多様な物質と地形をもつ準惑星
地球から遠くはなれた天体。
今回は準惑星に降格になった太陽系の元第9惑星の話です。
これまで多くの研究者が、
冥王星はクレーターだらけの退屈な氷の塊だと思っていました。
でも、NASAの探査機“ニューホライズンズ”が、
そのイメージを変えることになります。
2015年7月のこと、“ニューホライズンズ”が、
史上初めて冥王星にフライバイ(接近通過)による観測を行い、
冥王星や衛星カロンの詳細な表面画像を見せてくれました。
【冥王星探査】広がる氷の平原と、太陽風ではぎ取られる大気
巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。
実際の冥王星は、
ハート模様やクジラのような模様、氷河や氷の火山などが見られ、
驚くほど多様な物質や地形に彩られていたんですねー
なかでも目を引くのが、赤道域を中心に幅およそ300キロ、
長さおよそ3,000キロにわたり広がる褐色の領域“くじら模様”でした。
“クジラ模様”は、赤道領域全体のおよそ3分の1を占めています。
ただ、この模様の形成には、
かつて冥王星で起こった大規模な物理・化学過程が関わっているはずなんですが、
その形成過程は謎のまま…
新たな研究によると、冥王星の赤道域に広がる褐色の“くじら模様”は、
衛星カロンを生み出した天体衝突によって、できた可能性があるそうです。
そもそも、どこがクジラ模様? っという疑問もありますよねー
一応ハート模様の左下の黒い部分、ここがクジラっぽく見えるそうです。
この地域は非公式に“クトゥルフ”という名前が付けられていて、
この場所には有機物のソリンの存在も予測されています。
模様はどうやって出来たのか?
今回の研究では、“クジラ模様”の形成過程に関して、
衛星カロンの形成に注目しています。
カロンの質量は冥王星の10分の1ほどもあり、
これは主天体に対する割合として非常に大きいんですねー
そのカロンの起源として、
冥王星への巨大天体の衝突“ジャイアント・インパクト”が提唱されるのですが、
実証的な証拠に欠けていました。
研究チームが考えたのは、
もし冥王星に“ジャイアント・インパクト”が起こった場合、
衝突地点付近の氷が加熱されて広大な温水の海ができること。
その海では冥王星に元々存在していた単純な分子種が重合反応を起こして、
褐色の有機物が生成されるのではないかということでした。
そこで研究チームでは、
巨大天体衝突後に、温水の海で起こる化学反応を再現することになります。
行われたのは、ホルムアルデヒドやアンモニアなど、
カイパーベルト天体に共通して含まれる分子種を含む水溶液を、
様々な条件の下で加熱する実験でした。
すると、およそ50℃以上で数か月以上の加熱時間の場合、
冥王星に元々含まれる物質から“クジラ模様”と同様の褐色の有機物が、
生成することが分かります。
温度条件
実際に、褐色の有機物が生成される温度条件が、
カロン形成の“ジャイアント・インパクト”時に達成されるのでしょうか?
数値シミュレーションによって調べてみると、
カロンのような大きさの衛星を形成する衝突条件の場合、
ほぼすべてのケースで“クジラ模様”と同程度の広さの加熱領域が、
冥王星の赤道域を中心に形成されることが明らかになります。
つまり、カロンを形成するような“ジャイアント・インパクト”が起これば、
必然的に赤道域に褐色の領域が形成されるということです。
裏を返せば、“クジラ模様”が冥王星に存在するということは、
“ジャイアント・インパクト”によって衛星カロンが形成されたという説を、
強く支持する材料になるんですねー
また、衝突の条件が変わると天体全体が褐色になったり、
加熱されず白いままだったりすることも確かめられています。
これにより、セドナやエリスといった他のカイパーベルト天体の多様性も、
“ジャイアントインパクト”の結果という統一的な説明が出来るようになりました。
今回の研究結果から、
地球に火星サイズの天体テイアが衝突して月が誕生した事と同様のことが、
冥王星とカロンでも起こった可能性が見えてきました。
初期の太陽系では、このような衝突が頻繁にあったのかもしれません。
地球形成領域から太陽系外縁部にわたる広い範囲で、
原始惑星同士が頻繁に衝突・合体するという大変動を経て、
現在の太陽系の姿になった…
っと考えると、
今回の研究により太陽系の成り立ちに少し近づけた気がしますね。
こちらの記事もどうぞ
月を作ったのは“巨大衝突”ではない。 のかも…
火星の衛星は巨大天体が衝突して作られた のかも…
地球から遠くはなれた天体。
今回は準惑星に降格になった太陽系の元第9惑星の話です。
これまで多くの研究者が、
冥王星はクレーターだらけの退屈な氷の塊だと思っていました。
