普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

JAL再建に京セラの稲盛さん

2010-01-14 15:38:00 | 企業経営

 最近の最大のトピックは小沢氏団体・石川氏事務所・鹿島など一斉捜索ですが、私は貧乏人の癖に金のことは全く苦手(だからいつまでも貧乏生活かに抜け出せない)ですのでここでは、JAL再建のためにCEOを引き受けた元京セラの稲盛さんとJALのことに就いて書いて見たいと思います。

稲盛氏、日航会長就任へ 「無給で働かせてもらう」
 京セラの稲盛和夫名誉会長が13日、日本航空の代表取締役会長に就任することが決まった。官民の再生ファンド「企業再生支援機構」が主導して策定する日航の再建計画の実行役を担う。19日に予定される機構の支援決定と同時に正式発表する。
 稲盛氏は鳩山首相からの要請後、記者団に対し「社員の方を救うために努力したい。国のシンボルである日航というより、社員の幸せのために」と述べた。そのうえで「私も年なので、週に3、4日の勤務でやらせて頂くことになる。無給で働かせてもらう」と述べた。
 鳩山首相は記者団に対し「経営の手腕、社員に愛される企業を育ててきたというこの手腕を高く買っており、日航にもそのことを期待している」と述べた。
 稲盛氏は京セラやKDDIを創業し、コピー機の三田工業を再生させた経験もあり、経営手腕を買われた。ただ、高齢のうえ、自ら「運輸業界は素人」と語り、不安も残る。

 この記事の他にも、稲盛さんは、ボランティアで、全60(海外7)、5,500人余の若い経営者が集まる経営塾「盛和塾」の塾長として経営者の育成に努めているそうです。
 然し、稲森さんが就任する日航は、設立当時は政府主導による半官半民の独占の航空会社として設立されて以来の親方日の丸的な経営体質、一方の組合は、一番印象に残っているのは、イランのホメイニ革命で、イランに駐在していた私の後任の人とその部下達が引上げのとき、日航の組合が「安全の保障がないとして」チャーター機の派遣を拒否したことです。それで私の仲間は止むく他国の飛行機でギリシャまで飛び、そこで日航に乗り換えたという日本人として恥ずかしい思いでがあります。このチャーター機の派遣許否はイラン・イラク戦争でもあり、他国からの非難もあり政府の専用機ができた一つの理由となっているそうです。
 それで象徴されるように、一般企業でははるか昔のこととなった、乗客の不便を省みないストライキの頻発、日本航空が経営再建を進めている中で、『安全のために十分に休息を取る必要性』を理由として、 (役員でも行われていない)業務移動時のグリーン車やファーストクラスの使用や通常出勤時のハイヤーの使用を要求するなどやりたい放題の労組がまだ存在しています。
参照:親方日の丸の日航の再建 

・稲森さん流の各グループに経営責任を持たせ、各人に原価意識を持たせる「アメーバ方式」が何処まで、旧態依然の日航の親方日の丸経営にどこまで浸透するか?
・稲森さんの言う「社員の幸せのために」の発言が社員の発奮材料になるのか、逆に1万数千人のリストラが言われているとき、労組がその発言を取り上げて抵抗するか否か?
はJALの従業員の考え方と、稲森さんの手腕に掛かっていると思います。
 私は個人的には彼が具体的にどんな方法でJALを再生させるのか物凄く興味があります。
 何故なら日航の再生は非常に難しい仕事であり、もしそれが成功すれば、文字通りの親方日の丸の官庁の合理化の大きな参考になると思うからです。
 稲森さんの奮闘を祈っております。

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追記:天下りの人達にボランティア精神で働いて貰っては
 それにしても、稲森さんの「私も年なので、週に3、4日の勤務でやらせて頂くことになる。無給で働かせてもらう」の発言は泣かせますね。
 今、官僚の天下りが問題になっていますが、その何人かでも国の財政が厳しいから、そして政府の高級幹部まで登り詰めた間の貯金と年金でなんとか生活できるから、60歳の定年以後は全くの無給とは行かずとも、小遣い銭程度の給料でも良いと言っていたら(勿論天下り団体での退職金はなし) 、天下りの問題が一気になくなるのと思います。
 民主党の考えるように60歳定年で、元の役所内で心にもない半端な仕事をする(何時までも年寄りに重要な仕事をさせていたら若手の人が伸びないから)より、天下りして分相応の仕事で張り切って仕事をして貰った方が、遥かに(金のことを除けば)本人のためにも、国のためにもなると思うのですが。
 逆に金銭面でぐずぐす言う人は天下りさせず官庁内で60歳になるまで、雑務をさせ後定年退職させれば良いと思うのですが。
 私も幸い、定年後80歳迄ボランティア団体で勤めることが出来ましたが、同団体で似た条件で皆やり甲斐を持ちながら働いていた人を見た経験から言っても、小遣い銭程度の給料でも生き甲斐を持って働きたい官僚の人も多いと思います。


公設派遣村と社会正義

2010-01-07 11:17:49 | 企業経営

最初に、昨日の「これからの日本経済の行方は?」の中でまた何時もの「書き漏らし」がありましたので、下記のように追記します。
 なお本文も修正しておりますのでご了承下さい

 国土が狭く人的資源しかない日本はトッテンさんの言うように「従業員(つまり国民)を大切にする日本株式会社化」 するか、高福祉・高負担の北欧型国家化のいずれか、またはその中間を目指す]他生きる道はないような気がします。
[ ]内追記)

 昨日と一昨日の都の公設派遣村閉鎖に伴う利用者800人がカプセルホテルへ転居のテレビ放送を見ていて首を捻りました。
 産経新聞
によりますと、年末年始に住居がない失業者らに宿泊場所と食事を提供するため、東京都が設置した「公設派遣村」が4日終了、利用者のうち4日以降も自力で住居を決められない約800人について、今後2週間程度、都内のカプセルホテルや都施設などを臨時に確保し、食事も提供する。当初は、延長宿泊先として400人分だけ都内のカプセルホテルを用意、それ以外の利用者には大田区内の都施設などを充てる方針だったが、一部の利用者から処遇の差に不満が続出。このため、都は新たにカプセルホテル10カ所を確保し、希望者全員をホテルに宿泊させることになった。そうです。

[企業団体は公設派遣村とは無関係?]
 公設派遣村設置には補助金を出した国、就職相談や村民の世話をした東京都の職員、それと村民が関わっています。
 村民に対しては同じ産経で“ごね得”許した「派遣村の品格」 費用は6千万円大幅超の見込み
の批判もありますが、派遣村村民である企業から解雇されたために失職のためにホームレスになった人達を産み出した企業の派遣村に関する報道は全くないのは何故でしょう?(都の職員の人達は何で自分たちがこんなに苦労しなければならぬのかとうんざりしているに違いありません。)
 普通の庶民感覚で言えば、企業は自分たちの会社の存続を護るために800人以上のレイオフをしたのだから、企業やその上部団体の経団連は国や都に対する道義的責任を感じて、いくらかの寄付の話があっても、企業の人事担当者が都の応援に駆けつけても当然と思うのですが? (もしこのことが報道されていなかったのならごめんなさい。)
 経済の専門家のコメントによれば、「いざなぎ景気超え」と言われる長い間企業は膨大な内部留保を溜め込んでいるそうですが、果たして幾らの企業や経営者からの派遣村への寄付金が集まったのでしょう。
 ごね得をした一部の村民(報道が正しいとして)も村民なら、それを産み出した企業経営者の倫理観はどうなっているのでしょう。

[米国と日本の考え方の違い]
 日本がお手本として来た米国でも失業率が10%近くに達していますが、それでも大きな問題にならないのは、
・米国建国以来の個人の責任、自由主義経済などの考えが確立していること、
・もし落伍者が出てもキリスト教の考え方で施しものをするのは当然と言う考え方で、マイクロソフト社を立ち上げたビル・ゲイツさんが世界最大の慈善基金団体であるビル&メリンダ・ゲイツ財団 
を創設したようにボランティア団体の大規模な失業者に対する支援があるためだと思います。
 詰まり米国では自由主義経済の考えで自由競争し、企業内でも個人の責任の考えに基づく成果主義で優秀なものは高級を取る一方、企業で不要になった人はお払い箱、それで困っている人は善意の人や団体が助けるというシステムがなり立っており、格差社会の発生と当然だと思われているようです。
 一方、一昔の日本の企業では、年功序列制度が示すように、組織重視、個人の責任はその組織に対する責任の考え方、そのために企業は個人に対しても責任を持っていました(その代表的な例は今でも従業員を大切に扱っている出光グループがそうです。) し、企業活動を通じての社会貢献するものとされていました。
 そしてもう一つの米国との大きな違いは宗教団体やその考え方を持った団体の失業者に対する支援活動が米国ほど盛んでないことです。
  然し、最近の日本の企業は(昨日も書いたように)経済のグローバル化で厳しくなった企業の経営→企業競争力の強化→そのためには給料が少なくて済む非正規社員を採用→景気が悪くなれば解雇または契約解除→解雇された人達の世話は一部のボランティア団体の活動を除いて、基本的には国や地方自治体が世話をする→その費用は国民の税金負担となっています。
 その一方で企業は景気回復までは解雇した人やそのためにホームレスになった人達を、眺めていればよいというのでしょうか。
 これでは企業に取って余りにも旨すぎる話しと思うのですが。
  このようなシステムでは一般企業が放漫経営になって、米国の経済の悪化の傾向にも関わらず、 (銀行などはそれを予測してその被害を最小限に留めたのに)生産を拡大し、バブル崩壊で大量解雇する羽目になったり、また企業存続のために従業員を解雇しても当然という(地域のための企業活動と言う)企業倫理の低下に繋がることになると思うのですが。

[非正規社員への雇用保険料の企業負担の増額]
 私は鳩山政権が、製造業への派遣社員の採用を禁止して、唯でさえ悪い景気を更に悪化させるよりも、派遣社員の採用は今まで通りにする代わり、解雇される確率の高い非正規社員向けの雇用保険料の企業負担分をもっと増やし、その保険で国や地方自治体の失業者やホームレスの世話する費用に当てることが出来るようにすべきだと思うのですが。
  企業経営者が非正規社員の採用にも(失業者の世話を含む)ある程度の費用負担の増加のリスクもあることを知る方が、企業の健全運営に繋がり、また企業倫理の低下を防ぐ効果もあり、国の財政負担軽減になると思います。

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親方日の丸の日航の再建

2009-10-30 14:14:00 | 企業経営

 前から度々問題になっていた、日航再建支援について読売と朝日が社説を出していますが、その内読売の社説を引用して問題点を考えて見たいと思います。
今度こそ甘えは許されない日航
(読売社説より)
 
経営難に陥っている日本航空が29日、「企業再生支援機構」に支援を要請した。
 この事態を受け、政府は国土交通省を中心とした対策本部を設け、公的資金の投入などで再建を全面支援する。
 日本の航空輸送の6割を担う日航が経営破綻すれば、国民生活や経済活動にも大きな影響が出る。公的資金を含めた国の支援はやむを得ないだろう。
 だが、日航はこれまで何回も国の支援を受けながら、親方日の丸的な甘い体質から脱却できなかった。二度とこうした事態を招かないよう、抜本的な経営改革に取り組まなければならない。
 国交省の特命チームは、7000億円を超す金融支援と、抜本的なリストラを進めることで、再建は可能と判断している。
 このため日航は今後、9000人の人員削減や、内外45路線の廃止・減便、ホテルを運営する子会社の売却などを進める方針だ。
 3300億円の積み立て不足がある企業年金の削減も、再建に向けた大きな課題となる。
 日航に公的資金が投入されれば、その一部は年金支給の原資にも回る。これでは、国民はとても納得しないだろう。政府は強制的に年金を削減する措置も検討しているが、それを待たず、労働組合やOBは削減に応じるべきだ。
 日航には、八つの労組がある。複雑な労使関係が経営改革の足かせ になっているのは明らかだ。この際、労組の整理・統合に踏み切る必要がある。現経営陣の刷新も避けられまい。

[私の意見]
・民主党の大企業支援への政策転換?

