ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

愛媛県美術館での研修レポートをお届けします!!

2016-10-02 09:37:02 | 対話型鑑賞


みるみるの金谷です。愛媛県美術館で行われた「児童・生徒の『思考力』を育むファシリテーター育成事業」の第2回トレーニング(8月24~26日)の最終日に「わたしのまち みんなのまち」というワークショップをさせていただきました。愛媛県内の小中学校の先生方や、博物館、美術館の学芸員の方を対象に、3・4年生社会科の授業実践をもとにしたワークショップについて、参加された方の感想とともにレポートします。

※以下の本文中で「」で括られた太字の箇所は、参加された先生方のご感想からの引用となっています。

はじめに、子どもたちにとって身近な場所の地図(漁港周辺)をスクリーンに映し出して参加者のみなさんにみていただき、発見したことをどんどん発表してもらいました。
「地図を読み解くときに、自分たちのこれまでの体験からの知識でいろいろな意見が出ていた」とのご感想にあるように、参加者のみなさんにとって知らない場所の地図でも、もっている知識を使って意見交換をすることができました。なかには、小学生になりきってノリノリで意見を言ってくださる方もあり、発見したことをもとに対話が進んでいきました。
また「常に根拠の確認をする大切さを実感しました。また、その確認の仕方で、子どもたちと同じ立場にいるような雰囲気で質問されていたのが、様々な意見を聞くために重要なことだと感じました」と、ナビゲーターのあり方を指摘してくださった先生もおられ、基本の問いかけの一つである「どこからそう思う?」の大切さを改めて感じました。

次に、教科書に掲載されている(子どもたちにとって他地域の)「ニュータウン」の地図を対話しながら読み解きました。その後、子どもたちの市にもある「ニュータウン」の航空写真を紹介して、模擬授業のパートを終えました。
「ワークショップ中、素材を提供する順番がとても参考になりました。まずは身近な土地の地図を素材にすることで、子どもたちでも地図の見方を身につけることができ、知らない土地の地図でも読めるようになりますね。アイスブレイクは、知っていそうな事がらから!」というご感想や、「地図をしっかり見せることが、大事であることを再確認しました。単元構成が『地図を見ること』を一番の柱においてあり、『身近なところ』→『特徴のある地域2つ』という流れで力をつけたのが良かったです」とのご感想にあるように、ねらいを焦点化した授業の組み立て(授業デザイン)や、地図(ビジュアル素材)の扱い方(見せ方、順番)は、どの教科でも共通して重要なことの一つであると思います。

今回は、地図記号や方角などは前時までに学習しているという前提で、ワークショップを行いました(参加者のみなさんには初めに「大人のままでいいですよ」と伝えました)。「対話型鑑賞の手法を使うには、観察対象との出会いが大切であると感じた。今回で言えば、観察対象が地図だったので、それからわかることを考えたり、友達の意見を聴きあったりすることで、推理していくような気持で活動に取り組めた。(中略)ただ、そのためにある程度の知識や経験知が必要なので、前時までに必要なことを獲得させておく必要があるなと感じた。その上で対話型鑑賞の手法を用いて授業を行うことが大前提なのだと感じた」といわれるように、基礎的な知識の習得は社会科に限らず重要であり、(私も含めて)現場の先生方の頭を悩ますところだと思います。今回のワークショップで、私は漁港の地図をみたとき、「〇〇が地図の上の方にある」「港の下に〇〇がある」という意見に対して、ちょっと意地悪く「え~っ!上って何?社会の言葉、地図の言葉で言って~!」などと、突っ込みを入れていました。また「何だっけ?このマーク?」と地図記号についても共有できるように意識して、ナビをしていました。「対話型鑑賞の手法を展開する中で、社会科的な基礎基本も押さえることができることも分かりました(地図の東西南北、地図記号、方角…)。必要に応じたり、主体的に学習しているときに知らされた物なので、受動的に教えられるよりも定着がしっかりなされるのではとも思いました」というご感想にあるように、子どもたちの必要感や主体的な学びによって、学力の向上も期待できるように思います。また、「教えること」と「子どもたちが学び取っていくこと」の見極めや、バランスをどうとるかということも授業をデザインする上でとても大事なことだと思います。

「教師側がもっている『教えたいこと』『伝えたいこと』を『見つけさせたいこと』『気付かせたいこと』に変換させて授業を進めておられるのがよく分かった。(中略)このような授業形態であれば、特別支援学級の子の気付きも拾うことができる。交流学級の中で自分の気付きが認められることによるプラスの効果が期待できると感じた」
という、鋭いご指摘もありました。仕掛ける側の工夫次第で、学力だけでなく子どもたちの自己肯定感などにもよい影響を与えられるように思いました。

今回のワークショップは、図工・美術以外の教科でも、対話型鑑賞の手法を用いた実践ができる、ということを体験的に学んでいただけるようにデザインしました。
「身近なところの地図から入って、地図の見方や気づきを学んで自信をもったところに、行ったことも聞いたこともない場所への地図への応用、そしてまた自分の住む街へと戻る。という構成が見事で、短い時間の中で、みんなで旅行をしているような感覚でした。この方法で、外国へ世界へと旅ができますね」と、今回のワークショップを見事にまとめてくださった方もおられます。実践をするにあたり、まずはご自身の身近なところから、対話型鑑賞の手法を取り入れてみませんか?自信をもったところでチャレンジをして、そして、また自分の得意分野へ帰ってくる。学校の授業時間や博物館、美術館のワークショップなどの中で、子どもたちや参加された方々と一緒に、RICHな旅ができたら最高ですよね。

I cannot do it!からHow can I do it? へ。さあ、あなたも対話型鑑賞の世界へ、一歩踏み出してみませんか。
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