でも、NASAの探査機“ニューホライズンズ”が、
そのイメージを変えることになります。
2015年7月のこと、“ニューホライズンズ”が、
史上初めて冥王星にフライバイ(接近通過)による観測を行い、
冥王星や衛星カロンの詳細な表面画像を見せてくれました。
【冥王星探査】広がる氷の平原と、太陽風ではぎ取られる大気
巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。
実際の冥王星は、
ハート模様やクジラのような模様、氷河や氷の火山などが見られ、
驚くほど多様な物質や地形に彩られていたんですねー
なかでも目を引くのが、赤道域を中心に幅およそ300キロ、
長さおよそ3,000キロにわたり広がる褐色の領域“くじら模様”でした。
“クジラ模様”は、赤道領域全体のおよそ3分の1を占めています。
ただ、この模様の形成には、
かつて冥王星で起こった大規模な物理・化学過程が関わっているはずなんですが、
その形成過程は謎のまま…
新たな研究によると、冥王星の赤道域に広がる褐色の“くじら模様”は、
衛星カロンを生み出した天体衝突によって、できた可能性があるそうです。
メルカトル図法で作成された冥王星の地図。 下図点線で囲まれた他部分が“クジラ模様”の褐色の領域“クトゥルフ”。 |
そもそも、どこがクジラ模様? っという疑問もありますよねー
一応ハート模様の左下の黒い部分、ここがクジラっぽく見えるそうです。
この地域は非公式に“クトゥルフ”という名前が付けられていて、
この場所には有機物のソリンの存在も予測されています。
模様はどうやって出来たのか?
今回の研究では、“クジラ模様”の形成過程に関して、
衛星カロンの形成に注目しています。
カロンの質量は冥王星の10分の1ほどもあり、
これは主天体に対する割合として非常に大きいんですねー
そのカロンの起源として、
冥王星への巨大天体の衝突“ジャイアント・インパクト”が提唱されるのですが、
実証的な証拠に欠けていました。
研究チームが考えたのは、
もし冥王星に“ジャイアント・インパクト”が起こった場合、
衝突地点付近の氷が加熱されて広大な温水の海ができること。
その海では冥王星に元々存在していた単純な分子種が重合反応を起こして、
褐色の有機物が生成されるのではないかということでした。
そこで研究チームでは、
巨大天体衝突後に、温水の海で起こる化学反応を再現することになります。
行われたのは、ホルムアルデヒドやアンモニアなど、
カイパーベルト天体に共通して含まれる分子種を含む水溶液を、
様々な条件の下で加熱する実験でした。
すると、およそ50℃以上で数か月以上の加熱時間の場合、
冥王星に元々含まれる物質から“クジラ模様”と同様の褐色の有機物が、
生成することが分かります。
“ニューホライズンズ”が撮影した冥王星(右下)とカロン(左上)。 冥王星の左下に“クジラ模様”が見える。 |
温度条件
実際に、褐色の有機物が生成される温度条件が、
カロン形成の“ジャイアント・インパクト”時に達成されるのでしょうか?
数値シミュレーションによって調べてみると、
カロンのような大きさの衛星を形成する衝突条件の場合、
ほぼすべてのケースで“クジラ模様”と同程度の広さの加熱領域が、
冥王星の赤道域を中心に形成されることが明らかになります。
つまり、カロンを形成するような“ジャイアント・インパクト”が起これば、
必然的に赤道域に褐色の領域が形成されるということです。
裏を返せば、“クジラ模様”が冥王星に存在するということは、
“ジャイアント・インパクト”によって衛星カロンが形成されたという説を、
強く支持する材料になるんですねー
また、衝突の条件が変わると天体全体が褐色になったり、
加熱されず白いままだったりすることも確かめられています。
これにより、セドナやエリスといった他のカイパーベルト天体の多様性も、
“ジャイアントインパクト”の結果という統一的な説明が出来るようになりました。
今回の研究結果から、
地球に火星サイズの天体テイアが衝突して月が誕生した事と同様のことが、
冥王星とカロンでも起こった可能性が見えてきました。
初期の太陽系では、このような衝突が頻繁にあったのかもしれません。
地球形成領域から太陽系外縁部にわたる広い範囲で、
原始惑星同士が頻繁に衝突・合体するという大変動を経て、
現在の太陽系の姿になった…
っと考えると、
今回の研究により太陽系の成り立ちに少し近づけた気がしますね。
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月を作ったのは“巨大衝突”ではない。 のかも…
火星の衛星は巨大天体が衝突して作られた のかも…
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