 民主党は野党時代には大手企業やメインバンク中心の支援策に反対して来ました。
 その現れが中小企業対策を中心とする経済政策です。
 (
「民主党政策集INDEX2009」の経済産業の項目19の内10項目は中小企業対策です。 ) 
 この点を自民党やマスコミから突かれ、慌てて子ども手当て、暫定税率の廃止、高速道路無料化、高校の無料化、農村の戸別保障などが経済政策だと主張を変えています。
 然しそれはそれとして、読売や朝日が言うように鳩山政権の国民の生活に大きな影響を与える大企業の日航の再建対策は、例え自民党政権の真似であっても避けられないと思いますし、前原さんの決断は正しいといと思います。

・GMとよく似た日航の問題
 この種の報道を見ていて直ぐに連想するのは米国のGMの再建問題です。
 GMの破綻の原因をネットで調べると、大企業の傲慢、自己改革による競争力の強化ではなく政治力依存、強力な労働組合の存在、頻繁なストライキ、他企業に比べて圧倒的に高い賃金、手厚い年金制度などの言葉が並びます。
 企業の低い改革意欲や高コスト体質など、GMの抱えている問題点の殆どそのまま日航   
に当てはまるようです。 (その他にGMには莫大な退職者への医療費の支払い、レイオフされた人にも同一賃金などが経営圧迫の原因となったようです。)
 一方航空会社全体の経営状態が悪いかと言えば、北九州市に本社を置くスターフライヤーは、日航、全日空とその子会社との競争の中で、昨年からの景気低迷で旅客需要の落ち込み、新型インフルエンザの影響する一方で、原油価格の高騰が一段落して燃料費が下がったことや、従業員削減などのコストカットで最終利益を確保した。22年3月期は売上高170億円、最終利益1億8千万円を見込んでいる。 (産経新聞
)そうです。
 どうして遥かに大きく競争力の強い日航が赤字が続くのでしょうか?

・日本の製造業と労働組合の歴史 
 戦後の日本では共産党系から民主社会党系までの労働組合が設立されて労働者の権利を主張して、何度もストライキをして来ました。
 当然それを抱える企業もその影響を受けその対策に頭を悩ましてきました。
 私が共産党系の労働組合を抱える会社の管理者から直接聞いたのですが、従業員に残業を指示するときにも組合の承認を得なければなら無かったそうです。(社保庁の自治労の話しと良く似ていますね。)
 結局は私が予想していたように、その企業は遂には他社と吸収合併されて消えて仕舞いました。
 業界全体としても、企業間の競争の中で、労働組合の強い企業の競争力が落ちる傾向が強くなり、企業は労働組合対策に力を入れてきまし、組合員も企業が潰れたら元もこもないと気付き、労働者の権利の主張は程々にして、企業と協力するようになりました。  
 企業は製造業を中心に、企業への忠誠心に基づく更に自主管理活動を進めて、世界で有数な生産性の高い企業となりました。 (最近では非正規社員の増加や成果主義の経営でこの傾向も薄れている企業もあるようですが。)
 国営企業の国鉄も民営化でJRと変わり、かってのスト連発の鉄道とは様変わりしています。
 左翼の人達はこれらの組合を「御用組合」と言っていますが、その実態はどうであれ、今の製造業やJRなどが今日まで頑張っているのはその「御用組合」のお蔭です。 

・親方日の丸の日航経営者と労働組合
 最近の日本でストライキと言えば日航と全日空と決まっています。
 その原因は今まで書いたことで明らかで今更書くまでもないと思いますが、簡単に纏めてみました。
  日航は日本唯一の国策航空会社として設立、さらに全日空が出来ましたが、二社の寡占状態が続いています。
 それで何となくお互いに棲み分けができ、合理化の企業努力がおろそかになっていたと思います。
 そしてその足を引っ張るのは自分たちの権利ばかり主張する労働組合です。
 日航や全日空の組合は合理化や業務の改善などは、その労働条件を悪くするものだと考えています。 (社保庁の自治労がそれです。)
 そしてそれで何となく妥協してきたのが国策会社の親方日の丸気分の抜けない日航の経営者です。 (社保庁の幹部もそうでした。)
 そして普通の民間企業なら当然やっていた合理化を遅らせ、国の介入を招き9,000人の削減と言う、大きな出血を強いられるのだと思います。
 日航は経営者、従業員、労働組合ともまず自分たちの親方日の丸意識を捨て、日航は全日空だけでなく、世界の航空会社との厳しい競争を強いられている現実を見据え、その為に何をすべきか考えるべきだと思います

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日本型経営で48期連続増収増益の企業

2009-07-24 16:06:26 | 企業経営

 昨夜のテレビ東京の ワールドビジネスサテライトのシリーズ企画の「オンリーワン社員を狙え」に関連して日本総合研究所副理事長の高橋進さんが、終身雇用、年功序例制の日本型経営で48期連続増収増益業績を伸ばしている伊那食品工業のことを紹介して居ましたので、ネット上に調べてみました。
 Wikipediaで見ますと、所在地:長野県、事業内容:寒天、ゲル化剤などの製造、販売、国内のマーケットシェア:約8割、代表者:井上 修、資本金: 9,680万円:従業員数 399名と言う中堅会社です。
 その経営の特徴はキーワードで言えば、終身雇用、年功序列、年輪経営(長期的視野に立った低成長を目指す経営)、高い利益率、高い商品開発力、地域貢献です。

 その会社を発展させてきた事実上の創業者である会長の塚越 寛さんの考え方を下記の資料から拾って見ました。
・企業再建の考え方
 普通は、経営状態の悪い企業を再建には、人を削減、機器を導入して合理化を図るが、もともと最低人員の12人しかいない、機器を導入する資金もない。結局、残っているのは「人」だけだった。社員みんながやる気がおきる企業にするしかない。
 「やる気がおきる会社」にするには、「自分の家と同じように思える会社」をつくることだ。
 (そのために取ったのが、終身雇用、年功序列、家族的経営、経営情報の共有、従業員の家庭までの細かい配慮です。)
・経営に対する基本的な考え
 会社は経営者や株主のために存在するのではなく、従業員全員のもので、会社は社員の苦労に報いるために発展し、利益を上げる必要がある、会社の発展を通じて、社員がみな幸せになり、社員の幸せを通じて社会に貢献するべきだ。
・企業の成長の考え方
  社員の幸せのためには、企業が永続すること、目先の利益だけを考え、(リスクを冒して)短期的に高い売上高を追い求めて高収益を上げても、長続きしなければいい会社とは言えない。永続するためにゆるやかな成長は不可欠だが、最低必要な成長でいい。
・企業戦略
 (経営安定のための)寒天という相場商品からの脱却→原料を海外に求める、それを備蓄して安定供給、相場があがるときは放出するなど相場の変動に対応
 新商品を開発してパイを拡げる。新しく用途開発したところは、同業他社が追いつくまでは全部うちのシェアだから収益性も高い。中小企業の生きる道は、開発型企業になることだと、従業員の1割以上を開発要員にあてている。
・開発の要点
 寒天の基本物性にとらわれずに、そこからどれだけ逸脱できるかを常に視野に入れる。たとえば寒天は固まる力があるという常識を打ち破って、固まらない特性を持ったもの開発する、現在化粧品のファンデーションや口紅などに使われている。今後は医薬品の分野も有望だ。
 異業種と研究開発面で提携、共同研究することで視野が広がるし、自分たちだけでは考えもつかなかったニーズがわかる。基礎研究の分野はとかくお金がかかって成果が出にくいが、将来の種まきとしては非常に重要だ。
・他企業との比較
 設立以来、連続増収を続けてきたが、それは無理をせず、ゆるやかに成長してきたからだ。急成長しようとすると、どうしても無理な投資をして、それを回収するために、大量に人を採用して、必死になって売上高を伸ばそうとする。けれど、業績が悪くなると一転、リストラをして人件費を削ろうとする経営者が多い。
 私は社員の人件費ははたして「人件費」という「コスト」なのか疑問に思ってきた。人件費は、幸せを求めて働く社員たちへの労働の対価であって、削減すべきコストではないはずだ。利益も成長も、会社の目的ではなく社員の幸福を実現するための手段にすぎない。

・業績がいいのに何故東京に出ないのか?
 当社は、地域に根を下ろした企業活動をこれまで続けてきたし、これからもそうありたいと思っている。地元にかわいがってもらって育ってきたのだから、地元に税金を納め、雇用をつくりだすことも企業の務めだと思っている。みんなが東京に出ていけば、いっそう都市の過密化が進行し、片方、地方ではますます過疎化が進んでいく。過密と過疎が共存する国なんて恥ずかしい話だ。
・「公」を意識すること
 会社には「仕入れ先を大切にする」「町づくりをしっかりやる」といった決めごとが10カ条あるが、その精神は、公を意識しながら会社を運営していくことの大切さだ。公を意識することは、すなわち自分自身の行動を客観的に眺めることにつながる。経営者や上司が公の意識を持ち、大きな視点で行動していれば、おのずと社員たちとのつきあい方にも節度が出てくる。

