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種子島の冬空に、こうのとり羽ばたく!H-IIBロケット2号機打ち上げレポート 前編

2011-02-26 | 宇宙
写真:H-IIBロケット2号機、上昇!(長谷展望公園にて)

地上約400km上空の国際宇宙ステーション(ISS)へと補給物資を送り届ける日本の定期輸送船、
「こうのとり」(HTV)
この冬、“二羽目のこうのとり”「こうのとり」2号機(HTV2)を載せたH-IIBロケット2号機が種子島から宇宙へと羽ばたきます。

…しかし、ロケット打ち上げは生モノ。
決められた日時に必ず飛ぶとは限らず、予定変更・打ち上げ延期と闘う覚悟が要ります。
特に気象条件の厳しい冬場は、天候の急変や、特にロケットの天敵である「上空の氷結層」が容赦なく襲いかかります(この氷結層を上昇中のロケットが突き抜けると雷を誘発し、電子機器の塊である搭載衛星に致命的なダメージを与えてしまうのです)。
そして今回のこうのとり2号機/H-IIBロケット2号機も、当初打ち上げが予定されていた平成23年1月20日の前日になって打上げ制約条件を超える氷結層を含む雲の発生が予測され、延期が決定してしまいます。

新たに設定された打ち上げ日時は、平成23年1月22日14時37分57秒! …そしてこの日は週末、土曜日。

「やったー!休日だから種子島まで見に行けるぞ!」

という訳で、
事前に現地入りしていた副部長 こと文系宇宙工学研究所金木犀さんから「打ち上げ延期」の緊急連絡を受けた僕は、
打ち上げ前日の1月21日夜、仕事を終えてから最終の新幹線「つばめ」に飛び乗り種子島へと向かいました!
今までにもう何度も種子島にてH-IIAロケットの打ち上げを見ていますが、
「こうのとり」(HTV)の為に新たに建造された巨大機H-IIBロケットの打ち上げを現地で見るのは、これが初めて。
時速260キロで闇夜とトンネルが交錯する鹿児島中央駅行き「つばめ」の車窓の向こうに、期待が膨らみます!

…一方、その頃種子島宇宙センターでは打ち上げ準備が着々と進んでおり、H-IIBロケット2号機の組立棟(VAB)から大型ロケット発射場第2射点への機体移動が行われていました。
※以下は後日副部長からもらった、機体移動の様子を撮影した画像です。









 撮影/画像提供:金木犀さん
(参考:文系宇宙工学研究所「H-IIB F2/こうのとり2号機(HTV-2)見学記 1月21日後半 機体移動」

H-IIBロケット2号機がゆっくりと射点へ移動している間に、「つばめ」は新八代駅―鹿児島中央駅間を走破。
この夜は鹿児島市の繁華街、天文館のネットカフェにチェックインして仮眠を取ります。

平成23年1月22日 こうのとり2号機/H-IIBロケット2号機打ち上げ当日

夜明け前にネットカフェを出て、徒歩で鹿児島港の種子島行き高速船ターミナルへ向かいます。
空には明るい月と星々が。今日はいい天気になりそうです!




桜島の山裾に昇る朝陽の中を、高速船「トッピー」始発便は出航。一路、種子島へ!

…いつものように、すぐに眠りに落ちてしまい、目覚めるともう種子島、西之表港に到着。
港に、twitter宇宙クラスタのjnu_さんが迎えに来てくれていました。

jnu_さんのレンタカーに同乗させてもらい、打ち上げ見学地の種子島南部へと移動…
その途中、ここに立ち寄ってみました。

増田宇宙通信所
人工衛星の追跡管制と、種子島宇宙センターから打ち上げられたロケットの飛行状態の監視を行う重要な施設です。



残念ながら打ち上げ当日は通信所内部の見学は出来ません。
敷地外の、かつてここに軍の飛行場があった頃の遺構である煉瓦積みの煙突がある辺りで、宇宙センター方向に首を振ったパラボラアンテナが見えました。


増田宇宙通信所から南下する県道75号線から見える海岸。



太平洋の水平線の向こうに、種子島宇宙センターの大型ロケット発射場が見えています。
ここから打ち上げを見ても気持よさそうです。
でも今日は、皆と待ち合わせているここへと向かいます。

