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2011ゴールデンウィーク日本あちこちぶらぶら紀行 その4 上坂浩光監督講演会

2011-06-19 | 博物館・美術館に行く
その3からのつづき

5月5日、
おかえり!はやぶさ はやぶさ帰還カプセル特別展示 in富田林が行われている富田林市のすばるホールでの3日連続の特別講演会も今日が最後。

特別講演会の最後を飾るのは、ここすばるホールをはじめ全国のプラネタリウムで上映されている
全天周映像作品HAYABUSA -BACK TO THE EARTH- (HBTTE)を手掛けられた上坂浩光監督による
『HAYABUSA、いのちの物語』です。
HBTTE応援団長のTwitter宇宙クラスタ・galileo_falconさんの描かれた味のあるタイトルイラストと共に登壇されました。

最初に、
「HBTTEは、宇宙の中の、自分たちの生命について考えようというのがコンセプトです。
今日はその集大成の話をします」と御挨拶。

(以下、起 承 転 結 と進む講演のレポートです)




JAXA「はやぶさ」ミッションチームによる、「はやぶさ」の旅を物語的に描いた映像作品
「小惑星探査機 はやぶさの物語:祈り」の作成にCG制作で参加した。
そのことで、JAXA関係者の熱意が分かった。
「祈り」を作った当時、「はやぶさ」はまだイトカワにいた。

「祈り」のラストシーン、「はやぶさ」の地球帰還シーンに自分で感動して涙が出た。
その時、「祈り」ではない作品も作りたいと思った。
2008年の3月24日、大阪市立科学館学芸員の飯山青海さんとJAXAの吉川真先生に会い、話し合った。
その後、新宿の喫茶店で飯山さんと話し、
「イトカワを真っ二つにしていいですか?」と聞いた。
そこからHBTTEがスタートした。

当初は、冒頭に日本のロケット開発と「はやぶさ」プロジェクトへのオマージュとなるシーンを入れる予定だったが、
制作会社のライブ社のスタッフの一人が「関係ないと思う」と言う。
オマージュとしてJAXAの人を入れてしまうと、それは探査機「はやぶさ」と関係がないので興味が沸かない、と。
最初は不満だったが、観る人に自分のこととして興味を持ってもらわないとと思い同意した。

周りは反対意見ばかりで、暗い雰囲気での制作スタートだった。
しかし、“はやぶさとあなたの物語”というコンセプトが決まると、以降はスイスイ進んだ。

特に人気の高い「はやぶさ」の地球スイングバイシーン、
画面に現れる(「はやぶさ」の進む軌道を表す)グリッドは本当は○(丸)の方が正確なのだが、パーツ感を出す為に□(四角)にしてある。

イトカワの大きさを示すシーンで登場するタンカー。
新幹線でもいいんだけど、宇宙に海面を描きたかったから。

イトカワの切断シーン。
吉川先生曰く「斬鉄剣カット」

「宇宙の中の我々のいのち」というコンセプトから
「いのちの物語」へ。
皆、「はやぶさ」に命があると思っていたのだろう、すぐに決まった。
そしてこのとき、自分が監督を務めることも決まった。

ラストシーンについて。
2008年8月6日の大阪市立科学館でのプレゼンでのラストシーン案の反応が悪い。
「思い入れを入れるのはやめて、担々と」という意見と「そういう感情を入れるのが大事」という2つの意見が対立した。
そこで最後に隠し玉として用意していた、ラストシーンのムービーを上映
ムービーを観たら皆の態度が変わり、そのまま制作GOが出た。




最初の頃はプラネタリウムの全天周に合わせた丸い絵コンテを描いていたが、
慣れてきたら普通の四角い絵コンテを描くようになった。

初めから、完全な(オリジナルと同じ)長さで作っていく。

エンディングシーンの仮CGでは、音楽が完成版とは異なっている。
また、「こうして宇宙のバランスは保たれている」という台詞が後にカットされた。
これは飯山さんから「意味が通じません」とダメ出しがあった為。

当初、JAXAからは「はやぶさ本体の地球大気圏再突入は描かないで欲しい」と言われていた。
これは、再突入地点となるオーストラリアへの配慮の為。
でも、「あのシーンは描かないと!」と思い、ある時プレゼンで川口プロマネと吉川先生にこっそりエンディングシーンを見せたところ、あっさり「いいんじゃないの?」と言われた。
実はこの時、既にオーストラリアとの再突入に関する交渉は済んでいた。

こうして、完成したHBTTEはいよいよ公開される。
しかし、当初は上映館は2つのみ
もっと多くの人に観て戴きたい、と思った。
でも確かな反響はあった!HBTTEを観た人々から多くのメッセージが届いた。




2010年の3月頃、TVや新聞で「はやぶさ」の帰還が近いことが報じられるようになり、HBTTEの上映館が増加してきた。
そして地球帰還当日の6月13日、報道関係者としてJAXAと共に現地オーストラリアへと向かった。


「はやぶさ」が地球に帰ってきて、また作品を作るぞ!!と思うもダメ出しされる。
既にイメージが出来上がっているので、一度作ったものをぶち壊してゼロからまた作ることになり、難しいぞ、と。
それでも、コスモプラネタリウム渋谷で作れることになった!

