書評 BOOKREVIEW
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中国は鎖国状態、「巨大な北朝鮮となる」と大胆な予測
米国ディープステーツには英国守旧派の暗躍があると指摘
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藤井厳喜『藤井厳喜 フォーキャスト2025』(ワック)
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政治学者の藤井さん、未来学者でもあり、アメリカ経験が長いうえワシントンに太い情報パイプを持つ。それゆえワシントンの裏情報が間断なく、速射砲のように飛び出す。
その意味で本書はしられざる重要な情報源、それも日本のメディアのような米国左派論調のコピペではなく、本物の保守思想に裏打ちされたデータだから、これをもとに次の予測も出来る。
評者(宮崎)が本書で驚いた情報は幾つもあるが、就中、保守系シンクタンクの現在の状況に関する最新情報だった。
トランプ次期大統領は閣僚の多くを自ら主催するシンクタンク「米国第一研究所」から抜擢し、また選挙運動の中枢にあった忠臣たちと、献金グループから能力とは別に忠誠度と献金額から論功行賞のごとくに選抜した。伝統的な人種別配分、派閥均衡という「組閣」を無視したかたちとなり、歴代政権の特質とされた派閥均衡的な性格を持たない。
「トランプの政党」となった共和党において、いまや「反主流派」となったのが「旧エスタブリッシュメント」だ。
かれらをRINOと喚ぶ。共和党の曾ての主流派である。
それにしても、定番とされたシンクタンクからの抜擢で、トランプが何故、「ハドソン研究所」と「ヘリティジ財団」から、レーガン、ブッシュ親子がそうしたように多くの逸材を起用しないのか、不思議と考えていた。
藤井氏がこの謎を解いた。ふたつともネオコン、隠れ民主党が支配する似非保守シンクタンクに変貌していたというのだ。
思い返せば1980年代のレーガン時代、ヘリティジ財団とハドソン研究所が保守政治を牽引していた。ワシントンへ行く度に評者もヘリティジ財団に立ち寄って、多くの出版物を購入してきた。
ハドソンとは、ハーマン・カーンの高弟らと随分親しく付き合っていたので、東京でもワシントンでも飲み歩いた。
ハーマン・カーン博士の死後、研究対象がかわり、一時は日高義樹氏らも加勢していた。第一次トランプ政権では、このシンクタンク所長を駐日大使に任命した(議会審議が時間切れとなったため実現しなかった)。もうひとつがAEI(アメリカン・エンタプライズ・インスティテュート)だった。実に多くの研究員と議論したが、何人かがその後、次官、次官補クラスで政権入りした。
CSISとカーネギーは当時からリベラルなシンクタンクだったので立ち寄りもしなかった(苦笑)。
さて藤井氏はトランプのつぎの四年をきわめて楽天的に展望し、平和と繁栄がアメリカに活気を呼び戻すだろうと予測している。
トランプにより、国連、IMF、WTO、世銀など「国際機関」の役割が大きく後退するだろうとし、G7,G20も同様だとする。そのうえで断言的な予測は「脱炭素」が世界的に大きく後退する。日米貿易バランス是正にはアメリカからガスを大量に輸入すれば良いと日米関係の暗転を克服できる提言も含まれる。
ディープステーツに関しても、藤井的独創的解釈はアメリカのディープステーツには英国守旧派の暗躍があるとの指摘である。ロシアゲートのでっち上げは元英国MI6が絡んだことからも明白だとする(103p)。
そして民主党がふれてもらっては困る「不都合な真実」は美女売春の島で展開されたエプスタイン事件だが、この背後にも英国守旧派がいるとする。
アメリカ要人のスキャンダルを握ることによって籠絡するわけでエプスタインはその穢れ役だったという推論になる。エプスタインは獄中死しており、深層は闇に葬られた。ビル・クリントンは近刊のなかで、噂をいまごろになって否定した。
中国に関する予測はすでに現状が鎖国状態であって中国(藤井さんは「チャイナ」と書く)は「巨大な北朝鮮となる」と大胆な予測である(174p)
ともかく日本の大手メディアがまるで伝えない裏舞台の動きが掴める。
「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)12月22日(日曜日)弐
通巻第8561号 より