・会社の若い人について
 (会社に必要なのは)
和やかな人間関係の中で、自由にのびのびと自主的に働ける職場環境だ。私は社員に売上げなどの目標設定は一切しない。叱るときは従業員の怠惰なときだけだ。そのかわり、礼儀作法には口うるさい。例えばスーパーなどへ駐車するときは、決して入り口の近くに駐車するな、できるだけ遠くにおけ、といつも言っている。入り口の近くに駐車してしまうと、体の弱い人やお年寄りなどが入り口から遠くに車を止めなければならないからだ。クルマで通勤する社員には、本社の施設に入るときに右折するなとも言っている。朝の通勤時間の渋滞というのは、右折車があることが大きな原因だから、遠回りになっても左折して会社にたどり着けと言っている。

[私の感想]
 私は何度か「優良企業」のことを書いて来ましたがそれには下記の様な共通点があるようです。
経営者が自分なりの哲学を持っていてブレないこと
長期的な視野を持ちその企業の規模、業種に適応した経営をしていること
従業員大切にしその能力を最大限は発揮させていること
経営者、従業員が相互に信頼していること
他社に真似できない企業を支える技術を持ちそれに投資していること
企業活動を通じての社会貢献という理念を持っていること
 今回の金融危機で、大量のリストラをした企業の中には、単に企業を大きくすることで、総合的なコスト削減、規模による競争力の強化など安易な教科書通りの経営をしていた会社もあるかも知れませんが、伊那食品工業のやり方は一つの参考になり、今後とも厳しい経済環境が続く日本で生き抜くためには、同社の行き方が大きなヒントになるような気もします。、

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参照資料:
 トヨタも驚愕!伊那食品工業「48期連続増収増益」の秘密 | 社長の仕事術
 
伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越寛氏 - インタビュー
 
社員の幸せを露骨に追求する会社:日経ビジネスオンライン
 伊那食品工業 - Wikipedia 
 
伊那食品工業(株) - マイナビ2010


日本経済のこれから(2)

2009-07-21 17:07:24 | 企業経営

 昨夜、NHKで[NHKスペシャル マネー資本主義 最終回「危機を繰り返さないために」]がありました。
 その番組の趣旨は案内によると、NHKで世界的な金融不安が実態経済に深刻なダメージを残している一方で、景気の落ち込みも底を打ったとの声が出始めている。再び、バブルの誘惑に飲み込まれていくのか、それともあらたな経済システムをつくりだしていけるのか、今、私たちは岐路に立っているといえる。最終回ではこれまでのシリーズを振り返りながら、世界の賢人たちから寄せられたメッセージをもとに、これからの経済のあり方について探っていく。だそうです。
 その内容は
・米国の不況→低金利政策→これで得た資金と金融工学を利用した金融資本のギャンブル的経営→バブルの傾向増大→これを放置した自由主義経済を信奉するIMFのグリーンスパンさん→バブル崩壊・未曽有の金融危機の発生
・元西ドイツ首相のヘルムート・シュミットさんの行き過ぎた自由主義経済批判
・ノーベル経済学者でコロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツさんを中心とする国連での世界の共通通貨制定動きと米国の反対
 中国の清華大学国情研究センター主任胡 鞍鋼さんの「事実上の世界通貨を管理するIMFのトップは全て米国の有力政治家や財界の出身が占めており米国の意のままになる世界通貨はおかしい」として国連の動き支持

・一方、日本でも銀行本来の業務に戻ろうと、鹿児島銀行の地域の産業振興への協力の動き
・企業は株主のものでない、企業活動を通じて社会に貢献すべきと言う、日本的経営を主張する原丈人さん(NHKの案内より推定、間違っていたら御免なさい)率いるベンチャー企業の世界的展開の状況

・3人の識者の総括
 自ら金融機関をもつ米国の金融工学の専門家:自由主義経済が破綻したからと言って、政府が銀行の支援をするなど社会主義を持ち込むことは事態の解決を遅らせるだけだ。自由主義経済で格差が生れるのは当然だ
 東京大学名誉教授で数理経済学の権威の宇沢弘文さん:金融工学には人の心が入っていない、全て確率をもとに数学的に処理したもので、結果としては曖昧なものになっている
 米国コロンビア大学教授:自由主義経済の中に人の良心がなければこの体制は崩壊してしまう

・出席者のゲストが考えるこれからの資本主義とはの質問に対して
  経済小説の作家の江上剛さん:(国や社会や人との)絆の資本主義
  FXのトレードで失敗した経験を持つ漫画家の西原理恵子さん:ものづくりの資本主義
   机で座って金を扱っている人達でなく実際に社会のために働いている人達にそれなりの報いがあるべき、
  コピーライターの糸井重里さん:あたたかみの資本主義 
(人間的に温かみをもたらす資本主義)

[私の意見]
 NHKは台湾問題の報道でケチを付けましたが、この番組も明らかにNHKの意図を感じます。
 しかしこの番組は前者のように政治的な問題でないので、その意図も抵抗なくく納得出来ますし、私の持論の日本型市場中心主義、米国一辺倒の経済の見直し、適度のブレーキのかかった市場中心主義経済、企業活動による社会貢献などの線に沿ったNHKの主張に同意できます。
 また自由主義経済の主張者のような資本主義の世界では格差社会の発生は当然と言う考え方は日本人の心情に合いません。

 但し問題はそう簡単でなく下記のような問題が発生仕掛かっているし、また今後予想されます。
・中国、インドなどの台頭→日本企業の競争力の低下→低賃金で何時でも採用、リストラが出来る非正規社員の増加→日本平均賃金の低下と格差の発生
・国内の需要の飽和化、少子高齢化の進行、環境意識の浸透などで、内需拡大による財政収入が期待出来ず、やはり輸出に頼る他ないが、上記のような企業競争力増強とそれに伴う社会問題をどう折り合いをつけるか?
・最近、世界的に経済活動に何らかのコントロールが必要と言われているが、その実現が難しい中、世界の巨大金融資本や企業、国を上げての外国への経済活動の拡大する中国企業、自由主義経済を信奉する巨大な金融資本や企業と、NHKが示唆する(私も賛成の)日本型資本主義の企業が太刀打ちできるか?
など難しい問題が山積しています。
・前にも書きましたが巨大な領土を持つ中国、インドなどは膨大な低賃金の人口を武器に輸出により外貨を稼ぎ、世界的不況が起これば遅れている内地の開発で内需を拡大できます。
 それで余程政治や人種問題のなどの発生が無い限りそのGDPが日本を追い抜きそしてその発言権がますます増大するのは時間の問題でしょう。
 このようなことはある程度予測できても政治家も経済評論家も、不景気なことを言えば政治家は落選、評論家は飯の食い上げになるので言おうとしません。

 私は狭い国土と資源のない日本は、外国の真似でなく、今までのように優れた技術と人材、家族的運営、従業員の能力を最大限に発揮させる管理手法、長期的視野にたった経営、政府・企業・金融機関の緊密な連携と世界戦略、日本的経営を脅かす投機資金の排除、など針ねずみのように武装するほか、今までのような世界的地位に留まることはできないと心配しています。
 私は日本が今までのように余所の国の真似をするだけでは、コペルニクス的な大変化が世界や日本に起こらない限り、日本を取り巻く環境と日本人の性情からすれば、日本は北欧の国が理想とする、世界に対する経済的影響力はなくても、国民は少しは収入が減っても、心は豊かな国な、互いに助け合うコミュニティー、格差の少ない国に限りなく収斂して行きそうな気がするのですが。(戦前から戦争直後の貧乏を経験した私は、それも悪くないと思うのですすが、豊かな生活に慣れた人達が受け入れるでしょうか?)

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存在感を増す中国・地盤沈下の日本?

2009-07-11 11:15:11 | 企業経営

 今日は素人の癖に大きいことを書こうと思っていますが、例によって、思い込み、勘違い、書き漏らしなど多くあると思いますが、どうぞご忌憚のないご忠告、ご批判をお願いいたします。
 なお日本の地盤沈下に対する米国の見方について、昨日も触れていますので、宜しかったら、ご一覧下さい。

 7月9日のテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト]では幾つかの気になる報道をしていました。
<存在感を増す中国>
 イタリヤの首脳会談へ出席していた、中国の胡錦濤主席さんが、中国新疆ウイグル自治区の騒動のため急遽帰国したが、胡主席との会談を予定していた麻生さん・オバマさんなど首脳も多いことから改めて、彼の帰国が中国の存在感の増大を示すことになった

<武藤敏郎さんが描く日本の将来像> (*注記)
 日本が取るべき方向として次の選択肢がある。
・日本と中国がアジアのリーダーになる
 武藤さんはこの件については、はっきりは言わなかったが、日本は日本と価値観の似ている東南アジアの方に向くべきだと、どちらかと言えば否定的な意見だった。
 私の感想も交えて言えば、日本との経済格差がますます増大し、その発言力が増大する中国と組めば、日本が同国に呑み込まれてしまうと言うような口ぶりでした。
・EU-英国-米国と同じ形で中国-日本-米国の位置に日本が立つ
 武藤さんとアンカーの小谷真生子さんとの間でこの考え方に議論が集中した。
 そして、二人とも口を揃え(上記2例の)どの形になるにしても日本は頑張らねばと言っていた。
   そう言えば、昨夜のNHKがインタビューしたナポリ東洋大学のマッツィ教授も「日本は米国と中国の中間役をすべきだ」と言っていました。
・スウェーデンのように日本は主導権争いの外で福祉国家に徹する
 これには「余りにも淋し過ぎる」という小谷さんのコメントだけ。
 
私は日本はこのままで行けば(つまり何の手も打たなければ)、この方向に進むしかないような気がします。
 私個人はこれでも仕方がないと言うか、必ずしも悪いことではないと思います。

<中国メーカーが世界標準を作る?>
・北京の人民大会堂でソニーの「ブルーレイ」と並んで、発表された中国独自の「CBHD」と言うHD-DVDに人気がが集中
・中国はこれを規格化して、まず中国の12億の国民に普及させ、(これに外国企業を参入させ)次に世界的な規格にする戦略
・中国の独自規格というものの、ベースは、日本の東芝などが中心に開発した技術
(注:そのメーカーである上海聨光盤は、日本のメモリーテックと中国企業の合弁会社)
・同社で「CBHD」のキーマンとして働く日本人男性
・同社は世界で唯一「CBHD」ソフトの量産ラインを持つ
 