地球大気圏に再突入して燃え尽きる「はやぶさ」を描くラストシーンは残酷だが、とても大事なこと。


「はやぶさを地球で迎えたたくさんの人が、その想いを共有できるものにしたい」がコンセプト。
こうしてHAYABUSA -BACK TO THE EARTH-帰還バージョンは生まれた。

HBTTE帰還バージョンには
「はやぶさプロジェクトに関わったすべての人に捧げる」という言葉が添えられる。
「すべての人」には、直接運用に関わった関係者だけでなく、一人一人の「はやぶさ」ファンも含まれる。




HBTTEは英語版にもなり、文部科学大臣賞も受賞した。
また、角川映画配給で平面板の全国劇場公開も行われ、
東日本大震災被災者に向けて被災地での無償上映も始まる。

「はやぶさ」は一人一人の心のなかに大切なものを残してくれた。
いつか、それを受け取った子どもたちは素晴らしい世界をつくってほしい。


…3日間に渡ったすばるホールでの特別講演会もこれにて終了。
明日は、首都圏へと移動します。

その5につづく

2011ゴールデンウィーク日本あちこちぶらぶら紀行 その3 阪本成一先生講演会

2011-06-19 | 博物館・美術館に行く
その2からのつづき

5月4日
今日も昨日に引き続き、おかえり!はやぶさ はやぶさ帰還カプセル特別展示 in富田林が行われている富田林市の
すばるホールでの特別講演会。

今日は第二日目、JAXA宇宙科学広報・普及主幹、阪本成一先生による
『はやぶさとALMAでさぐる太陽系のはじまり』です。

先ずは、太陽系の基礎説明から。

太陽系形成についての説明。
惑星の大きさには「ある一線」があり、地球の大きさの5倍を超えると水素やヘリウムを逃さず引き止められるようになる。
この「ある一線」を超えると、惑星の大きさは爆発的に膨らむ=木星型惑星。

また、もし冥王星を地球軌道近くまで持ってきたら巨大彗星になってしまうであろう。

「冥王星は、国際天文学連合総会での投票で民主的に惑星ではなくなった。
私もその場にいて、惑星からの冥王星外しに加担しました(笑)」


次に、阪本先生の考える小惑星探査の意義

1:太陽系の理解
2:地球防衛(スペースガード)
3:資源としての活用(基地としても使える)

(※但し、2と3については「眉唾ものだと思っておいてw」とのこと)

このうち2の地球防衛については
「もし明日、ここ富田林に隕石が落ちてきたら…そうトンダコトです!」

太古、ユカタン半島に落ちた隕石の破壊力は広島型原爆の50億倍
恐竜が滅んでしまったのは、地球防衛をしなかったからである。我々も今、地球防衛を始めたところ。

地球にぶつかってくる敵を探す。
地球防衛はとても目のいいアンパイアのようなもの。今のところ、すべてボール判定
でも、もしストライクになったら…?
ちなみにバッターとキャッチャーはいない。

「はやぶさ」について。

軌道要素確定の説明。
新幹線の「のぞみ」号から富士山を撮影することは出来るが、熱海駅のプラットホームに立ってる人は撮れない。
それは、人は富士山よりもずっと小さいから。
では、どうすれば撮れる?
「のぞみ」号を熱海駅に停めればいい。
でも、それには膨大なエネルギーが必要。「もし政治家が無理に停めたりしたら、次の選挙は落選確実です」
50万もある軌道要素を確定し、ブラックリストに載っている(地球に接近する軌道を持つ)小惑星の中から後にイトカワと呼ばれるようになるものを選んだ。

日本は元々、南極で沢山の隕石を拾っている実績がある。
南極で隕石を見つけやすいのは、地表が氷に覆われているから。
但し、隕石は地表に到達するまでに焼けているので、言わばカツオのたたき
これに対して、クール宅急便で生のカツオを持って帰る、これが「はやぶさ」。

イトカワからのサンプル採集については、ボクシングのセコンドと同じ。
「イトカワのボディをねらえ!」

チリのアタカマ砂漠に建設中のALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の裏話・苦労話に引き続き、質疑応答。
ここで最後に、小学生くらいの子から凄い質問が。

Q:今さら「はやぶさ」等で地球の始まりを知って何になるの?
これには流石の阪本先生も思わずのけぞりつつ、
「ワクワクしない?」
講演会の司会進行役、すばるホールのプラネタリアンnao君も「や、山があったら登りたいでしょ?」とフォロー。
やや波乱のうちに幕となったのでした。
(阪本先生、お疲れさまでした…)

明日は、全天周映像作品HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-の上坂浩光監督の登場です。

その4につづく