宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

堆積物から分かった200万年前に起こっていた超新星爆発

2016年04月28日 | 宇宙 space
今から200万年ほど前のこと、
地球の近くで巨星が爆発したかもしれないんですねー

アウストラロピテクスなど初期のヒト科が、
満月よりも明るく輝く星が突然現れたことに驚いたかもしれません。

青みがかった不気味な光は、日中でも見えるほど明るかったようです。
1054年に中国や日本で記録された明るい星の出現は、
地球に最も近いところで起きた超新星爆発の1つ。
カニ星雲は、この超新星爆発の残骸。


超新星爆発

爆発が起きた場所は地球から約300光年も離れていたので、
生物に害を及ぼすことはなかったようです。

でも、地球に何も影響がなかったわけではありませんでした。
その爆発は、鉄の放射性同位体“鉄60”を地球と月に浴びせることになります。

今回の研究では、海底の堆積物に含まれる“鉄60”の年代を調査。

すると150万~230万年前に、
複数の超新星爆発が起きたことが分かってきたんですねー


地球に落ちてきた鉄

死にゆく恒星の内部では核融合反応がどんどん進み、
周期表の元素の大部分が作り出されます。

こうした元素が超新星爆発よって星間空間に撒き散らされると、
爆発した星の種類や、爆発が起きた時期と場所を特定するための手がかりになります。

問題は、撒き散らされた星の破片をどうやって見つけるかです。

地球に飛んできた破片が、まとまって頭上に落ちてくると分かりやすいのですが、
地球全体に散らばってしまうと、それに気付くのが難しいんですねー

そこで科学者たちは1999年に地球の深海底地殻を調査。

大昔の超新星爆発によって吹き飛ばされてきた可能性のある、
“鉄60”が微量に含まれているのを発見します。

そして、その5年後には“鉄60”の量と年代の分析から、
問題の超新星爆発が、200万年ほど前に地球からほど近いところで起きていたことを、
突き止めるんですねー


深海天文学

今回、別の研究チームが、
インド洋、太平洋、大西洋の深海底地殻に含まれる“鉄60”と、
それに関連した団塊や海底堆積物を詳しく分析したところ、
はるかに複雑な物語が見えてきたんですねー

用いられたのは深海天文学と呼ばれる研究手法。

この手法で今まで知られていたものよりも古い、
約800万年前の超新星爆発によって吹き飛ばされてきたと思われる“鉄60”を発見します。

このことは、地球の近くで複数の超新星爆発が起きていたことを示す最初の証拠になり、
200万年前の超新星爆発の証拠ほど強力ではないのですが、
遠い過去の超新星爆発の証拠として、非常に魅力的なものになります。

厄介なのは、地球に飛び込んできた“鉄60”が、
海底堆積物の中に蓄積していったペースでした。

約200万年前の“鉄60”の痕跡は、かすれたように広がっていて、
100万年以上かけて堆積したことを示しています。

この痕跡の幅は、
1回の超新星爆発が作り出す痕跡に比べて、
ずっと広いんですねー

広がった痕跡は、
複数の超新星爆発が直接作り出したものなのでしょうか?

それとも、過去の超新星爆発の残骸が薄い雲のように漂っている中を、
地球が通り抜けた結果なのでしょうか?

その答えは、
海流や海洋生物によって常にかき乱されている海底堆積物の中に、
鉄がどのように蓄積するかによっても違ってきます。

まぁー 海底堆積物を調べる深海天文学は、
天文学者にとっては新しいタイプの研究手法なので、
使いこなせるようになるためには、
その癖をよく理解する必要があるということですね。

こちらの記事もどうぞ ⇒ 太陽系ができた頃に、すぐ近くで超新星爆発はなかった?