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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ファルコン9ロケット、初の“オール電化”衛星2機の打ち上げに成功

2015年03月15日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
スペースX社は、通信衛星“ABS 3A”と“ユーテルサット115ウェストB”を搭載した、
ファルコン9ロケットの打ち上げに成功しました。

両衛星は、
初めて打ち上げられた“オール電化”衛星で、
すべてのスラスターに化学推進でなく、
イオン推進システムを採用しています。

またファルコン9が、静止衛星を2機同時に打ち上げたのも今回が初めてなんですねー

ファルコン9はケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇。

順調に飛行を続け、
約30分後に“ABS 3A”を、
さらに、その5分後には“ユーテルサット115ウェストB”を、
所定の軌道に投入しています。

“ABS 3A”と“ユーテルサット115ウェストB”は、
共にボーイング・サテライト・システムズ社が製造した衛星で、
702SP衛星バスを採用した最初の2機になります。

702SPはキセノンを使用するイオン推進システムをスラスターに使っていて、
従来の化学推進やアークジェット推進を使っていた衛星に比べて、はるかに効率がイイんですねー

なので、衛星の軽量化や、同じ質量でも従来より多くの機器を搭載することができます。

また、衛星を2つ重ねて打ち上げることが出来るように設計されていて、
今回の打ち上げでさっそく使用されています。

両衛星は現在、スーパーシンクロナス・トランスファー軌道という、
少し変わった軌道に乗っています。

多くのロケットは静止衛星を打ち上げる際、
静止トランスファー軌道という、静止衛星の一つ前の軌道に送り届けます。

静止トランスファー軌道は、
遠地点(地球から最も遠い位置)が、静止軌道の高度(36,000キロ)と同じなんですが、
近地点(地球に最も近い位置)と、軌道傾斜角(赤道からの傾き)はズレていることが多いんですねー

なので、そこから静止軌道に乗り移るには、
人工衛星がスラスターを噴射するしかありませんでした。

でも衛星にとっては、
推進剤の残量が、多ければ多いほど運用期間を延ばすことができるので、
なるべく噴射を少なくしたいという事情があります。

そこで使われるのがスーパーシンクロナス・トランスファー軌道です。

この軌道は、通常のトランスファー軌道とは異なり、
遠地点高度が36,000キロよりも、はるかに高くなる軌道に衛星を乗せます。

これによって軌道傾斜角0度への変更が、
通常の静止トランスファー軌道から行うよりも、少ない燃料で可能になるんですねー

一方、ファルコン9ロケットはスペースX社によって開発されたロケットで、
打ち上げ機数は今回で16機目。
これまでに大きな失敗を起こしていないので、ひじょうに安定したロケットと言えます。

最近のファルコン9の打ち上げでは、第1段ロケットの回収試験が注目されています。

でも、今回の打ち上げでは積荷が重く、ロケットが持つ能力を最大に使う必要があったので、
改修のための余分な推進剤を積んだり、着陸脚を装備する余裕がなかったので実施されなかったようですよ。