「この映画はどうしても観て!」という熱烈なオススメを頂き、キノシネマみなとみらいでビクトル・エリセ監督『ミツバチのささやき』(1973)を拝見しました。
まだ前年に終結したスペイン内戦の傷跡が残る1940年。
荒涼としたスペイン郊外の小さな村を舞台に、6歳の少女アナの空想混じりの不穏な日常が描かれます。
セリフは極端に少なく、美しく静かな映像でひんやりとした怖さや哀しさを感じる叙情詩的な作品でした。
この作品の一つの肝になっているのが、村にやってきた『フランケンシュタイン』(1931)の巡回上映。
この白黒のサイレント映画に見入ったアナは、姉のイザベルから「フランケンシュタインの魂は村はずれで生きている」と聞いて信じ込み、脱走兵とのエピソードにつながっていきます。
もう一つは、アナのお父さんが家族を養うために育てているミツバチ。
ー女王蜂以外の働きバチたちは、ただひたすらに働いて死んでいく。働いて死ぬだけのために育っていくー
ミツバチの映像や詩がとても象徴的に挿入されていて、ミツバチの巣をイメージしたアナ姉妹の部屋の大きな窓とともに、作品に大きなインパクトを与えていました。
少女アナの愛らしさは抜群でした。
ほとんど笑わないのですが、その大きな澄んだ目に現実と非現実を映し出して、そこに生きていました。
唯一微笑むシーンが…とても印象的でした。