こうしてグローバル化の波に乗って、日本の技術が中国に流出し、その技術が中国によって世界的に規格化され、それが日本の製造業の首をまた締めることになるのでしょう。

[私の意見]
<中国の発展はどこまで続くか>
  私が尊敬するブロガーの「中韓を知り過ぎた男」さんは、中国はいずれ自壊するだろうと書かれていますが、私はその時期は後何年か知りませんが、少なくとも10年以内でなく数十年かそれ以上の後に起こる可能性があると考えて日本は対処すべきだと思います。
 その理由は中国と同じ、中国人中心の社会主義独裁の国シンガポールに住み、徹底的な実利主義と清潔な政府のイメージの下で発展していた状況を見ているからです。
 中国はおそらくきたシンガポールの成功例を学んでいると思います。
 中国では共産党の下級幹部の汚職がよく報道されますが、(徹底した情報管理もあるかも知れませんが)高級幹部のそれは殆どないようです。 (引退後の韓国の大統領の結末とは大きな差です。)
 中国は共産主義の国ですが、徹底した実利主義で、市場中心主義経済を取り入れ、それをVBHDの例に見るように中国の利益になるよう管理しています。
 中国政府が実利主義に徹し、そして高級幹部が清潔である限り少なくも直ぐに崩壊することはないと思います。
 だから日本は安全サイドに立って中国とはこのまましばらくは発展して行くとの前提で(安全な車間距離を置いて)付き合うべきです。

<日本の地盤沈下?の理由>
・避けられない理由
 私が寝言のように言うことですが、
 膨大な低賃金の人口を持つ中国の台頭→日本企業の競争力の低下→低賃金で採用・不採用が何時でも出来る非正規社員の増加→日本企業の競争力僅か回復・平均賃金の低下→購買力の低下(それと少子高齢化の進行) →内需に期待できず輸出に頼るしかない日本経済→米国発の不況→大量のリストラ→内需転換も出来ず輸出の回復を待つだけ
(良く人的資源しかない日本と言われますが、中国はその人的資源を使って発展してきました。)
・日本として考えねばならぬ理由
a.グローバル化と言うが各国は当然の話だが、自国のことしか考えていない
 米国・中国・ロシヤ・インド・ブラジルなど自分たちの領土は手放さない(現在、経済大国と言われ、そして将来その可能性のある国は日本を除いて全て上記の国です。)
b.狭い国土と自然の資源のない日本が生き残るためには、前記の国と大きなハンデを抱えて彼らの戦うしかない。
c.そのためには日本と日本企業は、はり鼠のように考え得る戦術と武器で武装して戦うしかない。
 理想的共産主義社会といわれまでに発展してきた時迄の、日本と日本企業の戦略・戦術・武器は
・「日本株式会社」と言われた政府主導の経済発展
・終身雇用、家族的経営→企業への忠誠心、チームワーク→自主管理・改善活動
・日本人としての優れた資質と勤勉、細やかさ
・企業間の株の持ち合い
・長期的視野に立った経営
・社会のために企業がある言う倫理観 
d.そして日本がいままで
やってきたこと
 ・政府主導の経済→規制緩和、後は自己責任として企業任せ
・行き過ぎた合理化と非正規社員の採用、企業は株主のものの考えが入り込む→企業への忠誠心の低下、改善活動による授業員のモラル向上とか潜在能力の開発、技術伝承の余裕がなくなる、技術の流出
  昨日も書きましたが米国の景気が危うくなっているにも関わらず企業は米国べったりの輸出を続けて来ましたし、政府は何も赤信号も出しませんでした。
 成果主義の導入→チームワークの破壊
・企業間の株の持ち合い廃止→短期的に利益の追求や儲け中心のM&Aして売り飛ばすだが目的の企業の参入
・長期的視野に立った経d営→目先の利益追求
・経営者の育成の放置→金儲けのためなら日本より企業優先、数々の不祥事の続発など倫理観の欠如(経団連会長の御手洗富士夫さんがその象徴です。)
などなど日本と日本企業の持つ武器の多くを放棄して丸裸の状況で人も資源も潤沢にある国と戦っているのが現状です。
 これは勿論全てが政府の責任だけでなく企業自身の責任も大きいと思います。
 強いて言えば政府は、ところてん式に昇進したサラリーマン経営者の中には、世の風潮に乗りやすい、覚えることは上手でも、物事の適切な判断が出来ない頭の悪い経営者もいるという現実を無視して、規制緩和、後は企業責任として放っていたことだと思います。

 日本も日本企業もこれからのことを現実を見据えてやらねば益々「じり貧」になるのは間違いないと思います。
  日本も日本企業も過去のやり方の良い所を取り入れ再武装すべきだと思います。
  グローバル化、友愛、東アジア共同体など綺麗ごとでもの事は進まないと思うのですが。

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*注記:武藤敏郎さんの経歴
 日本の財務官僚、経済学者(財政政策・金融政策)、実業家。株式会社大和総研理事長、東京大学先端科学技術研究センター客員教授。大蔵事務次官、財務事務次官、日本銀行副総裁を歴任。


人を大切にする日本型の経営

2009-06-30 14:39:42 | 企業経営

 経済産業省が19日に2009年版の通商白書を発表した新聞各社が報道しています。
・アジアの9億人市場を狙え
 中国やインドなど新興国の市場で、所得が増えて消費意欲を高めている中流層を取り込むための商品開発の必要性
・急激な景気悪化の要因となった米国への輸出頼みの産業構造をかえ、アジアの活力を日本の経済成長の原動力としていくことが必要
・日本が強みを持つ環境技術やアニメなどの積極的な売り込み
・中間層を取り込むため、家電商品の操作機能を絞り込むなどし、安価な商品を開発する
・中国での日本の女性ファッション誌の売り上げ増と、紹介されている衣料品の売り上げ増に繋げるために、メーカーや小売業などがメディアと連携
・経済危機の分析
 白書は、米国発の金融危機を発端とした経済危機についても分析し、米国などの「金融資本主義の限界が露呈した」と記した。
 その上で、長期雇用や年功賃金など、人や地域社会を大切にする日本型の経営哲学は「世界でも通用する」と主張している。
読売新聞
より)

[私の意見]
・数年も前から米国に頼りきりの輸出、米国型の市場中心、自由主義経済の見直しを訴えてきた私としては、日本が輸出先の重点の一部をアジアにシフトするのは賛成です。
・強いて問題点を上げるなら、今頃「米国などの金融資本主義の限界が露呈した」と言っても何もなりません。
 少なくとも米国の住宅バブルが可笑しくなりだしたときに、ある意味では第三者的立場にいる通産省は何らかの形で企業に警告を発するべきだったし、日本の銀行は日本のバブルの反省から、米国のバブルに警戒をしていたのに、通産省が何故黄色の信号を出せなかったかの反省が必要と思うのですが。
・終身雇用や人や地域社会を大切にする日本型の経営哲学は「世界でも通用する」との主張も賛成ですが、年功賃金と書いたのは少し問題があります。
 年功賃金は今企業で流行している成果主義の反対の賃金制度です。
 私は極端な成果主義は反対ですが、今のような時代では緩やかな年功賃金に加えて緩やかな成果主義の導入も必要な様な気がします。
 その一つの理由は現在避けられない非正規社員の導入です。
 その際、正規社員が年功で自動的に昇給すれば、能力給の非正規社員との格差がでてきて、これも避けられない同一労働、同一賃金の原則を護れないこと、そして賃金格差→社会格差の増大に成るからです。

 たまたま昨夜、テレビ東京の「カンブリア宮殿」で二回続いて「メガネ21の紹介がありました。(*注記)
 同社はユニーク(過ぎる)な会社で
・年商83億円の眼鏡チェーン。現在では広島でトップシェア、全国で128店舗展開
・質の高いサービスと広告費・人件費・利益と内部留保を極端に減らすことによる安値販売
・社員全員が株主(経営者と同じ危機意識を共有)
・社員の半分が転職組(他企業の正規採用中心の人事と違う)
・転職の理由は「ノルマがないから」 (成果主義とは反対)
・中間管理職はなし、連絡役、指導役としての世話役を置く(組織の簡素化)
・業績が良ければ惜しげもなくボーナスを支給、30代社員は一番多かったときは450万円くらい貰った(従業員の士気の高揚)
・普通の会社なら当たり前に行なっている「内部留保」を商品の値下げと社員のボーナスに当てている。
・同社や独立者が資金が必要な時は社員から自分の(社内預金)貯蓄の中から同社や独立者に投資をして貰う、つまり「内部留保」を社員の貯蓄で肩代わりする
・社是は「社員の幸福」
・会社所有のボートでの魚釣り大会や社内ボウリング大会→社内結婚の奨励
・客の希望に合ったメガネを各店で作ることの出来る技術を発明

 私は今まで何回かテレビなどで優良企業の紹介がある度に、このブログに載せてきましたが、それらの会社を見ていて気付くのはその何れもが、
・人を大切にする
・終身雇用
・会社と従業員が互いに信頼している
・従業員のやる気を起こさせる 
・企業がこれらのことを実行出来る、他社が真似できない独自の技術を持っている
・モラルの高い従業員が更により高度な技術を産み出す
 という共通した特徴を持っていることです。
 そしてそれこそ日本が一時期に国民が総中流意識を持つまで発展した原因の一つです。
 今は、米国発の金融危機、開発途上国の台頭という厳しい時代になっていますが、成果主義万能や非正規社員採用によるイージーゴーイングな経営姿勢を改めて、通商白書の示すように、昔の日本型経営の良い所を新しく見直して時期にきていると思います。
 それと国土が狭く人的資源しかない日本は、経済的に優位に立つ国と伍して行くためには、昔の日本株式会社(と言っても管理型ではなくて政府のアドバイスや支援の形の会社)に戻ることも考える必要があるかも知れません。
 日々の仕事に終われている企業に対して、そしてサラリーマン化している企業の経営者に、前に書いた様に米国経済の変調などや、新技術開発の必要性など、先見性を持った指導する政府が欲しいものです。

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*注記:景気が悪くなった時の対策(ホームページより)
1.業績が下がれば年間最高は800万円の賞与を減額、社内預金の利息を10%→0%まで引下げる。(社長の年収は社員の最高額と決めているので、社長の報酬も自動的に減額)
2.更に仕事が減れば残業を無くし、休日出勤も無くす。
3.更に暇になれば、時給1330円~1520円のパート社員の勤務時間を減らす。
4.定率で減価償却しているので設備投資を中止しコスト削減
(つまりワークシェアリングの考え方)
「多数の社員が預金引出しに殺到した場合は?」の質問に対しての社長の考え方は、殆どの社員が(株)21の存続を願わなければ会社を清算すべき。


