宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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彗星探査機“ロゼッタ”は冬眠から目覚めたのか?

2014年01月21日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関が2014年に予定している、世界初の彗星への着陸機投下ミッション。
これに向けて彗星探査機“ロゼッタ”が、31か月の冬眠を終え、いよいよ目覚めることになるんですねー

“ロゼッタ”は、2004年3月2日にアリアン5ロケットで打ち上げられた、ヨーロッパ宇宙機関の彗星探査機で、主にチュリモフ・グラシメンコ彗星の探査を目的としています。

打ち上げ1年後には最初の地球スウィング・バイを実施し、地球の万有引力を利用し軌道の方向を、そして地球の公転運動を利用してスピードを上げています。

さらに2007年2月に火星でのスウィング・バイを実施、同じ年の11月には再び地球をスウィング・バイし、2008年9月には小惑星“シュテインス”のフライバイ撮影。

続いて2009年11月に最後の地球スウィング・バイを実施し、
さらにスピードを上げた“ロゼッタ”は、2010年7月には小惑星“ルテティア”の観測へ向かいます。

観測の後“ロゼッタ”は、搭載機器を温存するため、ほとんどの電源を落として冬眠モードで飛行を続けていたんですねー

そして日本時間の1月20日19時、“ロゼッタ”内のコンピュータが休止状態から目覚め、6時間かけて再起動とシステムの動作試験が行われ、全て問題が無いことが確認された後に「全システム正常」の信号が45分かけて地球に到達することになります。

この後“ロゼッタ”は、8月に“67P/チュリモフ・グラシメンコ彗星”に接近し、探査機本体が彗星を周回して着陸地点を決定し、
同年11月には、冷蔵庫サイズの着陸機“フィラエ”を彗星表面に着陸させる予定です。

約100キロの着陸機“フィラエ”には、カメラを始め10の観測機器が搭載されていて、彗星表面で調査を行います。
このミッションが成功すれば、世界初の彗星への着陸機投下となるんですねー

その後も彗星の周りを飛び、徐々に太陽に近づいて行く彗星の変化をとらえ続ける予定で、ミッションは2015年12月まで計画されています。

惑星誕生をコントロールする主要な何か

2014年01月20日 | 宇宙 space
南米チリにあるアルマ望遠鏡の観測から、主星からはるか遠く離れた場所で、惑星が誕生しつつあることが分かってきたんですねー

観測したのは、おおかみ座の方向にある“HD 142527”と呼ばれる若い星で、惑星の材料となる固体微粒子が、星の周囲で非対称なリング状に分布している様子が確認されました。

固体微粒子が最も濃く集まった領域の密度を測定した結果、この場所で惑星が誕生しつつある可能性が高いことが分かりました。

主星からこの高密度領域まで、太陽から海王星までのおよそ5倍もの距離があり、
これほど遠方で、惑星が形成しつつある証拠が見つかったのは初めてのことなんですねー

“HD 142527”を取り巻くガスと固体微粒子の円盤。
アルマ望遠鏡が観測した固体微粒子の分布が赤色、ガスの分布を緑色、すばる望遠鏡が近赤外線で観測した円盤を青色で表示している。
固体微粒子が北側(画面上)に多く集まっている様子がよく分かる。円盤内の円で示した部分で特に固体微粒子が集積していて、ここで惑星が作られていると考えられる。


アルマ望遠鏡による“HD 142527”の観測画像。色付けは上の画像と同じ。







すばる望遠鏡を使って“HD 142527”を観測したところ、とり囲む円盤には星の近くと外側をへだてる溝が存在することや、外側の円盤が奇妙な形をしていることも分かってきました。

そしてアルマ望遠鏡による観測で、固体微粒子から放射されるサブミリ波の分布を確認すると、明るい北側と暗い南側とでは30倍もの違いがあったんですねー

サブミリ波で最も明るい領域は主星から遠い場所にあり、その距離が太陽から海王星までの5倍の距離だったというわけです。

主星からこれほど離れた場所で、こんなにも明るく光る円盤は発見されたことがなく、
明るいということは、「サブミリ波を出す大量の物質がそこに集まっている」ということを意味し、
十分な量の物質が寄り集まっていれば、そこで惑星や彗星など、新たな天体が誕生する可能性が出てくるんですねー

そこで、実際にどれほどの量の物質が存在するのかが調べられることに…
すると、ふたつの可能性が見えてきました。

ひとつは、固体微粒子が自分自身の重力で急激に周りの物質をかき集めて、
木星の数倍もある巨大なガス惑星を作れるほど非常に重い可能性。
そしてふたつ目が、固体微粒子が局所的に局所的に濃集し、岩石惑星や彗星などの小天体か、ガス惑星の中心核の形成が促進されている可能性です。
どちらの場合でも、新しい惑星の形成が進行していると考えられています。

今後も、アルマ望遠鏡での詳細な観測を続け、ガスの量の測定などを行う予定だそうです。

現状での非常に限られた知識では、“HD 142527”は特異な天体と言えるのですが、
アルマ望遠鏡が稼動してすぐに、この天体以外にも強い非対称性を示す円盤が見つかり始めているんですねー

アルマ望遠鏡で、多数の原始惑星系円盤を観測することにより全体像が見えてくれば、惑星誕生をコントロールする主要な物理過程が何であるかが分かってくるのかもしれませんね。

なぜ星団内には惑星が少ないのか?

