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脂肪肝炎にビタミンDが効果的かも? ビタミンD投与で4週後にNAFLD患者の肝脂肪量が減少

2015年05月04日 | 学会研究会報告新聞記事など
日経メデイカルからの抜粋です。

ビタミンD投与で4週後にNAFLD患者の肝脂肪量が減少 2015/4/26 欧州肝臓学会取材班
ドイツSaarland University Medical CenterのCaroline Stokes氏
 ビタミンDは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症や病態に深く関与しており、NAFLD患者は血中ビタミンD濃度が低下していることが報告されている。そのため、ビタミンD不足を是正すれば肝脂肪症が改善する可能性がある。今回、肝脂肪蓄積が認められる患者において、ビタミンD投与により肝脂肪量が減少すること示された。欧州肝臓学会(EASL2015、4月22~26日、ウィーン開催)で、ドイツSaarland UniversityMedical CenterのCaroline Stokes氏らが報告した。

 本研究は単一施設においてオープンラベル、単群で実施
され、肝脂肪蓄積が多く認められる患者40例に対してビタミンDを投与し、肝脂肪量の変化を比較検討した。肝脂肪量の測定には非侵襲的な評価指標であるCAP(controlled attenuation parameter)を用いた。
 ビタミンDとしてコレカルシフェロール(ビタミンD3)20000 IUを最初は7日間連続で、その後は週に1回、6カ月後まで投与した。初期にコレカルシフェロールを連日投与したのは、栄養状態が不良だと反応性が低いことが報告されているため。なお、ライフスタイルへの介入は行っていない。
 対象の年齢は54.9歳、男性が21例、BMIは29.5kg/m2、BMI 30kg/m2以上が45%を占め、体脂肪率は32.3%、内臓脂肪スコアは11.4だった。4週後は全例を追跡できていたが、3カ月後は33例だった(6カ月後のデータは集計中のため未発表)。
 その結果、4週間のビタミンD投与により、血中25(OH)Dは11.8ng/mLから34.6ng/mLに有意に上昇(P<0.001)、副甲状腺ホル
モン(PTH)は41.5pg/mLから34.5pg/lLに有意に低下し(P=0.002)、CAPは329.8dB/mから310.8dB/mに有意
に下がっていた(P=0.012)。なお、BMI、体脂肪率、ALT、ASTなどでは有意な変動が認められなかった。
 今回の検討から、肝脂肪症は4週間のビタミンD投与で改善すること、CAPは肝脂肪症の変化を鋭敏に評価できるこ
とが示された。Stokes氏は、「治療反応性の高い患者を対象としたランダム化比較試験を行うとともに、ビタミンD投与による肝細胞の脂質リモデリングの分子機序を解明する必要がある」との見解を示した。

アルコール依存症患者さんへ朗報か! アルコール依存症、バクロフェンで飲酒量が激減

2015年05月04日 | 学会研究会報告新聞記事など
日経メデイカルからの抜粋です。
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_--_254446_--_366256_--_2
欧州肝臓学会2015 2015年4月22日~26日 Vienna, Austria
アルコール依存症、バクロフェンで飲酒量が激減 2015/4/27欧州肝臓学会取材班

 アルコール依存症患者にバクロフェンを1年にわたって投与したところ、アルコール消費量が大幅に減り、飲酒に関連するマーカーの値や肝機能などが改善した。フランスCentre Hospitalier Intercommunal CreteilのCamille Barrault氏らが、欧州肝臓学会(EASL2015、4月22~26日、ウィーン開催)で発表した。
 バクロフェンはγ-アミノ酪酸(GABA)の誘導体で、中枢性筋弛緩薬として日本では脳血管障害などによる痙性麻痺に使われている。これまで、バクロフェンにアルコール消費量を減らす作用があるとの報告が幾つかされている。そこでBarrault氏らは、アルコール依存症に対するバクロフェンの有効性と安全性を検討するため、単群、オープンラベルの前向き試験を行った。
 2010年6月~2013年9月にアルコール依存症の専門外来を受診した、連続した患者100人にバクロフェンを1年にわたって投与し、有効性と安全性を評価した。バクロフェンは15mg/日で開始し、アルコールへの依存症状がなくなるまで、週単位で漸増した。
 患者の平均年齢は53歳、男性が75%、Child-Pugh分類Aの肝硬変が65%、Bが20%、Cが15%で、16%が膵炎を合併していた。平均飲酒期間は15年だった。
 1年間のバクロフェンによる治療を完遂したのは83人。バクロフェンの投与量の中央値は40mg/日だった。追跡期間中の脱落が9人、死亡が4人、肝移植が1人、バクロフェン投与中止が3人あった。 
1年間の治療後、1日のアルコール消費量の中央値は、106gから18gに有意に減った(P<0.0001)。83人中77人が、1日のアルコール消費量
が治療前の半分以下になった。その内訳は、禁酒が44人、アルコール消費量30g/日以下が20人、同30g/日超が13人だった。
 禁酒に成功した44人とアルコール消費量30g/日以下になった20人、計64人の解析では、飲酒に関連するマーカーの値や肝機能の改善が確認された。γGTP、ASTも有意に減少していた(ともにP<0.001)。プロトロンビン時間は69%から77%(P<0.001)、ビリルビンは34μmol/Lから19μmol/L(P=0.026)、アルブミンは34g/Lから37g/L(P=0.007)に変化した。
 有害事象は20人で報告され、2人がバクロフェンを中止した。肝機能や腎機能の低下はなかった。

 1年間のバクロフェン投与により、アルコール消費量が減り、飲酒に関連するマーカーや肝機能の改善が確認された。「バクロフェンはアルコール消費量を劇的に減らすことができ、忍容性も十分だった」と、Barrault氏は結論付けた。