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木星の氷衛星を探査するミッション ヨーロッパ宇宙機関の探査機“JUICE”が打ち上げに成功

2023年05月10日 | 木星の探査
2023年11月27日更新
ヨーロッパ宇宙機関が主導し、日本などが参加する木星氷衛星探査計画。
この計画で用いられる探査機“JUICE”が4月14日に打ち上げられました。

木星の氷衛星エウロパやカリスト、ガニメデを目指す8年の長い旅をスタートさせた“JUICE”。
計画では、衛星表面を覆う氷の下に巨大な地下海が存在すると考えられている木星の氷衛星を複数探査。
ミッションの最後には氷衛星ガニメデを周回して精査する予定です。

木星の大型氷衛星にターゲットを絞った初めての探査計画

日本時間の4月14日21時14分、木星氷衛星探査機“JUICE(Jupiter Icy Moons Explorer)”を搭載したアリアン5型ロケットは、南米のフランス領ギアナのクールー宇宙基地を離床。
打ち上げは順調に進み、探査機は予定通りにロケットから分離し、地上との通信を確立したんですねー
その後、太陽電池パネルを展開して所定の軌道に入っています。

“JUICE”は11月17日(日本時間18日)、来年の2024年8月に実施される地球-月系でのスイングバイに向けた軌道修正が行われました。

今回の軌道修正では、約43分間にわたり探査機のメインエンジンを燃焼。
消費した燃料は、打ち上げ時に搭載していた燃料(3650キロ)のほぼ10%に相当する363キロでした。
今回の軌道修正により“JUICE”の速度が秒速200メートルに変化したそうです。

地球-月系のスイングバイに向けた軌道修正は、2段階に分けて行われます。
今回はその1回目で、“JUICE”の軌道を分析したのち、数週間後に2回目となる小規模な軌道修正が実施される予定です。

なお、地球に接近中の2024年5月に最終的な微調整が実施される可能性があります。

“JUICE”は2024年8月に地球-月系でのスイングバイを行った後、2025年に金星、2026年と2029年に地球でスイングバイを実施する予定です。
そして、8年後の2031年7月に木星の周回軌道に投入されることになります。

今回の軌道修正が成功すれば、木星の周回軌道に入るまでメインエンジンを再び使用することはないそうです。

衛星ガニメデに接近し木星系に入った“JUICE”は、13時間後に秒速約1キロの減速を行う必要があります。
これは、今回の速度変化の5倍にもなる速度です。

今回の軌道修正は、木星軌道投入に向けた重要なテストの側面もあったようです。
探査機が天体を接近通過するとき、その天体の重力を利用して積極的に軌道変更をする場合を“スイングバイ”、観測に重点が置かれる場合を“フライバイ”と言い使い分けている。
“JUICE”の打ち上げ。(Credit: ESA/S.Corvaja and ESA/CNES/Arianespace/Optique Video du CSG/JM Guillon)
“JUICE”の打ち上げ。(Credit: ESA/S.Corvaja and ESA/CNES/Arianespace/Optique Video du CSG/JM Guillon)
“JUICE”は“JUpiter Icy Moons Explorer”の略で、木星氷衛星単計画を意味します。

木星の大型氷衛星であるガニメデ、カリスト、エウロパにターゲットを絞った初めての探査計画になります。

木星系に到達する6か月前の2031年1月から科学観測を開始し、同年の7月から2034年11月までエウロパに2回、カリストに30回以上の接近飛行(フライバイ)を行うことになります。

その後、“JUICE”はガニメデを周回する軌道へ入り、高度500キロまで近づきながら9か月間の探査を予定しています。
約8年間にわたる“JUICE”の木星系までの旅と主な探査スケジュール。(Credit: ESA - CC BY-SA 3.0 IGO)
約8年間にわたる“JUICE”の木星系までの旅と主な探査スケジュール。(Credit: ESA - CC BY-SA 3.0 IGO)
ステラナビゲーターを使った“JUICE”の航路をシミュレーション。(Credit: AstroArts)
氷衛星には、太陽系形成当時の材料物質が残っていると期待されています。

そうした物質は、ガス惑星である木星からは得難いものなんですねー

太陽系最大の惑星で、太陽系形成時に重要な役割を果たしたであろう木星の歴史を氷衛星から得ることが、“JUICE”の目的の一つになっています。

さらに、もう一つの重要な目的があります。
それは、氷衛星の地下に存在すると考えられている海の調査です。

日本が観測装置の一部を担当しているガニメデ高度計“JUICE-GALA”はJUICE衛星とガニメデとの間の距離を測定することで、木星の周りを回るガニメデ衛星の形状変化をとらえて、ガニメデ衛星の地下海構造を明らかにする予定です。

海の有無を調べるだけでなく、熱源や栄養源など、生命に欠かせない要素を探し、地球外生命が存在する可能性を追求することになります。

さらに、木星のオーロラや磁気圏、そして太陽系の衛星で唯一固有の磁場を持つガニメデの周辺環境も調べる計画になっています。
日本は、10個ある観測機器のうち6つの開発やサイエンスに参加しています。

“JUICE”は、今大きな関門を突破し出発しました。
ミッション完了まで10年、この長い期間“JUICE”に何が起こるのでしょうか?

きっと、誰も行ったことのない世界を訪れた“JUICE”は、誰も見たことのないデータを得て、多くの科学成果を届けてくれるはずですよ。
“JUICE”の打ち上げ中継“Juice launch to Jupiter”の録画。(Credit: European Space Agency)


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