年始めの食事だけは、形に拘りたい気分である。
団塊世代の幼少期は、未だに食料難の色が濃かったような気がする
1個の卵を兄弟3人で分け合って食べた思い出がある。
良く撹拌しないと年の順で先に取った兄貴に多く入るからと、兄弟ゲンカの発端になったものである。
そんな日常の食卓風景が、元日の朝だけは違っていた。
新調した四つ身の着物を着て、銘々の食器に盛られた煮豆やガメ煮、お雑煮、茶碗蒸し等のご馳走が並ぶ食卓に着くのである。
他所行ききの羽織を着た父親が威儀を正して、おめでとうの言葉を発して一年の始まりを語りながら、1人一人にポチ袋を手渡してくれたものである。
お袋さんの手作りのがめ煮や煮豆の美味しかったこと。
65年前の遠い昔の味覚が蘇る75回目の元旦の朝である。
今は、後期高齢、前期高齢夫婦の二人食卓である。