かんぽの宿でオリックスが勝った理由

2009-06-11 16:20:35 | 企業経営

 鳩山総務大臣の西山発言が麻生内閣を揺るがす問題になっています。
 丁度その時期に、あるホテルの関係者から少し気になる話しを聞きましたので、「何故109億円のオリックスが61億円のホテル運営会社に勝ったか?」について書いて見る気になりました。
 かんぽの宿問題は、当然にホテル業界で話題になっているそうで、そのホテル関係者もオリックスと共に最後まで残った「ホテルマネージメントインターナショナル」(HMI)の関係者から聞いた話しとして私に話してくれました。
 つまりHMIの関係者は今回の問題は郵政、オリックス、HMIの間の「出来レース」だと言うのです。

 勿論この情報の真偽については検証する手段もありませんので、この話と今までの経緯から、私に浮かんできた疑問と言う形で纏めて見ました。
 かんぽの宿の引受先決定の経緯については、ダイヤモンド・オンラインの町田徹の眼
の該当部分を引用しました。
 (前略)
ちなみに、筆者の手許にある日本郵政作成の資料を総合すると、昨年5月、かんぽの宿の買収に名乗りをあげた企業は全部で27社あった。
 そこで、まず、日本郵政は予備審査を行い、5社を失格にした。残りの22社は、郵政の言う“第一次提案”の提出を許されたが、なぜか15社が辞退してしまった。実際に、提案に漕ぎ着けたのは、7社に過ぎなかった。さらに、日本郵政は、この7社をふるいにかけて、3社を残した。この3社を対象に、第2次提案を募ったが、またもや1社が辞退した。一部報道によると、2社の中では、109億円のオリックスが、ホテル運営会社の61億円を上回り、勝ち名乗りをあげたというのだ。
 しかし、日本郵政は頑なに、オリックス以外の26社の社名の公表を拒んできた。最後に落ちた企業以外は、入札額や辞退の理由さえ伏せている。

 その後判った事実は産経Web のかんぽの宿、最終入札額提示はオリックスのみ 突然の条件変更で競争相手辞退によると、
 日本郵政が「かんぽの宿」の一括譲渡を断念した問題で、2社が残った入札の最終段階で譲渡条件が突然変更された結果、具体的な買収額を提示したのは109億円で落札したオリックス不動産だけだったことが分かった。
 日本郵政はこれまで「1位は109億円、2位は61億円」と、最終的に2社による「札入れ」の結果、オリックスが落札したかのように説明してきた。鳩山邦夫総務相は「金額の提示が2社そろわないと入札とは言えない」と批判し、入札経緯を追及する考えを重ねて強調した。
 ところが、日本郵政は11月20日にレクセンターだけを譲渡対象からはずした上で、譲渡額を引き上げるよう2社に要求。オリックスは10月に105億円だった入札額を12月3日に109億円に増額して提示したが、10月に86億円を提示したHMIは、再度の価格提示を断念した。
 その後、日本郵政はHMIの入札額について、12月のオリックスの提示と同じ条件で再応札した場合を想定して計算した結果、61億円になったという。
のが事実だそうです。

[私の疑問]
 かんぽの宿譲渡の最後の選考に残ったのは、オリックスとホテル運営会社のHMIです。
 オリックスの業務はそのホームページ
によると、個人向けでは金融商品サービス、自動車関係、不動産業務、ゴルフ場、複合商業施設、プロ野球、ホテル(約10箇所)。
 法人向けでは、リース、レンタル、融資、投資銀行業務、不動産関連ファイナンス、不動産関連サービス、運用投資、生命保険、損害保険、その他サービス。
だそうでホテル業務は小さな一部門に過ぎない様です。
 そして最後まで残ったHMIはホームぺージで見ると全国的に35のホテルを経営しているそうです。
 そこでいくつか疑問が浮かびます。
・ホテル経営の面から言えばホテル運営会社のほうが遥かに経験がある
同会社はホテル再生についても多くの経験がある(ホテル業界では有名だそうです。)
・入札でオリックス以外に全て辞退したとすれば、入札は成立しない。
 国有財産を処分するのに、受け入れ会社決定の透明性が疑われるのははっきりしているのに、何故入札条件を変えて複数の会社が参加できるようにしなかったのか?
 (前述のように日本郵政は「今まで二社による入札」と嘘の説明をしてきました。)
・もし日本郵政がなんらかの理由で、ホテル運営やその再生についてオリックスより遥かに経験のあるHMIを排除したとすれば、その健全性だが、27社から絞りに絞って、2社になったMHIはオリックス程はないかも知れないが、かなりの健全性がある
・それだけ絞り上げた会社にかんぽの宿を売って、仮にその会社が倒産しても日本郵政に責任はないはずだが、何故その先の先まで日本郵政が考えねばならぬのか?
・最後の2社になるまで頑張って、後一歩のところで辞退を余儀なくされたHMIは何故今まで何も言わないのか?
 郵政本社からの圧力か?
 然し、もし喧嘩になっても同社は負けた以上もう日本郵政と無関係だから何でも言える筈だ。
それともHMIはなんらかの条件で納得したのか?

 ここまで考えると、HMIの人が言ったと言う、かんぽの宿の入札は「出来レースだ」の言葉はこれらの私の疑問の全てを解くキーワードになるような気がします。
 つまり日本郵政、オリックス、HMIの間で何らかの取引があったかもしれないことです。

 それから先のことは容易に想像できますが、「出来レースだ」は単なる噂です。
 私は素人ながら、正確な情報がない限りそれ以上の勘繰りは遠慮させて頂くとし、賢明な訪問者の方々のご判断にお任せしたいと思います。

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日本の原子炉製造技術を狙うロシア

2009-05-08 10:34:58 | 企業経営

原子炉製造技術:ロシア企業取得狙う 日本、官民で防衛 
 世界随一の原子炉製造技術を持つ日本メーカーをロシア企業が買収しようとし、日本が官民挙げての防衛策で阻止していたことが7日、明らかになった。麻生首相は11日から来日するロシアのプーチン首相と日露原子力協定調印で合意するが、協定締結は両国の攻防の末の妥結策でもあった。
 07年2月28日、来日したフラトコフ露首相は安倍首相と会談し、原子力協定の交渉を始めることで一致した。2日後、「ロシアのアルミ王」と呼ばれた富豪デリパスカ氏が、首相随行団から離れ、技術者を伴って日本製鋼所室蘭製作所を視察した。
 原子炉の心臓部の圧力容器は、継ぎ目を極力減らすため巨大な鋼塊をプレスして造る。原子炉は大型化しているが、同製作所は世界最大の約600トンの塊を造る技術を持ち、他の追随を許さない。
 技術に驚嘆したアルミ王は、関係者に言った。「あの会社の株を取得できないか。買収したい」
 デリパスカ氏はプーチン首相との親密な間柄で知られる。日本政府に「買収はロシア政府の意向だ」と危機感が走った。
 半年後の同年9月、日本製鋼所は20%以上の株取得を目指す投資家に目的などの説明を求める「事前警告型」の防衛策を導入。
 また、経済産業省は、外国資本が航空機・原子力・電気・ガス会社の10%以上の株式を取得する場合、外為法に基づく事前届け出義務があることをロシア側に繰り返し伝えた。
 08年6月、モスクワで開かれた原発事業の国際会議。日本政府の原子力委員会の神田啓治元専門委員は、ロシア国営原子力会社の副総裁から「あの工場を買いたいが厳しいようだ。政府間協定の正攻法でやりたいから協力してくれ」と持ちかけられた。
 7月の北海道洞爺湖サミットでもロシア側から「日露首脳会談で締結する」との観測が流れ、その後、交渉は異例の速さで進んだ。
 背景にあるのは、温暖化対策で世界中で原発新設が進むとされる「原子力ルネサンス」。日本の技術を導入したいロシアの熱意と、ロシアのウラン濃縮能力を活用したい日本の思惑が一致した。
 かつて日米同盟の仮想敵だった核大国との提携は、半世紀を超える日本の原子力エネルギー政策の転換点となる。
 原子力協定は、ウラン燃料などの核物質や原発関連部品の輸出入にあたり、核物質や核技術が流出したり、自国から送った核物質が相手国内で核兵器などに軍事転用されないようにする取り決め。協定がないと、本格的な核燃料輸出入や技術協力はできない。核不拡散のために結ぶ側面が強かったが、途上国で原発新設の動きが進むにつれ、先進国から途上国への原発輸出を円滑に進めるための側面も出てきている。日本はカザフスタンとも締結交渉を進めている。

[私の意見]
・日本生き残りの命綱の技術の流出
 事実上プーチン首相が率いるロシヤは一国主義で国の勢力の拡大を目指している国、日本から言えば不法占拠した北方4島を返そうとしない、中国と同じ煮ても焼いても食えない国です。
一方、日本製鋼所の室蘭製作所は戦前から軍艦の大砲の鍛造以来、伝統的な鍛造の技術とノウハウを持っています。
 私は毎日新聞の記事のように、日本政府も日本製鋼もその貴重な技術の流出しないように頑張って貰いたいと思います。
  グローバル化や、自由主義経済にかぶれた人達、自分たちの企業は日本企業で無くて世界企業だと考える、そして目先の利益しかない経営者たち、最近では海外へ流失した離職や退職した技術者たちから、日本の技術が外国に流れて行きました。
 例えば、日本得意のDRAMなどの半導体製造技術を利用した韓国や台湾から、日本企業が押されっぱなしという現実もあるようです。
   参照:止まらない中国・台湾・韓国への技術流出 

・自国のために動く外国政府と日本政府と企業
 グローバル化と言っても実情は、米国、中国、ロシヤ、インド、ブラジルなど広大な土地を抱えているのに、日本は狭い国土という大きなハンディキャップがあります。
 そうした各国も当然の話ですが、自国の有利を優先とした経済政策を取って居ます。
 だから日本も当然自国の有利になる政策を取らねば、禿鷹のような外国の企業から何もかも根こそぎ持って行かれます。
 狭い国土で人的資源しかない日本がが世界での厳しい競争の中で生き残って行くには、これも誰でも知っているように、一番の頼りはその優れた技術、そしてその技術を持つ技術者しかありません。
 勿論、市場主義経済やグローバル化の恩恵も受けているのも日本です。
 そして何を考えているか判らない中国や(今回の場合で言えば核燃料入手のため)にロシヤと何とかして付き合って行かねばならぬのも現実です。
 これらの事実と自国の経済の発展を如何にバランス良く取って行くかは、今回の室蘭の鍛造技術流出防止のように日本政府の責任ですが、企業もこのことを忘れることは、そのままその存亡に関わることを何時も留意しておく必要があると思います。

