予定時刻より早く着く。
本を持って行っていたので、時間は容易に潰せる。
接種会場のスタッフは接種を始めて一ヶ月近く経った今日、すっかり慣れた風で澱みなく案内してくれる。ほぼ全員学生の様で、慣れたからと言って擦れたようなやっつけ感も嫌味もない。
前回は全くと言っていいほど注射時の痛みはなかったが今回は小さな痛みがあった。
けど、それだって以前に一度だけ鍼を打たれた時に経験した程度のほんの僅かなもの。
鍼を打ってもらった時は、本当に「注射針がこんなだったら二、三十本打たれたって平気だな」と思ったことを覚えている。
ただ、その時は初めての鍼ということで刺激の少ない和鍼だったそうで、中国鍼は相応に痛いそうだ。何しろ「巨鍼(きょしん。巨神ではない)」という、名前通りの長さ数十センチから1メートルを超す鍼もあるそうだから。
また脱線した。
5人ずつ並んで座っている列ごとに指示に合わせて移動、手続き。最終チェックポイントとして設けられている、医師の待つところへ誘導され、その場で健康状態の最終確認、十ヶ所ほどある接種場所で注射。
以後の様子を見るため、15分間待機。一分毎に「~時~分になりましたので、~分の方は前方の出口からバスに向かってください」とアナウンス。
時計を忘れて行っても安心だ。
一回目と全く何も変わらない光景が展開され、全く同じ手順でワクチン接種、帰途に就く。
いや、変わったかもしれない。二回目を接種する人が大半だったから、一回目以上に落ち着いて静かな雰囲気だった。
言葉を交わす人がないのは当然だが、やはり一度目の時は不安からか、何んとなしざわついているような感じがあった。今回はそれがない。
一回目と全く変わらなかったけど、最後にただ一つ、変わったこと。
会場を出たら雨が降っていた。それも思った以上に本格的な雨だった。
雨具は持ってきているけれど、カブの前カゴに放り込んだままだ。出口からカブを停めているところまでは、この競技場の外周を半分回らなければならない。当然屋根はない。
まあしょうがない。小降りになるのを待つための場所もないから折り畳み傘を持ってこなかったことを悔やみつつ、歩き始める。
それなりに濡れたけど、とにかく雨具はあるんだから、とカブのところまで行き、十年以上前に一度使ったっきりの雨具を着ける。
バイクあるある。雨具を着け終わった頃にほぼ雨が止んだ。
それでも、これでは帰りに喫茶店に寄れない。まっすぐ帰宅することにする。「こんなことなら洗濯物を取り入れておくんだったな」
結果としては、雨が降ったのは海岸部だけだったようで、有馬街道に入ると雨の形跡もほとんどなく、家の付近は全く降らなかったようだ。
洗濯物を改めて洗う必要はなくなった。流石に夏の雨、「馬の背を降り分ける(振り分けると掛けている?)」と言われるだけのことはある。ん?あれは梅雨ではなく夕立か。
「な~ん~てぇ~滑らかぁ~~」
接種会場の流れの良さ、です。