ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

中学校での対話型鑑賞の実践レポートをお届けします

2019-12-07 21:59:52 | 対話型鑑賞
3年生対話型鑑賞会 第2回目 生徒の感想より
鑑賞作品 ゴッホ:椅子



A
 僕は今回の鑑賞で、今回のような鑑賞もおもしろいと思いました。①絵を見て絵から得られる情報だけで絵の中のストーリーを考えるところがおもしろいと思いました。②自分では気づけないところも他の人の意見を聞くことで気づくことができたのでよかったです。また違う絵で同じように鑑賞をしてみたいです。

B
 ③自分が見つけられなかったところを、友達が見つけて発表すると、「あっ、こんなものもあったんだ。」と感じるし、④同じところを見ていても、とらえ方によって違うものに見えたりするので、それを発表することで、自分の考えや、この絵の場面がどんなところなのか、⑤何パターンかできるので、おもしろいなと思いました。

C
 最初は何もわからなかったけど、⑥いろんな意見が出て、一つの情報から、⑦みんなで見て考えると、⑧たくさんの情報を得ることができることがわかりました。

D
 一つの絵から、⑨いろいろな手がかりを探していくと、ストーリーを思い浮かべることができて、とても驚きました。絵をじっくり見ず「へ~~。」で終わっていたけど、⑩いろんな人の考えを聞いて、気づかないところまでみえてきました。全く知らない絵からストーリーを思い浮かべることをして、とても楽しいと思いました。⑪人それぞれの見方や考え方は違うけど、それを聞くことによって、新しい発見や自分の意見と比べて納得できたので、また、授業でしてほしいと思いました。

E
 始めは絵を見るだけでぜんぜんおもしろくなかったけど、⑫深くまで考えてみると、案外楽しくておもしろかったので、またやりたいです。⑬人によって考えが多少違ったりして「あー確かに。」とか、納得することが何度かあったし、みんなの意味を聞くのはおもしろかったです。⑭1枚の絵でだいたいそこの場面が分かるなんて「すごいな。」と思いました。

F
 鑑賞は考えを豊かにしてくれるし、⑮人の意見を聞いて、発想を広げられたのでよかった。⑯一人で鑑賞するのではなく、複数人で鑑賞した方が、絵についての考えが広がることが分かりました。それと、⑰人は偏見で物事を決めつけてしまう生き物だと思いました。レンガだから西洋、パイプのタバコだから年配の男性とは決まっていないのに多くの人がそう感じていたので、そう思いました。このように考えがとらわれてしまうのはいいのかよく分かりません。僕はもっと頭を柔軟にしてたくさんの面からその作品を見られるようにしたいと思いました。あと、この作品はレンガの並びが不規則だったりして、きれいだとは思わないけど、とても分かりやすい作品でした。⑱きれいに描くだけが芸術ではないんだなと思いました。

G
 ⑲一つの椅子を主役としたこの絵から、どんな人が使っている椅子なのかや、どこの国のものなのかなど、細かいところまで推測できるのだなと思った。⑳人の意見を聞くことで、自分にはない見方や発想をすることができた。どんな物なのかを、色や形で考えるだけでなく、塗り方で考えている人もいて驚いた。血が付いたティッシュがあることから外で作業をしていると考えた人もいて、その発想は自分にはない発想だなと思った。(※椅子の上の白い物体を血の付いたティッシュと考えた生徒の発言を受けている。)



 転任して3年生の美術の授業を担当することになり、1学期の初顔合わせのときにゴッホの「ひまわり」(損保ジャパン日本興亜東郷青児記念美術館蔵)を使って「あなたはどのひまわり?」という対話型鑑賞の導入のような鑑賞活動を行った。それ以降、2回目の対話型鑑賞で、いわゆる1コマの授業で作品をじっくり鑑賞するのは初めてである。
 その中で、上記の感想からも分かるように、私のめざす「みる・考える・話す・聞く」活動を通して、この鑑賞から体感してほしいと思うことを生徒が1回目にしてすでに掴んでいるということには、喜びと生徒の潜在能力の高さが、驚きとともに手応えとしてあった。

 生徒の記述の中で、「みる・考える・話す・聴く」に関わるもの等、この活動において重要と思われる部分に下線を引き、番号①~⑳を付した。それらを以下に分類した。

何の情報もない中で、純粋に1枚の作品を「みる」ことによって起こることからの気づき
 ①⑨⑫⑳
みることから起きる「考える」ことの楽しさ
 ⑫⑮⑳
みえたことを仲間と「話す」ことによって起こる各人の思考の変化の気づき
 ②③⑦⑩
他者の考えを「聴く」ことによって起きる自分の考えの変化等への気づき
 ④⑦⑩⑮⑳
「みる・考える・話す・聴く」活動を通して起きることへの気づき
 ⑪⑭⑯⑲
「みる・考える・話す・聴く」活動を通して起きる、物事への多様な解釈への気づき
 ⑤⑥⑬⑰⑱

 特筆すべきは、Dの⑪である。このコメントは「みる・考える・話す・聴く」ことの重要性に気づくものであり、まさに、「主体的・対話的で深い学び」につながっていると考えられる。
 また、Fの⑰は既成概念にとらわれることへの危惧やそこから解放されての思考の柔軟性を希求する真摯な姿がうかがえる。そして、「きれいに描くだけが芸術ではない」とArt作品の多様性にまで言及している。これらがわずか1回の「対話型鑑賞」で起こっていることにこの鑑賞法の底力を感じ、新学習指導要領のめざす「主体的・対話的で深い学び」となっていることがうかがえる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする