ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

40人学級で「対話型鑑賞」を実践しました!!

2015-11-19 22:12:18 | 対話型鑑賞


昨年度から美術科を担当し、1年半付き合ってきた生徒たちは1クラスの生徒数がほぼ40人という中学校学級定員MAXな中で日々の学習活動を行っています。美術室でも40席に生徒が座るとほとんど余裕のない状態です。そんな中で学習に取り組む彼・彼女らは出会ったときは「まさに中学2年生」という状況を呈していました。心安らかに作品制作に取り組む環境を整えるのに1年半を費やしたといっても過言ではありません。それはつまり、私が生徒との人間関係を構築する時間でもあったと言えます。
やっと、中学校の一大イベント「体育祭」「文化祭」をやり終え、進路について現実と向き合わないといけない時期に差しかかり、彼・彼女らの成長を僅かながらにでも感じられる時を迎え、この鑑賞を実践する決意が固まりました・・・。
 この鑑賞法を実践するときには、生徒がこの鑑賞法を嫌わず、楽しいと感じられるように心がけています。一番初めの時には、生徒もこの鑑賞法に戸惑います。「何を言ってもいい。」「みえているもの・ことを話す。」というのは「本当に何を言ってもいいのか?」「みえているものを言うって?」という戸惑いを生むからです。でも、まあ、始まってしまえば、「なあ~~~んだ。」ということになるのですけどね・・・。

 初めての作品はゴッホの「椅子」とか「古靴」がやりやすいのでよくみます。今回も「椅子」をみました。作品をみる前に気をつけていることは、ルールの徹底です。これをやっておかないと収拾のつかない事態が発生する恐れがあるからです。勝手勝手に話したり、発言を遮ったり、隣同士でコソコソ話したり・・・中学生では起きがちです。それを避けるためのルール確認です。そのルールは「みる・考える・話す・聴く」に則っています。

①まず、静かに(黙って)作品を隅から隅までじっくりとみる
②みながら、みえているもの・ことついて、考える
③考えたことを、挙手して話す(挙手して、指名された人が話すことを徹底しないと、私語が発生します)
④指名されて発言している人の話を、それ以外の人は、しっかりと聴く

このルール確認を、中学生でも、小学生でも、幼稚園児でもします。そして、幼稚園児も守ることのできるルールだと話して、中学生のルール順守を促します。今回もこのことは徹底しました。

実践対象生徒数(学級ごとに実践)授業後の振り返りワークシートから
3年生3クラス【114名:1組36名(欠席1名):2組39名(欠席1名):3組39名(欠課1名)】
実践後のアンケート(評価値は4・3・2・1:4が上位評価とする)回答数112名(未提出者2名)
A)しっかり絵をみることができた 4:100名  3:12名  2:0名  1:0名
B)絵をみてしっかり考えることができた 4:92名  3:17名  2:2名  1:0名
C)自分の意見をいうことができた 4:30名  3:5名  2:11名  1:66名
D)友だちの意見をしっかり聴くことができた 4:95名  3:13名  2:2名  1:0名
E)友だちの意見を聴いて、また、自分の考えをより深めることができた 4:89名 3:19名 2:1名 1:1名
F)このような鑑賞をまたやりたい 4:73名  3:35名  2:0名  1:4名

 上記の数値から「みる・考える・話す・聴く」活動において、生徒自身が「みる・考える・聴く」ことはできたと捉えていることが分かります。しかし、「話す」ことに関する評価が低いのは、発言できた生徒が少なかったからだと思います。考えてはいても、挙手して発言できた生徒は限られました。しかし、発言はできなかったけれど「考える」ことはしっかりとできていたことは振り返りのワークシートにびっしりと書かれた作品の読み取り記述から伺えます。

『今日の鑑賞をして、自分も意見を考えていたけど、すべて言わなければ、誰にも理解されず終わってしまうんだと思った。』という叫びのような感想もありました。
『いつもの鑑賞は自分だけとか一部の人の意見しか知ることができないので、みんなの意見も聞きながら鑑賞するといろんな見方で見ることができるので良いと思います。そこから想像される世界も人それぞれなので楽しかったです。』と、仲間とともに作品を見ることの楽しさを感じた感想もありました。

また、「どこからそう思う?」と、根拠を明らかにしながら自分の考えを話すことに対しても、初回にもかかわらず『できるだけ質問されないように、答えることができるようになってきてよかったです。』という感想もありました。「どこからそう思うのか?」を示さず自分の意見を述べる生徒に対して「その考えは、作品のどこをみてそう考えたのか?」を繰り返し訊きかえしながら対話を進めたので、わずか1時間の実践の中でも『思考』法と『表現』の仕方を学んでいる姿が伺えました。

このことからも、この鑑賞法が「教える」鑑賞から主体的に考え「学ぶ」鑑賞へシフトしていることがご理解いただけると思います。次の学習指導要領の改訂に向けては「アクティブラーニング」がキー・コンピテンシーを培う上で必須と目されていますが、この鑑賞法そのものが「アクティブラーニング」でありキー・コンピテンシーを培うことの出来るものであると私は捉えています。たかが美術鑑賞なのかも知れませんが、されど美術鑑賞です。この深くて豊かな鑑賞法で生徒の秘めた力に幾ばくかの刺激を与えることができればと、実践を続けていきたいと考えています。

コメント
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