ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

11月28日実践のオンラインACOPレポートです

2020-12-06 20:06:48 | 対話型鑑賞

オンラインACOP(11)レポート
レポート:Art Communication in Shimane みるみるの会 房野伸枝

日 時:11月28日(土)13:30~Zoom接続確認  14:00~実践
進 行:りゅうちゃん   サポート:まっつんさん         
参加者:8名

房野が担当した鑑賞作品についてレポートします。

2作品目:「春」 2027年 ベン・シャーン 作
マゾナイト・テンペラ   43.2×76.2cm
Albright-Knox Art Gallery, Buffalo, NY.
画像はこちらから(https://www.albrightknox.org/artworks/rca19482-spring)
ナビゲーター:ふさの

 私はオンラインでナビをするのは初めてでしたので、今回は以下の点を心がけました。
① 共有する作品はオンラインに適した容量であること。
鑑賞者がツールを使って拡大してみる時に、ぼやけたりしないで細部を確認することができるように。図版が小さすぎたり、ページをまたいでの印刷は中央にラインが入るため不適。ネット上に出回っているものは画素数が低いものが多く、拡大に耐えられないため。
② 著作権の問題をクリアすること。
オンラインとはいえ、閉じたグループでの鑑賞会なので問題なし。一応、今回は教育使用に限って許可のある所蔵先からダウンロードして使用した。
③ 30分という時間内に深い解釈までたどり着きたい。事前にできる限り多くの要素を見つけておき、自分なりの解釈も持っておく。ただし、鑑賞者の発言を大切に、鑑賞者ファーストで対話を深めていくことを心がける。メンバーは経験者ばかりなので、パラフレイズは少なめに、リンキングに努めたい。

 ベン・シャーンは私の大好きな画家で、いつか対話型鑑賞をやってみたいと温めてきた作品がいくつかあります。その中で「春」を選んだのは、なぜ、手にしている花が「アザミ」なのか?親密にみえる男女なのに、幸せそうに見えないのはなぜか?先も手前もどこに続いているのか分からない2つの道、その狭間で寝転んでいる男女、2人で縄跳びをする二人の男女(子ども?)、青い服と赤い服の人物(アメリカの共和党と民主党?)などなど、謎や対照的なモチーフがあり、様々な解釈ができそうだと考えたからです。

実際の鑑賞では、個々のモチーフから感じる違和感から、これは現実的な場所や場面を描いたのではなく、様々なイメージを象徴的に描いているということを共有できました。前半、女性の手にしている花がアザミなのかカーネーションなのか、アザミなら毒がある、男性の顔色が悪いのはその毒のせいでは、狂気じみた笑いをしているのは毒で男性をどうにかしようとしている、など花の種類によって解釈が変わりそうだったので、「この花はアザミである」「春に咲く花である」ということをナビから伝えました。その後は、私がディスクリプションしていたことを鑑賞者が次々と発見されました。「中央の人物が、不自然にずっと続く柵フェンスに囲まれていることで、囚われているようにみえる」など、私の想定外の意見もあり、とても刺激的でした。以下は主な鑑賞者の発言です。
・アザミはスコットランドの国花である。手前の男女の青い服、赤い服は、最近アメリカ大統領選挙でよくメディアに流れた共和党、民主党を象徴する色に見える。これらのことから政治的な意味があるのでは?
・遠近感のあるだだっ広い公園のような空間でずっと続く長いフェンスに囲まれている所にいる男女は何らかの閉塞感を、道で遊ぶ男女は自由を象徴しているようにみえる。
・作者のベン シャーン(サインが見える)は移民で、自由の国アメリカに来たものの、フェンスの中に囚われているような心情をもち続けて、そこから逃れられなかったのでは。
・両側のずっと続く先の見えない道は永遠に続いているよう。赤い服、青い服は男女を象徴している色で、赤い服の女性は男性側に歩み寄ろうとしているが、受け入れられていない。ジェンダー差別などの象徴では。フェンスの向こうでは男女が手を取り合って遊んでいて、自由に行き来している。
・フェンスがずっと続いているのは、社会的、政治的問題が続いていることを象徴している。手前と奥に男女が対比的に描かれているのは現実と理想、現在と未来や過去を描いている。

春を象徴するアザミには鋭いとトゲがあり、それを手にするためには痛みを伴うと私は考えます。アザミは「自由」の象徴でもあり、それを得るには痛みを伴うということではないでしょうか。 柵や道が社会的、政治的な課題を象徴し、道で手を取り合って遊ぶ男女がそれを乗り越えた理想として描かれているのかもしれません。皆さんの意見を聞きながら、さらにこの絵が訴えている現実にある多くの課題を感じました。
ナビとしては、ビデオを見返すとかなりパラフレイズが多く、もっとテンポよく進めたら、後半の解釈の時間に時間をかけることができたのに、と反省しています。鑑賞者からは「アザミがこの作品の重要な要素 であれば、もっと早くタイトルとともに明らかにするとよかった」「短時間に深い解釈までナビゲートするためには、焦点化を早めずに(今回は手前の男女に注目させたタイミング)多くのことを見つけてから、リンキングするほうが良かったのではないか」というご意見をいただきました。確かにそうです。今回、目標の③は達成ならず・・・次に生かしたいと思います。
初体験のオンラインナビでしたが、テクニカルなサポート、タイムキープなど、ちょなんさん、まっつんさん、りゅうちゃんをはじめ皆さんに温かくサポートしていただき本当にありがとうございました。オンラインに慣れるべく、精進します。今後もよろしくお願いします。
コメント
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