「絵」には興味がある。版画にはあまり興味はない。
だが、棟方志功さんの版画には何故か気になるような片思い的な感情がある。
なぜだろう・・・
如来・観音から羅漢像、十大弟子など、仏の世界が多いからだろうか。
それとも・・・
あれは大学3年か4年(昭和44・5年)の夏休みのことだ。
夏休みはいつも帰省して家業のふとん屋を手伝うことが、私の学生時代であった。
何の理由かは忘れたが、その夏は帰省が遅れ、はじめて本物の「弘前ねぷた」を見学した。
一番の弘前の繁華街である土手町で、「扇ねぷた」を見ていた。
ふと、何気なく人がざわついているような気配がしその方向を見ると、そこには棟方志功さんが居た。一般の見学者と同じように、歩道に「むしろ(?)」を敷いて、見ていたように思う。扇ねぷたの一枚が、棟方さんの手によって書かれ、それが登場するということであったが、その扇ねぷたは印象に残っていない。
そんな夏休みは、棟方さんが文化勲章を受賞された前後の頃だろう。
そして前後して(時期はいつか?はハッキリしないが)地元百貨店で「棟方志功 版画展示即売会」が行われていた。
作品を一点買いたかった。一番安いものでも良かった。・・・買えなかった。
通帳には600円程度。帰省の旅費を除けば、ポケットには同じく数百円程度しかなかった貧乏学生にとっては、手も足も出なかった。
もう40年近く前の話だが、未だにあの時買っておけたらと思うことがある。・・・