大冒険? いえいえ単なる脱走です。
脱走と言っても別にキーは逃げようとしたわけじゃない。猫が外に興味を持つのは仕方のないこと。これは言うまでもなく保護者の過失です。それにしても何? このタイトル。ええ、そうなんです。確かに1年前の脱走のとき、自分は自責の念と悲壮感に溢れてました。シリーズ「ノラと家猫と」の記述はホント、情けない限りです。でも今回は同じ脱走、同じ過失なのに、1年前のときとは自覚できるほど心境が違いました。
前回との決定的な違いはキーが必ず帰って来るという自信、いや信頼です。この1年の間にそれだけの信頼関係を培っていたのか、あるいは保護者(自分)の成長(?)なのかはわかりません。いずれにしても、対応さえ間違えなければキーは必ず帰って来ると確信していました。もっとも正直なところ、時間が経つにつれて自信が揺らぎつつはあった。でもキーはこっちの気持ちが折れる前に、自ら帰還したのです。
今回は自分が冷静だった分、クウの不安を察する余裕があった。「ツインズ」として度々紹介してきたように、キーとクウは切っても切れない仲。しかもどちらかと言うと、クウの方がキーに依存していたのです。日頃から、相手が1時間も見えなければ互いに探し回る。猫だから思わぬところで寝入ったりするわけですが、自分が探されているのに返事もしない。それでも、いつの間にか合流しているんですね。
見ているだけで癒され通しの「ツインズ」です
そのキーがいなくなった。前々回の記事を書いた翌日の晩のことです。珍しく夜の19時頃に新顔ちゃんが来たので、勝手口からご飯を出した。猫たちはリビングや2階にいることを確認。それだけ離れていればまず大丈夫、のはずだった。その時はちょっと前に来た顔白くんの残りを片付けようと思ったら少しこぼれていたので、勝手口から身を乗り出して集めたのです。
気付いたらキーが自分の横にいて外を眺めていた。ビビリのキーにしては思いがけない行動でした。慌てて空いた左手でキーを止めようとしたが、それが逆にキーを驚かせてしまった。キーは左手を掻い潜って勢いよく外に飛び出し、あっという間に夜の闇へと消えた。慌ててドアを閉めて、再び開けて様子を伺うと新顔ちゃんも消えていた。
途端に激しい後悔。自分の愚かさを嘆きました。でも何故か冷静だった。キーがそのうち戻って来ると思えたのです。むしろ新顔ちゃんに申し訳なかったなと。クウは、リビングにセットされた寝床のひとつで爆睡中でした。
勝手口の扉を少し開けて様子を伺っていると、顔白くんがまたやって来た。顔白くんはなかなか帰らず、40分くらいしてようやく消えた。が、間髪入れずに黄白くんが現れた。最近は殆ど見ることがなかった珍しい来訪でした。どうなってるんだ? 黄白くんは好戦的なのでちょっとまずい。彼は結局2時間近くも居座って、カリカリを少しあげて帰ってもらった。
それからトイレ砂を家の周りに置いて、キーの好きな食べ物も置いた。置き餌はその後頻繁に消費されたが、どうやら顔白くんが食べているようだった。そのうち、近くで短い猫の威嚇声が。キーか顔白が黄白に追われたように思えた。その頃、クウはもう起きていて何か落ち着きがなく、盛んに勝手口(の換気口)から外の気配を伺った。いやクウだけじゃない、リンもニャーもちび太も、盛んに外の様子を伺った。キーが外にいることがわかっているようだった。
猫たちは代わる代わる外を眺めた
(上からクウ、リン、ニャー右とちび太左)
猫たちの様子を見ていれば、キーが戻ってきたかどうかわかる。2、3時間で戻るという当ては外れたけど、まあ時間の問題だくらいには思っていた。その晩はリビングの掃き出し窓を少し開け網戸を通して外気と触れられるようにした。1年前のとき、キーは外猫のいた勝手口を避けてリビングから戻って来たからだ。猫たちは、交代でリビングと勝手口から外の様子を伺った。
リビング窓の隙間から外を見回すクウ(右はシロキ)
それから「大脱走」や「ノラと家猫と」のカテゴリーにある記事を何度も読み返した。あのとき、キーは24時間後に帰還したけどクウはまる4日間消息すらつかめなかったのです。それでも帰って来た。キーも必ず帰ってくる。焦らずに待とう。自分は徹夜しました。妻や他の猫は寝に入ったけど、クウはリビング窓と勝手口を交互に回って外を見続けた。夜が白みだした頃、前例に倣ってキーの捜索をしたが気配すら確認できなかった。キーを見つけるなんてとても無理そうだったし、むしろキーが戻って来たときに自分がいなければまずい。そうはわかっていても気が落ち着かず、結局その日はキーの捜索を7回も行ったのです。