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航空機製造と言う壮大な夢を描こう

2009-04-04 10:16:13 | 企業経営

 ネツトを見ていると国産ジェット旅客機の開発を計画している三菱重工のPRの資料を見つけました。 
その概要は、
[航空機製造の意味するもの]
・日本にも「零戦」に代表されるように、日本の航空機技術が戦前は高度なレベルを保っていたし、戦後は「YS-11」製造のノウハウも持っている。
・製造技術としては国産防衛機の生産や、海外旅客機メーカーへの部品サプライヤーとして、ボディや翼など部品の生産や機体材料の開発力は優れており、それなしにはいまや世界の航空機はつくれないとまでいわれる
航空機製造は三菱重工といった一企業の事業にとどまらず、日本のこれからの産業界の動向を決定づける重要な意義をもっている。

・航空機は絶対に墜落できない乗り物だから、高い性能、精度、信頼性、安全性が必須。 そこで培われた技術は、自動車や電機業界など、他の産業に波及して行く。
 日本の製造業の品質管理のレベルは世界一です。
・航空機に必要な炭素繊維強化プラスチック材料や空力設計のシミュレーション技術、またパイロットの操縦指令を電気信号によってアクチュエーターに伝えるFly-by-Wire技術などは、すでに自動車など他の産業でも利用されている。今後重要になるのは、組み込みソフトウェアの開発・検証技術だ。
 自動車の組み込みソフトの開発は世界でトップを走っていますが、航空機産業と組めば更に強力なものになるでしょう。

・自動車もソフトウェア技術の集約といわれ、搭載される制御ソフトなどのコード行数は700万行にも達する。ところが航空機はその数倍、2000万行に達する。
 自動車で培われてきた制御ソフト開発技術はそのまま航空機に応用出来るでしょう。

・航空機を納期どおりに納め、安全に航行させるためには、こうした膨大なソフトウェアを効率よく開発・管理する技術が不可欠。そこでのノウハウは、必ず他の輸送機器やエレクトロニクス製品にも活かせるはず。
 日本の製造業の納期厳守の姿勢は世界でも評価されています。そして著者の田野倉さんの言う様に自動車製造と航空機製造で開発された技術は相互に応用出来ます。

 三菱重工グループをはじめとする日本の航空機産業が自前の民間ジェットを飛ばすようになれば、その技術は、深刻な不況下で呻吟する製造業やIT産業にとっても、大きな突破口になる。
 
以上三菱重工の航空機開発を支持しているを日経エレクトロニクス編集長の田野倉 保雄さんの意見ですが、まさに彼の指摘する通りだと思います。

 波及効果が高いのは、なにも材料やソフトウェア技術ばかりではない。その数、25万点ともいわれる部品を機体に詰め込む生産技術や、飛行機を安全に飛ばすための飛行試験やメンテナンス技術も重要だ。そこでは、自動車などとはまた違った、航空機づくりのための独自のノウハウが積み上げられている。
 製造関係の大企業だけでなく、中小企業の持つ部品の製造技術は世界トップの力を持っていますし、残念ながら航空機は外国製ですが、その優れたメンテナンス技術は日航機の墜落事故以来、メーカー側の責任による小さい事故はあっても、日本側の整備不良による事故らしい事故もないことで知られています。

[航空機製造の必要性]
・今、自動車産業は米国の金融・経済危機のために減産に苦しんでいます。
 そしてその部品を供給する下請け会社は倒産の危機に陥っているところもあるそうです。
 ・一方、インドなどではすでに30万以下の自動車を売り出していますし、低賃金を売り物にした中国による低価格の自動車の激しい追い上げもあるでしょうが、自動車製造は日本の輸出の中心であることはまだしばらく続くでしょう。
 それで他国に負けないための技術力のアップのためにも、航空機産業のノウハウの導入は有力な武器となるでしょう。
・トヨタを始めとする自動車産業は航空機製造に関する技術を持ち、部品製造の下請けの中小企業と言う広いすそ野を持っています。
 逆に言えばその航空機製造のためのその広いすそ野の活用ができます。
 前に書いた幾つかの条件を考えると、自動車製造会社の航空機産業との協力は勿論、同部門への進出も夢ではないと思います。
・最近全日空系の会社がブラジルから中型機を数十台の輸入の契約を結んだように、少なくとも欧米の大企業の大型機でなくて、中型、小型機の需要がまだあることを示しています。
 特に狭い国土の日本と、そして作り過ぎだと言われている飛行場の活用の面からも、日本のメーカーによる中小型機の開発に適しているよう気がします。

[航空機製造のこれから]
 問題点としては
・重工の資料でも指摘していますが、YS-11の撤退以来、航空機売り込みのノウハウと市場を失っていること
・風洞実験やソフトの開発などの基礎的な研究が不足していること
など幾つも問題が有りますが、戦争直後の米国による航空機製造の規制のなくなった今、乗り越えて行けない問題では無い様です。
 それより航空機開発と言う壮大な計画を日本が持つことは、今の停滞した日本に大きな希望を与え、沈滞した気分の一掃は全体の経済自体の活性化に繋がるかも知れません。
 今こそ、かっての経済発展時代のように、政官民一体となっての夢へ向かっての前進が期待できますし、その実績もあります。
 政府も苦しい財政の中でも、将来を見据えた資金投入を考えたらどうでしょうか。

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理想の高齢者雇用

2009-02-10 17:36:52 | 企業経営

 昨夜のテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で「理想の高齢者雇用は」で2つの例を取り上げていました。
 一つは自動車部品の製造と、もう一つは地もと名産の焼き餅など菓子を作っているいずれも中小企業です。

[高齢者雇用のメリットと問題点]
そこで高齢者雇用のメリットとして次の様なことを上げていました。
・高齢者は年金を貰っているので低賃金すむのでコスト削減になる
・同じ理由で生産高の減少のさいには、高齢者を休ませても本人の生活に大きな影響を与えない(番組では高齢者をバッファーに使うべきではないと言っていましたが。)
・正規社員も定年以後まで雇用することで、若い人に技術の伝承ができる
・高齢者にやり甲斐を与えること、規則正しい生活のため、健康になり医療費削減になる
・高齢者が税金を払うことで国庫の増収になる
・真面目な高齢者が入ることで若い人達に刺激を与えたり、高齢者の指導で今までの仕事の問題点に気付き改善へ繋げる
問題点と特別の留意すべきところとしては
・従業員の管理が今までのように画一的な管理が出来ず高齢者に特別の配慮がいる
・高齢者に適した製造方法を考える必要がある
 焼き餅の製造工場では高齢者雇用優先のため餅に餡をつめるための自動機械の導入を止めた

[私の意見]
・企業経営者の倫理観
 この番組を見ながらまず感じたのは雇用者の企業としての社会責任感と倫理観の高さです。
 最近の大量解雇した会社の経営者の中で、上記のような責任感や倫理感をもっている人がどれだけいるのでしょうか。
 特に経団連を率いる御手洗さんのキャノン大分工場を巡る諸問題や、大企業の経営者達が「私たちは下請けや派遣会社との契約を取りやめただけで、非正規社員を首にした訳ではない」、「大量解雇した人達のセイフティーネットを整備すべき」と言う後は政府の責任だと言わんばかりの発言を聞くと心が暗くなります。
 日本は竹中平蔵さんの言う様に、日本は大企業を優遇しその波及効果を中小企業や零細業者を期待していました。
 そのような大企業の経営者がそんな無責任な発言をするなんて。

・家庭の女性の雇用
 出産や育児などで家庭に留まっている配偶者控除を専業主婦なども、高齢者と同じように、生活に大きな支障のない収入を得ている家庭に留まっている女性の活用も高齢者とど同じように経済活動に参加できるようにすることも考慮すべきと思います。

・画一的な人事管理の見直し
 前にも何回か書きましたが、画一的な人事管理に慣れてきた企業は特別の配慮を要する高齢者や女性の処遇、それから非正規社員の正規社員への登用など意識的に避けているような気がします。
 経済状況は益々厳しくなるばかりで、人事管理も画一的なやり方ばかりでは企業は立って行けなくなると思います。

・外国人の導入より先ず高齢者と女性の活用
 中川秀直さんは今回の金融・経済危機発生の直前に100万人の海外労働者の導入を言っていましたが、ブラジル二世の離職者の処遇が社会問題になりかけています。
 その前に高齢者や番組では触れて居ませんでしたが、高齢者とやや似た境遇にある女性の経済活動の参加を考えるべきではないでしょうか。

・日本経済は永久に成長し続けるのか
 ついでに中川さん率いる「上げ潮派」の人達へ言いたいのですが、これから経済の成長は半永久的に続いて行けるのでしょうか。
 せいぜい微増か悪くすれば停滞か下降の傾向が続くのではないでしょうか。
 唯一の希望は中国の給与水準が韓国のように上がって、日本のそれとほぼ同一レベルになり、中国企業の競争力が落ちてくれば、日本経済の復活が出来ると思うのですが、中国の膨大な人口と超低賃金が日本なみになるのは何年かかるのでしょうか。
 私は前から中国の台頭→日本の貧困化と言っていましたが、最近テレビのコメンティターからも貧困化の話が出始めました。
 発展し続ける日本経済と言うバラ色の夢も良いですが、現実的ににそれが出来ないかも知れないと言うマイナス面も考えておく必要があるような気がします。

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製造業の非正規社員雇用

2009-02-08 12:36:29 | 企業経営

昨夜のNHKスペシャル「緊急報告 製造業派遣は何をもたらしたか」のタイトルで、
 46万人にのぼる製造業の派遣労働者を巡る問題点が顕在化している。元派遣労働者の中には、働く気力を失い、生活保護を受けなければやっていけない人も多い。一方、企業でも、人件費の安い非正規労働者を活用してきたことで、正社員の間でコスト意識が薄れてしまうなどの問題が起きている。番組では、製造業の現場と「元派遣」たちのその後をつぶさに見つめることで、「製造業派遣」が何をもたらしたのかを明らかにする。 (番組案内より)
と言う内容の放送がありました。
 今日は企業側に焦点を当てて非正規社員雇用の問題を考えてみたいと思います。

[製造業へのアンケートの結果]
 労働者派遣法規制に

     反対 44% 理由:企業の競争力低下、雇用増大に貢献
              セイフティーネットを強化すべき
  賛成 41% 理由:物作り力の低下、人を人としない物扱いなどの見直しをすべき
                   

[自動車部品の製造企業の例]
 規制賛成の企業として、自動車部品の製造企業が紹介された
・需要の急激な増加に伴い非正規社員を導入、売り上げの増加と低賃金の非正規社員の増大に為に(何もしなくて)利益が増大
・需要の低下に伴う非正規社員の整理、利益の減少のため管理体制の見直し
不良品の急激な増大(年間3000万円にも達した)が業績に大きな影響を与えていることに気付く
・その原因は仕事に追われて不良品発生防止などの従業員の間で行われていた、改善活動が7年間も行われていなかったのに気付く
 
