![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/c1/f4b4318e91dd80a1d22c1af0afda4aa3.jpg)
「ブラス! BRASSED OFF 」が
日本で公開されたのは。
作品としては地味な単館ものでした
が、単館もののには縁がなさそうな
人たちにも受け、かなりヒットした
作品だったように記憶しています。
1992年、政府が大量の炭鉱閉山計
画を発表します。イングランド北部の
炭鉱町もまた閉鎖の危機におびえながらも炭坑夫の余暇活動として結成されたバンド、
グライムソープ・コリアリー・バンドが自分たちと町の誇りにかけて全英選手権に出場し
優勝した実話をヒントに映画化。
過去2回見たときは「音楽と共に生きる歓びと、友情に支えられた人生の素晴らしさ」といった謳い文句通りの印象でしたが、この10年間の間に ボーナス手取りが
5万円になったり、勤めていた会社が無くなったりと職場環境が変わったこともあって
今回は受ける印象も随分変わりました。
主人公のバンドの団員らが炭鉱閉鎖によって失業してしまう不安で練習に身が入らなかったり、バンドを維持するカンパにも事欠くほどの生活苦や生活不安からの家庭
不和、そして会社側の切り崩しが功を奏し、炭鉱の閉山が決まり家族やコミュニティー
が崩壊していく様子。印象に残っているのは、バンドのリーダー・ダニーが炭塵を
吸った肺の病気で倒れ、メンバーが病院の庭でダニーに聴かせるために演奏をするシーン。そして優勝した時のダニーのスピーチ。今までは音楽がすべてだと思っていた
ダニーは息子フィルの自殺未遂から生きる意味すら失った仲間のために一言、
言いたかったんでしょうね。
「・・・皆さんはアシカやクジラのためには立ち上がる。でも彼らはごく普通の正直で
立派な人間です。素晴らしい演奏もします。でも何の意味が?。。。では仲間と町へ
帰ります。」ジーンとくるシーンです。
帰りのバスの中でバンドが演奏するエルガー「威風堂々」をバックに
“Since 1984 there have been 140 pit closure in Great Britain
at the cost of nearly a quarter of million jobs.”の字幕が流れます。
そう、彼らは優勝したけれど失業したことには変わりません。
優勝した達成感はあるかも知れませんが、深い悲しみの中、町へ帰って行くのです。
イギリス映画ならではのユーモアがあって、淡々とした作風ですが、厳しい現実を直視
し、炭鉱の閉鎖によって街全体が沈んでいく様子をひしひしと伝える作品です。