長谷展望公園
サッカーグラウンド位もある芝生が広がる、種子島でも最も大規模な公式見学場です。
僕が初めて種子島でH-IIAロケットの打ち上げを見た場所もここでしたねぇ…





長谷展望公園で、先に来ていた金木犀さんと合流。
聞けば、数日前に島に来て以来ずっと体調を崩していたそうで、大変な目に遭っていたとのこと(「文系宇宙工学研究所」に、彼の壮絶な苦闘が綴られています。
H-IIB F2/こうのとり2号機(HTV-2)見学記 1月21日前半 もうここに住む! …ホントにつらかったんだなぁ副部長)。

もっと海寄りの見学ポイントへ移動するというjnu_さんと道案内していく副部長を見送り、芝生広場で暫し一人でのんびり留守番します。
その間も岩本塚さんはじめ宇宙関連で顔馴染みの方々とお会いしたり、地元在住の友人が差し入れを持ってきてくれたり。


吹きすさぶ風が冷たいけれど天気も良いので、ピクニック気分の長谷展望公園。本当に、絶好の打ち上げ日よりになりました!
打ち上げ時刻が近づくと、見学者の方々もどんどん集まり始めました。

やがて、まこと君JIMさんあつ志さんたち「首都圏から種子島日帰り弾丸ツアー組」、それに副部長も戻って来て、宇宙クラスタのメンバーが集結!
突然、配布され始めた見学記念のピンバッヂを貰う行列に並んだりしながら、みんなで打ち上げの時を待ちます。

 
撮影準備に余念が無い副部長。




H-IIAロケットの打ち上げられる大型ロケット発射場第1射点は、長谷展望公園から見るとロケット組立棟(VAB)の裏側に隠れてしまうのですが、
今日打ち上げられるH-IIBロケットは専用の第2射点を使うので、きれいにその全容が現れています。

打ち上げ時刻の数分前から、カウントダウン音声が放送開始。
強風の中、全員総立ちでカウントダウンを叫びます。

10、9、8、7、6、5、4、3!2!1!! …リフトオフ!!









平成23年1月22日14時37分57秒(日本標準時)、
“二羽目のこうのとり”「こうのとり」2号機(HTV2)を載せたH-IIBロケット2号機
種子島宇宙センターから打ち上げられました。

※金木犀さん提供:リフトオフの瞬間

撮影/画像提供:金木犀さん

雲を突き抜けて、真冬の澄み切った青空をロケットが翔んでいきます!
「きれいだ…!!このまま宇宙まで青空を駆け抜けろH-IIB!羽ばたけ、こうのとり!!」



「あっ今、SRB-A(固体ロケットブースタ)が分離した!」
横に立ってデジタル一眼レフカメラの望遠レンズを覗き込んでいた副部長がつぶやきます。
「えっ!?本当!?」
残念ながら、肉眼では確認できませんでした。夜の打ち上げだったH-IIAロケット18号機/「みちびき」では、SRB-Aの燃え殻が落ちていく様子までハッキリ見えたんだけどなぁ…




やがてH-IIBロケット2号機は青空に吸い込まれ、
青空に残った真っ白なロケット雲も次第に風に流されて姿を変え、消えていきます。
そしてリフトオフの15分後に「こうのとり」2号機(HTV2)は分離されました。
打ち上げは、見事に成功したのです!


誰もいなくなった長谷展望公園に残った我々。
冬の陽は傾き、風は冷たさを増していますが、僕たちの心は熱いままでした。

「みんな、おめでとう!こうのとりは羽ばたいた!!
…本当に、素晴らしい打ち上げだったね!!」


そうです、今までにもう何度も種子島でロケットの打ち上げを見ていますが、こんなにも素晴らしい昼間の打ち上げを見たのは、僕はこれが初めてです。

本日最終の高速船で離島して首都圏へと帰る日帰り弾丸ツアー組と別れて、
満足感と充実感に満たされ、幸せな気分で宿へと戻ります。

「さぁ、今夜は祝杯だー!」

後編に続きます