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51分という短い周期でお互いの周りを回る連星を発見

2022年11月07日 | 宇宙 space
連星のうち、2つの星の距離が太陽半径の数百倍より近いものを“近接連星”と言います。

“近接連星”では、2つの星がこれほど接近しているので、星が膨張したときに質量のやり取りが起こって、単独星とは全く違う進化をするんですねー

今回見つかったのは、通常の恒星と白色矮星の近接連星である“激変星”としては、最も短い51分でお互いの周りをまわる連星でした。

今後、白色矮星は恒星のガスをはぎ取り続け、両者の距離はさらに縮まっていくようです。

お互いの周りを短い周期で回る連星

ヘルクレス座の方向約3000光年彼方にある“ZTF J1813+4251”は、質量が太陽の1割しかない恒星と、燃え尽きた星の中心核が残った白色矮星からなる連星です。

両者の距離は非常に近く、恒星から白色矮星へとガスが流れ込んでいます。

このような天体は“激変星”と呼ばれますが、“ZTF J1813+4251”の2つの天体の距離はこれまでに知られているどの“激変星”よりも短いもの。
51分という周期でお互いの周りを回っていました。
激変星は変光星の大きな分類の一つで、激変変光星や激変方変光星ともいう。短期間(長くても数日)に極度に増光し、その後穏やかに減光する。それを1度きり起こすか、不規則な周期で繰り返す。変光現象として、白色矮星表面で降り積もったガスが起こす水素の熱核暴走反応による新星、降着円盤の物理状態の変化により大きな光度変化を起こす矮新星などがある。超新星以外は白色矮星を含む近接連星系であり、Ia型超新星も中性子星を含む近接連星系である。多くの場合は降着円盤が変光に関わっている。

“激変星”のイメージ図。左の恒星と右の白色矮星が極めて短い周期でお互いの周りを回り、白色矮星へとガスが流れ込んでいる。(Credit: M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)
“激変星”のイメージ図。左の恒星と右の白色矮星が極めて短い周期でお互いの周りを回り、白色矮星へとガスが流れ込んでいる。(Credit: M.Weiss/Center for Astrophysics | Harvard & Smithsonian)

突発天体掃策プロジェクト

“ZTF J1813+4251”は、アメリカ・マサチューセッツ工科大学の研究チームが、アメリカ・パロマ天文台の突発天体掃策プロジェクト“ZTF:Zwicky Transient Facility”のデータから見つけ出した天体でした。

ZTFプロジェクトでは、10億個以上の星をそれぞれ1000枚以上撮影して、日、月、年単位で変化する明るさを記録しています。

研究チームは、その膨大なデータの中からアルゴリズムを使って、1時間以下の周期で点滅しているように見える星を約100万個選出。
そこから注目に値する信号を目視で探し、見つけたのが“ZTF J1813+4251”でした。

続いて行われた“ZTF J1813+4251”の観測で、連星がお互いを隠すことによる明るさの変化がはっきりととらえられ、それぞれの星の質量や半径、公転周期が正確に測定されています。

コンパクトな星で構成されている連星

もし、連星系の星が太陽のような天体であれば、軌道周期が8時間よりも短くなることはありません。

では、51分という極端に短い周期は何を意味しているのでしょうか?

それは、連星を構成する星が、どちらもコンパクトだということなんですねー

白色矮星の方は、質量が太陽の約半分で直径は100分の1と高密度。
ただ、これは白色矮星として普通のことになります。

一方で恒星の方は、質量も直径も太陽の10分の1で、密度は太陽の100倍もありました。

太陽のように核融合を行っている恒星が、これだけ高密度になるということは、その大部分が水素より重いヘリウムに置き換わっていることを示唆しています。

“激変星”では、昔から提唱されていることがあります。
それは、白色矮星が相手の恒星の外層に含まれる水素をはぎ取ってしまい、恒星の中心で生成されていたヘリウムが残されるということ。

研究チームのシミュレーションからは、“ZTF J1813+4251”の恒星では今後水素が完全に失われ、ヘリウムを多く含む高密度のコアが残ると考えられています。

そして、7000万年後には2つの星はさらに接近し、軌道周期はわずか18分に…
ただ、恒星は赤色巨星として膨張していき、連星はお互いに離れていくと予想されているようです。


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