クウはその日もリビングや勝手口からずっと外を見続けた。途中ご飯と少し寝たようだけど、殆どこの保護者と行動を共にした。クウは珍しく自ら保護者の方に何度も寄って来た。そして大きな目で人の顔をじっと見る。何だか責められているようにも思えたが、クウの表情はそうではなかった。困ったときの神頼み、いや保護者頼み。クウは藁をもつかむ気持ちで、この保護者に救いを求めているように見えたのです。リン一家を引き離すなんてできない。そう書いたのはつい先日の記事でした。まさかこんな形でツインズが離れ離れになるなんて・・・。
その日1日、クウは外を見続けた(上から未明、昼、晩)
キーは日暮れになっても現れなかった。その日に限って、暗くなってもガタガタと庭仕事をしている裏のB宅が恨めしかった。妻が帰宅した直ぐ後の19時半頃、勝手口から外を見ていたちび太が反応した。直ぐにニャーとクウが駆け寄る。自分も慌てて近付くと、外でキーの声がした。とてもか細くて、とても弱々しい声だったけど、間違いなくあの甲高いキーの声だった。見ると、風呂場の前あたりでキーがちょこんと座ってこっちを見ていた。24時間ぶりのキーの姿でした。
所在がわかれば元気100倍。それからはドア開けキーのお迎え作戦を何度も繰り返したが、怯えて慎重になっているキーはなかなか入って来ない。キーを待てずにドアを大きく開けて逆に脅かしたり、身体半分中に入ったところで大きな音をたてて逃げられたり、顔白くんが現れたり、突然スコールのような大雨が降り出したり、極めつけは廊下側のドアを開けたちび太が外に出ちゃったり(このときは妻がすぐに外に出て抱き上げた)、今にして思えば漫画のようなバタバタ劇を繰り返した。結局中の猫たちをそれぞれの部屋に閉じ込めて完全ドア開け作戦に切り替えると、キーは間もなく家の中に入って来たのでした。
こうしてキーの大冒険は終わりました。いや、冒険と言っても近くでじっとしていただけかもしれない。キーは戻った後も一晩は怯え声でした。今回は手厚いお迎えをしたのはちび太だけ。他の猫たちはいつもと変わらなかった。クウも、キーと再会した途端にずっと一緒だったような顔になりました。
キー帰還の翌日、何事もなかったかのように過ごすツインズ
脱走と言っても別にキーは逃げようとしたわけじゃない。猫が外に興味を持つのは仕方のないこと。これは言うまでもなく保護者の過失です。それにしても何? このタイトル。ええ、そうなんです。確かに1年前の脱走のとき、自分は自責の念と悲壮感に溢れてました。シリーズ「ノラと家猫と」の記述はホント、情けない限りです。でも今回は同じ脱走、同じ過失なのに、1年前のときとは自覚できるほど心境が違いました。
前回との決定的な違いはキーが必ず帰って来るという自信、いや信頼です。この1年の間にそれだけの信頼関係を培っていたのか、あるいは保護者(自分)の成長(?)なのかはわかりません。いずれにしても、対応さえ間違えなければキーは必ず帰って来ると確信していました。もっとも正直なところ、時間が経つにつれて自信が揺らぎつつはあった。でもキーはこっちの気持ちが折れる前に、自ら帰還したのです。
今回は自分が冷静だった分、クウの不安を察する余裕があった。「ツインズ」として度々紹介してきたように、キーとクウは切っても切れない仲。しかもどちらかと言うと、クウの方がキーに依存していたのです。日頃から、相手が1時間も見えなければ互いに探し回る。猫だから思わぬところで寝入ったりするわけですが、自分が探されているのに返事もしない。それでも、いつの間にか合流しているんですね。
見ているだけで癒され通しの「ツインズ」です
そのキーがいなくなった。前々回の記事を書いた翌日の晩のことです。珍しく夜の19時頃に新顔ちゃんが来たので、勝手口からご飯を出した。猫たちはリビングや2階にいることを確認。それだけ離れていればまず大丈夫、のはずだった。その時はちょっと前に来た顔白くんの残りを片付けようと思ったら少しこぼれていたので、勝手口から身を乗り出して集めたのです。
気付いたらキーが自分の横にいて外を眺めていた。ビビリのキーにしては思いがけない行動でした。慌てて空いた左手でキーを止めようとしたが、それが逆にキーを驚かせてしまった。キーは左手を掻い潜って勢いよく外に飛び出し、あっという間に夜の闇へと消えた。慌ててドアを閉めて、再び開けて様子を伺うと新顔ちゃんも消えていた。