[私の意見]
 この企業の経営者は自社の問題点をマスコミに見せるなど、非常に誠実な人のようです。
 その様な人の経営する企業でさえ、低賃金の正規社員の導入による企業収益の増大で、つい企業の合理化や、日本企業の強みだった改善活動などに象徴される、従業員の能力の活用を忘れていたのでしょう。
 安易な低賃金の非正規従業員の導入が如何に企業の物作りの力を落としていたのでしょう。
 そんな企業の経営者の中には、政府に多様化した労働形態に対応すると言う美名のもとで、労働者派遣法の制定や改正?を要求し、実は低賃金の非正規社員の導入でコスト削減→企業収益の増大してきたのに、そして今回の経済危機に対するリストラでは政府にセイフティーネットの強化を要請するなど、余りにも「おんぶにだっこ」過ぎると思います。
 最近の乱発する急激なリストラの報道や、それに関する企業経営者や経団連の発言などみると余りに甘い経営者が多いような気がします。
 その一方では労働者派遣法規制に賛成の企業経営者もいることやその賛成の理由を見ると日本も未だ捨てたものではないなと言う気もします。

 企業の主張する多様化した労働形態の中には、今までから行われていた、特殊技能者や家庭の主婦のパート、農村などからの出稼ぎの期間工なども問題が有りますが、深刻なのは非正規社員の中にはその収入の全てを自分の生活費に当てている人達です。
 不安定な生活で結婚も出来ないためただでさえ大問題の少子化にマイナスの貢献をしている人もいると思います。
 国は特にそのような人達に如何に希望を持たせるかを考えるべきだと思います。

 私は労働者派遣法など労働関係の諸法規は次のような一定の規制を加えるべきだと思います。
・同一労働同一賃金
・短期の非正規社員にも健康・雇用保険、厚生年金の企業負担
・「離職者に対するセイフティーネットの資金」の創設とそれに対する企業の資金提供義務
 この他にもあると思いますが、非正規社員導入に一定のブレーキを掛ける事は、企業が安易な企業経営や規模拡大を避け、日本の強みであった従業員の製材能力の活用など大きなメリットがあると思います。
 政府は企業経営にとって麻薬のような労働関係の諸法規の規制緩和には充分留意すべきだと思います。

参照:雇用問題と企業の責任  
       
雇用問題と小泉改革の影   
       
非正規社員の大量解雇と企業の経営者

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非正規社員の大量解雇と企業の経営者

2009-02-04 16:04:08 | 企業経営

 厚生労働省が今年3月末までの半年間に職を失うと予想されている派遣などの非正規雇用労働者数が当初3万人から8万に増え今では約12・5万人に上ると言う調査結果を公表しました。
 また企業従業員の自殺者は年に3万人に登るそうです。
 今日は見方を変えて企業経営者に焦点を当ててこの問題を考えて見たいと思います。

[日本の企業経営の流れ]
・学歴中心主義の人事管理

 戦後以来、学歴中心主義の人事管理は今まで続いているようです。
 その最大の理由は、途中入社など認めると従業員育成計画が乱れることや人事管理がややこしくなるからでしょう。
 戦後間もなくは、当時の高小卒や旧中卒で工員として入っていた人の中にも優秀な人が多くいましたが、注記で書いたように彼らが夜間の大学にいっても認められないのがふつうでした。(*注記1)
(今は一般従業員と管理職と書かれていますが、その記述でははっきりしないので、昔使われていた工員(優秀な人で係長止まりに終わる)、職員(課長以上の職を約束されている人)というやや差別的とも取れる呼び方で通させて下さい。)

・「名ばかり管理職」の発生
 当時は社会党や共産党に率いられた過激な労働組合が有りました。
 それで企業が取ったやり方は、工員の地位を引き上げて管理職にし穏健な管理職組合に入らせることでした。(*注2)
 然し、過激な組合を持つ企業と、穏健な旧民社党の影響の強い組合を持つ企業との間に競争力の差が出始め、次第に過激な組合は衰退の一歩を辿りました。(*注3)

・合理化の進行と企業の発展
 組合問題が落ち着いたころから、日本経済の発展に伴って企業は膨張を続けて来ました。
 当時の合理化の手法は、経済の低迷期に希望退職や新規採用を控えて人員を削減し、経済の回復期には企業を拡大するが人員を増やさないという、経済の発展時だから出来た無理のない形の合理化が進められていました。

・自主管理活動による合理化
 そのころ米国からは品質管理の考えの導入され、工員を中心とする日本独自の自主管理活動や改善運動が進められて、今の自動車や電子機器などを中心とした企業の競争力の強化され、一億総中流意識を持つと言われるほどの大成功を納めました。
その理由は
・前にも書いたように工員にも職員に負けない潜在能力を持った人が多くいた
・昔からの年功序列、終身雇用による愛社心やチームワークで働くと言う土壌があった
・工員には労働組合の存在があり、人員削減など簡単に出来なかった
 つまり現在では企業運営の障害と思われている、年功序列、終身雇用や労働組合の存在が日本企業の合理化と競争力向上の推進力(ドライビング・フォース)になっていたのです。

[麻薬のような労働者派遣法]
 成功した日本の企業に立ちはだかったのが
・日本のバブルの崩壊
・膨大な人口と超低賃金の国、中国と台頭と、日本企業の相対的な競争力の低下
・小泉さんのドラスティクな規制緩和、構造改革の推進
です。
 それに対して経団連は政府に労働者派遣法の制定を申請し、さらに同法と労働者の防波堤だった労働基準法の緩和を要求し、政府はその申し入れを受け入れてきました。

 労働者派遣法は企業経営者にとってはとても便利な方法です。
・経営者の好きな時に受け入れ、好きなときに契約を破棄出来る。
・解雇に伴う企業としての社会責任の追求や従業員とのトラブルは全ては派遣会社が受けてくれる。
・そして圧倒的な受け入れ先と派遣元の力関係で、賃金はいくらでもカットできる。
・人事管理では正規従業員の管理だけで良い、法律化されている面倒な非正規社員の正規社員化など頬被りすれば良い。

 労働基準法の緩和で昔なら法規違反だった実質的な「人入れ稼業」もOK、偽装請負や残業時間の規制も緩くなりました。
 それで一昔のように組合の監視や、従業員を大切にすると言う基準法の規制もない中で、今までのような生産性向上のための合理化を進める必要もなく、いつでも切れるそして賃金も抑えられる、派遣労働者や請負会社の従業員の導入で簡単に経費が削減できるようになりました。
 おまけに小泉さんの米国一辺倒の波に乗って、成果主義の導入、企業は株主のものの考え、長期的視野の経営より短期的な利益追求など、昔の企業の良い所を捨て去った企業もも出始めました。

[頭の悪い一部の企業経営者]
 これらの動きを見て心に浮かんで来るのは、
・全てを「物」とする考えかたを持つ経営者
 労働者のロボット扱い、従業員の潜在能力の無視、開発は開発する人、作るのは作る人
・凡庸な企業経営者
 半世紀以上も固定化した人事管理システム、長期的な視野もなく世の流れに流される人、倫理観や企業の社会責任の考えのない経営者
と、
・従業員の精神疾患や自殺者の激増、行先のない離職者の激増
です。
 我々は「契約を打ち切っただけで首を切ったのではない」、「離職者のケアは政府の責任だ」と言わんばかりの経団連の幹部の発言などなど聞いて呆れるばかりです。

 労働者派遣法や労働基準法の改正は、企業経営者にとって余りにも便利が良過ぎたので、つい過去の厳しい法規や労組の監視のもとで営々とやってきた合理化の努力を忘れ、つい放漫な企業経営に陥ったのが、今回の大量解雇の一因となったのだと思います。

 今回の金融・経済の危機は天から降ってきたのではないのです。
 何故なら銀行などは日本のバブル崩壊の経験を活かして、行き過ぎた米国の金融資本の動きに警戒していたのに、製造業はそれ対する警戒心もなく、企業の拡大により競争力強化を図って来たと思うのです。
 この項のタイトルに書いたように今回の大量解雇は、経営者に取って便利過ぎる、労働者派遣法や緩和された労働基準法が企業経営者に麻薬のように作用して、その経営に対する判断力を誤ったのも一つの大きな原因だと思います。

[私の提案]
 行き過ぎた規制緩和や、構造改革が多く問題を残したように、余りにも便利の良過ぎた労働者派遣法や、労働基準法の改正が数々の問題を引き起しています。
 それで対策にも色々あると思いますが、一つの方法は労働者関係法に何らかの歯止めとかブレーキを掛ける必要があるような気がします。
 対策は色々あると思いますが、例えば、離職者救援資金を創設して、非正規社員の数に応じて派遣会社、請負会社、受入会社からの資金提供を義務づけるなどです。
 それで、政府も離職者ケアの出費を抑えられまし、野放図な非正規社員の導入を防ぎ、企業の拡張プランを慎重にさせ、企業にも従業員の採用に対する社会責任を認識させることになると思います。

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*注記1:私の見聞したこと
 私は20代のころ国立大学の夜間部に通ったことがあります。
 学校へ通う電車の中で自然と他の大学に通う同じ会社の人達の知り合いになりました。
みな私と同じ旧制中学の卒業でしたが、普通なら私と同じように「職員」で入れるところを「工員」として働いていた人が大部分でした。            
 そして彼らの卒業後の処遇が当然のように問題になりました。
 大学卒の場合は旧帝大と戦後出来た大学、二流の私立では相違がありますが所謂エリート・コースに乗るのが普通でしたが、会社は入社以後の上級の資格をとっても認めてくれませんでした。
 何故なら、将来の幹部の育成コースに横から入ってくれば、人事管理制度ががたがたになるから、また工員として働いていた人がいきなり出世コースに飛び乗るなど、同僚の士気に影響すると考えたかも知れません。
 当時の夜間大学に通っていた人達の大部分は地もとでは職がないのではるばる出てきた人達で、皆、意欲満々で、中には退職後、国立の工業大学の教授になった人もいる程優秀な人も多かったのです。
 当然のように夜間大学に通った人達の殆どは辞めてしまいました。(私は前にも書いた様に貧乏な家庭に育ったので家計のことを考えてそのまま勤めました。)
 ここで会社に取ってまた工員の欠員の補充の問題が出ました。
 そして会社が取った対策は、会社の従業員の子供しか工員として採用しないことでした。
 その理由は差別的な表現になるので省略しますがご想像下さい。
 つまり会社は工員の能力など全く無視していたのです。
 お断りして置きますが私が勤めていた会社は今でも業界で一、二を争う会社ですし、私の大学の友人達が勤めていた会社も殆どが一流会社ですが、工員の能力を無視した点では皆同じでした。
 読者の方々はもうお気づきと思いますが、今でもこの少なくも作業員への処遇はごく一部の会社をのぞいては殆ど変わらないと思います。
 私たちの現役時代から約5~60年の間以来変わらないのです。

