちみたいに、遠くから、福島に来てくれる人がいるだけで、東北は元気になりますよ。お金も落としていってください。」と冗談めかして語られました。
東北大震災に対して、私たちは何ができるのでしょう。私は、私たち日本人一人一人が、東北のことを忘れず、思い、何かできるアクションを起こすことが大事なのだろうと感じました。
福島の町にも会津若松の町にも避難のための仮設住宅がありました。この住宅のなくなる日が早く来るようにしなければならないのだと思いました。
若冲に惹かれて出かけた東北の地。多くのことを学ばせてもらいました。ありがとうございました。