宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

丸い円盤銀河の出現時期は70億年前?

2015年03月30日 | 宇宙 space
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した画像データの解析から、
丸い円盤銀河の出現時期が宇宙年齢約60億年…
現在から約70億年前の時代ということが分かってきました。
丸くなる円盤銀河の進化(イメージ図)。

銀河は、その構造と性質によって大きく2タイプに分類されます。

それらは、
渦巻き模様が見られ、現在でも星が誕生している渦巻銀河(円盤銀河)と、
模様が見えず、星をほぼ生み出していない楕円銀河になります。

円盤銀河は名前の通り円盤状の形に見えて、
円盤の軸方向から見ると丸く、縁の方向から見ると薄く見えます。

つまり、縦と横の2方向のサイズはほぼ同じで、高さ方向のサイズがそれよりも薄くなります。

これに対して楕円銀河はは、
縦・横・高さの3方向のサイズが、ジャガイモのようにバラバラなのが特徴。

こうした銀河が、宇宙の歴史の中で、
いつどのようにして誕生し成長してきたのかという問題は、
現代天文学の重要な研究課題の1つなんですねー

とくに、ガスから星への転換史という観点からの研究は、
これまで、盛んに行われてきました。

でも銀河の形態が、どのように変化(進化)するかという問題は、
観測精度の限界もあり、これまでよく分かっていませんでした。


今回の研究では、
宇宙年齢が30億年ごろ(赤方偏移2付近)の星形成銀河を多数選んで見かけの軸比(丸さ)を測定し、銀河の形態を調べています。

昔の銀河にある星形成銀河は、現在の宇宙に存在する円盤銀河の祖先と考えられるので、
もし3次元的な形が変わっていなければ、この時代の星形成銀河の“丸さ”の分布は、
現在の円盤銀河のものと大差ないはずです。

形態を調べるためには、優れた角分解能が必要。
なので、ハッブル宇宙望遠鏡で最近得られた近赤外域での観測データが用いられています。

その結果、現在の宇宙にある円盤銀河とは異なり、
“丸い円盤”ではなく、3つの軸の長さの傾向は、バラバラに近いことが示されることに…

さらに、より赤方偏移の小さい(つまり、より現在に近い)時代の星形成銀河の形を
系統的に調査。

約20億年ごとの時代にわけて、
それぞれ上記と同じ手法を用いて銀河の形態を調べたんですねー

すると、赤方偏移0.85あたりでは、
現在の宇宙で見られるような、ほぼ丸い円盤になっていることが明らかになりました。
宇宙年齢で言えば60億年ごろ、いまから約70億年前ということになります。

丸くなってきた理由については、
銀河内での力学的相互作用によるもの、銀河中心に存在する超巨大ブラックホールの影響、
銀河同士の相互作用が頻繁ではなくなってきたため擾乱がなくなってきた、
といった説が考えられています。

では、なぜ昔は丸くなかったのか? っという疑問もあるのですが、
それは、銀河相互作用が激しかったので、乱れた構造をしていたのかもしれません。

また、そもそもどうやってバルジが出来て、
現在の宇宙に見られるような円盤銀河の構造に進化したのかという問題も、
大きな課題としてあります。

より多くのサンプルを用いて、さらに詳細な構造の進化を追い、
銀河周辺の環境との関係も考慮すれば…
形態進化の物理的な原因が明らかにできるのかもしれません。

このような銀河構造の進化については、
建設の始まった30メートル望遠鏡(TMT)によって、
大きく研究が進展するのかもしれませんね。