途端に激しい後悔。自分の愚かさを嘆きました。でも何故か冷静だった。キーがそのうち戻って来ると思えたのです。むしろ新顔ちゃんに申し訳なかったなと。クウは、リビングにセットされた寝床のひとつで爆睡中でした。
勝手口の扉を少し開けて様子を伺っていると、顔白くんがまたやって来た。顔白くんはなかなか帰らず、40分くらいしてようやく消えた。が、間髪入れずに黄白くんが現れた。最近は殆ど見ることがなかった珍しい来訪でした。どうなってるんだ? 黄白くんは好戦的なのでちょっとまずい。彼は結局2時間近くも居座って、カリカリを少しあげて帰ってもらった。
それからトイレ砂を家の周りに置いて、キーの好きな食べ物も置いた。置き餌はその後頻繁に消費されたが、どうやら顔白くんが食べているようだった。そのうち、近くで短い猫の威嚇声が。キーか顔白が黄白に追われたように思えた。その頃、クウはもう起きていて何か落ち着きがなく、盛んに勝手口(の換気口)から外の気配を伺った。いやクウだけじゃない、リンもニャーもちび太も、盛んに外の様子を伺った。キーが外にいることがわかっているようだった。
猫たちは代わる代わる外を眺めた
(上からクウ、リン、ニャー右とちび太左)
猫たちの様子を見ていれば、キーが戻ってきたかどうかわかる。2、3時間で戻るという当ては外れたけど、まあ時間の問題だくらいには思っていた。その晩はリビングの掃き出し窓を少し開け網戸を通して外気と触れられるようにした。1年前のとき、キーは外猫のいた勝手口を避けてリビングから戻って来たからだ。猫たちは、交代でリビングと勝手口から外の様子を伺った。
リビング窓の隙間から外を見回すクウ(右はシロキ)
それから「大脱走」や「ノラと家猫と」のカテゴリーにある記事を何度も読み返した。あのとき、キーは24時間後に帰還したけどクウはまる4日間消息すらつかめなかったのです。それでも帰って来た。キーも必ず帰ってくる。焦らずに待とう。自分は徹夜しました。妻や他の猫は寝に入ったけど、クウはリビング窓と勝手口を交互に回って外を見続けた。夜が白みだした頃、前例に倣ってキーの捜索をしたが気配すら確認できなかった。キーを見つけるなんてとても無理そうだったし、むしろキーが戻って来たときに自分がいなければまずい。そうはわかっていても気が落ち着かず、結局その日はキーの捜索を7回も行ったのです。
クウはその日もリビングや勝手口からずっと外を見続けた。途中ご飯と少し寝たようだけど、殆どこの保護者と行動を共にした。クウは珍しく自ら保護者の方に何度も寄って来た。そして大きな目で人の顔をじっと見る。何だか責められているようにも思えたが、クウの表情はそうではなかった。困ったときの神頼み、いや保護者頼み。クウは藁をもつかむ気持ちで、この保護者に救いを求めているように見えたのです。リン一家を引き離すなんてできない。そう書いたのはつい先日の記事でした。まさかこんな形でツインズが離れ離れになるなんて・・・。
その日1日、クウは外を見続けた(上から未明、昼、晩)
キーは日暮れになっても現れなかった。その日に限って、暗くなってもガタガタと庭仕事をしている裏のB宅が恨めしかった。妻が帰宅した直ぐ後の19時半頃、勝手口から外を見ていたちび太が反応した。直ぐにニャーとクウが駆け寄る。自分も慌てて近付くと、外でキーの声がした。とてもか細くて、とても弱々しい声だったけど、間違いなくあの甲高いキーの声だった。見ると、風呂場の前あたりでキーがちょこんと座ってこっちを見ていた。24時間ぶりのキーの姿でした。
所在がわかれば元気100倍。それからはドア開けキーのお迎え作戦を何度も繰り返したが、怯えて慎重になっているキーはなかなか入って来ない。キーを待てずにドアを大きく開けて逆に脅かしたり、身体半分中に入ったところで大きな音をたてて逃げられたり、顔白くんが現れたり、突然スコールのような大雨が降り出したり、極めつけは廊下側のドアを開けたちび太が外に出ちゃったり(このときは妻がすぐに外に出て抱き上げた)、今にして思えば漫画のようなバタバタ劇を繰り返した。結局中の猫たちをそれぞれの部屋に閉じ込めて完全ドア開け作戦に切り替えると、キーは間もなく家の中に入って来たのでした。
こうしてキーの大冒険は終わりました。いや、冒険と言っても近くでじっとしていただけかもしれない。キーは戻った後も一晩は怯え声でした。今回は手厚いお迎えをしたのはちび太だけ。他の猫たちはいつもと変わらなかった。クウも、キーと再会した途端にずっと一緒だったような顔になりました。
キー帰還の翌日、何事もなかったかのように過ごすツインズ