長野は日本一の長寿県。りんごの産地でもある。
毎年、長野高山村のリンゴ農家から、注文した「完熟の新鮮なリンゴ」が送られてくる。最初は「つがる」。続いて「信濃フルーツ」、「千秋」、「王林」、「ふじ」と、そのリンゴ農家で栽培されたリンゴが次々と送られてくる。
人吉にいたころだから30年以上ほど前のこと。東京に住んでいた従妹が「お中元」に送ってくれた一箱のリンゴ。そのおいしかったこと、今も忘れられない。あまりのおいしさに、発送元のリンゴ農家高山村の山嵜様にリンゴの追加をお願いした。
それ以来、特に注文の手続きをしなくても、リンゴを送っていただくルールができ上がった。高山村の山嵜様とはお会いしたこともない。手紙だけのお付き合いだが、長い間に心から深いお付き合いができるようになっていた。
山嵜様のお年も、お顔も、家族のこともまったく知らない。でも電話や手紙だけのきさくなお友達に変わりはない。長いお付き合いだったが、先日、突然お電話をいただいた。
「遅くなりましたがリンゴが送れなくなりました。主人は病気で入院中、自分も足腰を痛め作業ができない。他県の方にリンゴ園を譲ることになりました。」
晴天の霹靂といおうか。考えるとお付き合いしてから30年以上。お互いが年を取ったことをそのお電話で初めて気付いた。歳は取りたくないものだとつくづく思う。お互いに、あとわずかとなった残りの人生をどのように過ごすか、課題がまた一つ増えたようだ。