*注2:名ばかり管理職
 今の「名ばかり管理職」は残業代をケチルためのひどいやり方ですが、当時は労組の力を削ぐためでした。
 ひところ「残業代ゼロ法案」として問題になった「ホワイトカラー・エグゼンプション」も同じ流れです。

*注3:今の日教組、官公労は、力も弱りましたがその悪影響をみれば、昔の過激労組の影響が如何に大きかったか判ると思います。


雇用問題と小泉改革の影

2009-01-19 12:15:28 | 企業経営

 昨日のテレ朝の「サンデープロゼクト」での「構造改革は、日本をどう変えたのか?」と題しての、「資本主義始まって以来の危機」に陥っている」という三菱UFJ証券チーフエコノミスト水野和夫さん挟んでの、構造改革で小泉元総理の懐刀だった慶応大学教授の竹中平蔵さん「構造改革のあおりは雇用不安にも及んでいる」という慶応大学教授の金子勝さんのがっぷり四つに組んだ討論と、「どうなる?日本の景気と雇用危機!」で登場した伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎さんの話は大変聞き応えがありました。(青字は番組紹介より)

 政治家、官僚、企業の抵抗の中で、改革の実施に当たった竹中さんと、終始批判していた金子さんの双方の立場からの主張で、改革の問題の光と影の部分を浮かび上がらせてくれました。
 小泉改革の問題について、今日は小泉改革の関係者の立場から考えて見たいと思っています。


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[頑張った竹中さんとそれに引きずられた官僚]
 それは小泉さんの強力なバックアップの下で猛烈に頑張った竹中さんと、構造改革や小さな政府を目指す改革に当然伴う影の部分を補完すべき省庁が竹中の活躍に比べると殆どと言って良い程動かなかったことです。
 それともう一つ、経済の実際の運営に当たる企業の経営者の中の相当数の人達が、世の風潮に流されやすい凡庸な人達がいたと疑われることです。

 小泉改革が始まったころは改革にともなって生じる影の部分の対策として、セイフティーネットの構築や、社会で働く女性のための託児所などの福祉施設も取り組むべきだと言う話も出ていました。
 しかも事実は小泉人気と、経済・金融の実権を握った竹中さんの小さな政府、歳出削減の勢いに押されて、小泉改革の影の部分を補完すべき他の省庁が歳出削減路線を突っ走ってしまいました
 例えば、三位一体と言う地方改革も、実際は地方への交付金の減額だけに終わり→地方の疲弊となった他、年金などの社会福祉・医療・介護体制の崩壊などなど今抱える大きな問題に繋がりました。
 次の世代を育てるべき教育予算さえ削られてしまいました。

[世の風潮に流される企業の経営者]
 小泉改革のもう一つの問題は世の風潮に流される(凡庸な?)企業な経営者です。
 小泉さんの米国一辺倒政策、年次改革要望書に従った所謂グローバル化の波に呑み込まれ、日本の文化や考え方に合わないやり方が導入されてきました。
 「金が全て」とか「企業は株主のもの」の考え、長期的視野に基づく経営より短期的な利益の追求、チームワークを捨て(従業員の過労死や自殺の増加をもたらした)成果主義を導入、金融重視に伴う技術軽視の傾向などなどで、日本企業の強みとしたところが次第に無くなってきました。
 その一つの例が経営者にとって便利な派遣者労働法の制定とその改悪です。
 企業の競争力強化で一番手っとり早いのは、生産能力の向上です。
 不景気の際は安い経費でいつでも切れる派遣社員が導入できます。
 後は生産設備を次の景気回復なで遊ばせる問題が残るだけです。
 だから生産計画もつい甘くなり、長期的な視野の経営より短期利益の追求のためについ甘い工場拡張に走りやすくなります。
 今度の米国初の金融・経済危機で大量の解雇をした企業の中には、誰でもが良く考えれば直ぐ判るおかしくなった米国経済の不安に関わらず、放漫な生産拡大をした企業経営者の責任は無かったのでしょうか。
 それとも今度大量解雇した会社にとっては、今回の危機は完全な不可抗力だったと言うのでしょうか。
 雇用問題についても、今、労働者派遣法の見直しが言われていますが、筋論から言えば企業の経営者が企業の社会的な責任感を持っていれば、経営について長期的な視野をもっていればその必要もないのに、見直しをしなければならないのは、プライドのある企業経営者に取っては恥ずかしいことだと思います。

[日本流の経営と雇用問題]
 竹中さん金子さんの激しい議論の後、丹羽宇一郎さんの登場となりました。
 丹羽さんの発言の中に、「企業は株主、従業員と地域のもの」、「企業の競争力の基本はチームワーク」、「企業は儲けだけでなく社会の為に存在する」など昔ながらの日本流の考え方のフレーズが出て来ました。
 丹羽さんの傘下の企業では優秀な非正規労働者を正規社員として採用しているそうです。
 丹羽さんは今の企業経営者で「企業の社会責任」を考えいない経営者はいるかも知れないが、ごく少数だと言っていましたが、他の企業の経営者に遠慮しての発言です。
 今回の大量解雇で派遣先の企業の「生産削減を決めただけで、解雇したのは請負・派遣会社だ。政府は早く景気回復対策を講じ、セイフティネットを整備すべきだ」などの発言を見れば、企業の社会責任を考えてるいる経営者はきわめて少ないような気がします。
 丹羽さんは今後の景気回復について、内需拡大が言われているが、少子化のために国内市場の成長は望めないこと、今までの米国一辺倒でなくて中国・インドなどのアジアの市場を日本の国内市場と考えるべきだと言っていましたが大賛成です。
参照:中国の金融・経済の危機と日本 
 

[企業経営者へ]
 私は企業経営者は日本のために、
・(外国流のやり方の良い所を取り入れても)従来からの日本流の経営の良い所を忘れないこと
・かってのようなぶれない企業の理念をもつこと
・世の風潮に流されないこと
についてもう一度考えとて欲しいと思います。

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雇用問題と企業の責任

2009-01-10 15:53:15 | 企業経営

 今回の製造企業からの大量解雇は大きな社会問題になっており、野党側は国会で政府・与党の責任を追求しています。
 これに対して大企業側は当初、生産削減を決めただけで解雇したのは請負会社や派遣会社だと言い、経団連は景気回復が先決だと他人事のように言い、解雇者のケアは政府の責任と言わんばかりの態度でした。
 そして事態の深刻化に伴いてやっとワーク・シェアリングも考えねばならないと言い始めています。

 日本より経済状況が悪いと言うEUでも操短や一時的な休業まであるそうですが、今回の日本のような素早い大量解雇はないそうです。
 その理由は労働者派遣法の制定と株主からの経営者責任追求への対応に神経質になっている為だそうですが、それにしても労働者派遣法の何とも企業にとって便利な法律なんでしょう。

[労働者派遣法の企業側のメリット・デメリット]
 Wikipediaの労働者派遣事業 
の記述によると、
メリット
・派遣社員への給与を、固定費としてではなく変動費として計上することが可能。
・企業が派遣元へ支払う金銭は消費税法上「課税仕入れ」となる。その結果国などに納める消費税等を安く済ませることができる。
・労働力を必要な時必要な分だけ、確保する事が容易。
デメリット
・派遣元企業のマージンが大きい場合には、派遣労働契約が長期化すると長い目で見て高コストになる。

と書いてありますがれのすが、デメリツトの記述も実際は派遣元企業間の競争や派遣先企業との力関係で余程の例外を除いて、派遣元企業がマージンが大きく取り過ぎると仕事を失うことを意味します。
 詰まり労働者派遣法は企業にとって良い事ばかりです。

[私の考える企業側のデメリット]
 然し考えて見ますと、企業にも上記以外にデメリットがあります。
・放漫経営に繋がり安い
 それは労働者派遣法が余りにも便利が良過ぎて、経営が放漫になりリスク管理がおろそかになる事です。
 つまり企業の競争力強化のために、生産を拡大を続け、需要が落ちれば非正規社員を切れば済むと言う安易な考え浮かび安いと思います。
 これがもし労働組合がしっかりしている正規従業員の増員とすれば、生産の拡大にさいして、もつと慎重になったはずだと思います。(*注記)
 今回の大量解雇の原因となった米国発の金融・経済危機も消費に頼り過ぎ、怪しげな住宅バブルに支えられた米国経済など、素人の私でも判ることに対して米国への輸出に頼る製造業が生産縮小など何ら手を打たなかったのも、いつでも非正規社員の首を切れる便利な労働者派遣法に一因があったかも知れません。

・ロボット扱いにする貴重な人材
 それと何時も書く事ですが、資源として人材しかない日本、技術しか頼るしか無い日本で、幾ら非正規社員と言っても単なるロボット扱いにして、その潜在能力を発揮させないなど勿体ないと思うのですが。

[企業の社会責任]
 日本政府は大企業の成長を優先し、その波及効果で日本全体の経済発展を基本政策としてきたそうです。
 労働者派遣法もその流れで企業側の申し入れに従って作ったものだと思います。
 それで日本の企業も何とか競争力を保ち、それなりの発展もしてきました。
 企業はそれで日本に貢献したと収まっていて良いのでしょうか。
 一般の人達から見れば、非正規社員の犠牲の元で企業が発展してきたのです。
 そして企業の競争力確保のために労働者派遣法を政府に作って貰い、今になって首を切った人達をケアするのも政府の責任だと言うのは、まさに「おんぶにだっこ」としか言えません。
 企業も苦しいでしょうが、金を出し合って今回の大量解雇された人達を助けあう資金の創設など出来るとがいろいろあると思います。
 そして、それによりいくらかでも企業の社会責任を果たすべきだと思うのですが。

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*注記:大分キャノンの違法行為
  そう言えば国会で民主党の枝野さんが、経団連の会長の御手洗冨士夫さんのお膝元の大分キャノンで、非正規社員を大量解雇する一方期間工の採用を始め、しかもその条件に労働組合に入らない事を入れたとして法律違反だと追求していました。、
 優れた識見を持ち世間の人達からも尊敬されていた土光 敏夫さんなどに比べると最近の経団連会長も随分落ちたものですね。