2014年01月19日 | 宇宙 space
南米チリにあるラシーヤ天文台の観測から、かに座方向の散開星団“M67”に含まれる3つの恒星に系外惑星が発見されました。

星団の中で系外惑星が見つかるのはとても珍しいことで、
そのうち1つは、太陽のふたごともいえるほどそっくりの星の周囲を回っているんですねー





太陽そっくりの恒星に惑星が発見されたのは、星団の中では初めてになる。



太陽以外の恒星を回る系外惑星は、
すでに1000個以上見つかっていて、もう珍しい存在ではありません。

そして、その太陽にあたる恒星には、さまざまな年齢や組成のものがありバラエティに富んでいるのですが、そのうち星の集団である星団の中に見つかっているものは、ほんのひと握りしかありません。

ほとんどの恒星が星団として生まれることを考えると、これは不思議なことになり、
ひょっとすると星団内での惑星の形成には、特別な何かがあるのかもしれないんですねー

この謎を解明するために、かに座方向約2500光年彼方の散開星団“M67”が調べられています。

ラシーヤ天文台の口径3.6メートル望遠鏡に搭載した系外惑星探査用装置“HAPRS”を用いて、“M67”におよそ500個ある恒星のうち88個を選んで6年間観測が行われました。

観測された星々は、通常系外惑星の探査対象となる恒星としては暗いものでしたが、“HARPS”の性能を最大限に発揮して、惑星の重力による恒星のわずかな「ふらつき」を検出する方法で、3つの恒星に惑星が発見されました。

これは恒星の数に対する、惑星の数から言えば、星団以外と同等の発見率になります。
星団の中の惑星は、これまでの観測で引っかからなかったたけで、実はありふれたものかもしれないんですねー

惑星が発見された3つの恒星のうち1つ“YPB 1194”は、温度や質量、化学組成まで太陽とほぼ同じで、ふたごといえるほどそっくりなものでした。
「太陽に似た」といってもいろいろありますが、ここまで似ている天体はなかなか無いそうです。
そして、星団内にある「太陽のふたご」レベルの恒星に、惑星が見つかったのは、これが初めてのことになります。

“YPB 1194”に発見された惑星は、木星の3分の1程度の質量を持っているのですが、
残念ながら、公転周期は約7日と短く、液体の水が存在できるハビタブルゾーンからは外れているそうです。

若い原始惑星系円盤に、なぜ“ケプラー回転”が?

2014年01月18日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による観測で、生まれたての恒星の周りに、太陽系の天体と同じ法則で回転する大規模な原始惑星系円盤が見つかりました。

この星はこれまでの理論では、円盤を持つと考えられていなかった若い段階のもので、惑星が生まれる場所である原始惑星系円盤の成り立ちを解明する大きな足がかりになるようです。

“VLA1623A”とその周囲の原始惑星系円盤(イメージ図)
円盤は海王星軌道の約5倍のところまで広がっているが、
成長途上の“VLA1623A”は太陽の20%の質量しかないので、
成長中の非常に若い段階にあることが分かる。
原始星の両極方向にガスジェットが噴き出している。

へびつかい座方向にある生まれたての恒星(原始星)“VLA1623A”を、アルマ望遠鏡で詳しく調べ以下のことが分かってきました。

それは“VLA1623A”が、まだ成長中のひじょうに若い段階であることと、
“VLA1623A”の周囲には、ガスとチリ(固体微粒子)でできた巨大な原子惑星系円盤があり、この円盤が太陽系の天体と同じ法則に基づいた“ケプラー回転”をしていることでした。

原始惑星系円盤とは、原始星を取り巻くガスや固体微粒子の円盤のことで、こうした円盤の中から惑星が生まれると考えられています。

地球を含む太陽系の天体が、太陽に近い「内側ほど早く」「外側ほど遅く」公転する“ケプラー回転”を見せるのは、これら太陽系天体のふるさとである太陽周囲の円盤の、回転運動の名残りと考えられています。
これまでの研究では、“VLA1623A”ほど若い段階の星の周りに、“ケプラー回転”をする円盤が作られるとは考えられていませんでした。

でも今回の発見で、これまでの理論では十分に考慮されていなかった「何か」が、円盤の形成に重要なはたらきをしている可能性が浮かび上がったんですねー

最新の理論研究では、原始星の母体となったガスの集合体を貫く磁力線の方向と、原始星の自転軸がずれている場合や、
ガスの集合体の内部で、激しい乱流が生じている場合が、可能性として指摘されています。

今回の観測結果をもとにした検証が行われ、原始惑星系円盤の成り立ちが明らかになっていくことが期待されますね。