「麻薬密売人2000人殺した比政権は米国よりマシ」
米国人はしっかりした魂胆を持つ人たちだ。
例えば19世紀末の米国スペイン戦争。米国人は「植民地キューバの民を虐めるスペイン人が許せない」と言った。
海軍省次官セオドア・ルーズベルトは職を辞して義勇兵としてキューバで戦った。傍目には善意の塊に見えた。
スペインは我が領土での問題だ、内政干渉だと習近平みたいな言い方をした。
折も折、ハバナ港に入った米戦艦「メイン」が謎の爆沈をする。ニューヨーク・ヘラルドなど米紙はそろってスペインの仕業だと騒いでついには宣戦布告に至った。
さあ米艦隊が大挙キューバに出かけ、可哀そうな植民地の民を救い、彼らの建国を助けるのかと思ったら、そっちにはいかなかった。米艦隊はそのころ反対の太平洋を渡り、マニラ湾でスペイン艦隊に襲い掛かっていた。
陸側からはエミリオ・アギナルド将軍のフィリピン人民兵約1万人が米軍に呼応してスペイン軍の背中を襲った。
実は宣戦布告のはるか前、アギナルドは米政府から「協力したら独立させてやる」という約束を貰っていた。
頑張るフィリピン人。挟撃されたスペインは速やかに降伏するが、ここでマッキンリー大統領はフィリピンとグアムを2000万ドルで買い取ることでスペインと交渉に入っていた。
キューバの民を助けるはずがいつの間にか太平洋の要衝グアム、フィリピンの領有話に化けた。
少し前、ルーズベルトが日本は脅威だとアルフレッド・マハンに言った。それとも符合する。
戦い終わって米国はアギナルドに伝えた。「ここは都合で米国の植民地にすることにした。独立はなしだ」と。ちなみにキューバも米保護領にされた。
裏切られたフィリピン人民兵はマニラ郊外サンファン橋を挟んで米軍と睨み合った。そして1発の銃声が轟いた。
盧溝橋に似る。米軍はそれを合図に即座に大攻勢をかけた。優勢な火器にもの言わせ、フィリピン人民兵の3分の1を殲滅してしまった。1発目はもちろん米軍からだった。もう嘘と策略だらけだった。
(以下次回)
新潮文庫
「変見自在 トランプ、ウソつかない」
高山正之著 より
「変見自在 トランプ、ウソつかない」
高山正之著 より
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「底抜けに明るく、善意のみで行動するが、往々にしてやり過ぎてしまう」
それがジャイアン。
アメリカはそれにそっくりで、だから彼らの行動思想を「ジャイアニズム」と言う。・・・・けど、本当は、国益第一で、実に緻密な計画を練り、目的のためには何でもやる。そこには「良識」とか「思い遣り」などというものは微塵もない。ジャイアンは「善意」で行動するが、アメリカは「善意に見える」行動をする。
以前に西村眞悟 氏の記事を転載した「フィリピン人と、コルト45」の話とか、料理対決で日本の料理人を激怒させたアメリカ人のコックの話とかからでも見えてきます。