シンポジウム「エノガストロノミアとテリトーリオ - 日本とイタリアの農業文化の発展 - 」をzoomで聞きました(2020.10.10)@法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
毎年11月になるとイタリア文化会館で「イタリア料理週間」が開催され 食文化のセミナーや試食・本の紹介セミナーや映画等があり 毎日のように足を運んでいました...懐かしい限りです ずっと行っていませんイタリア文化会館(涙)
なので日伊協会のHPで見つけたこのオンラインシンポジウムに参加しました:
エノガストロノミアとテリトーリオ - 日本とイタリアの農業文化の発展 -
エノガストロノミアとは ワインを中心とした美食術 テリトーリオとは 都市と農村の繋がりを包括的に捉え直す概念のことです
イタリアの農業・食品産業のありようは 生産活動以外にも 環境保護や食糧問題などの多機能性を持つことから 日本社会の在り方を考える上でより重要になってきています
まず最初に 「山梨のワイン産業はどう発展してきたか」というテーマで 「美味しんぼ」(第80巻)にも登場された山梨の観光推進機構理事長の仲田氏より 山梨ワインの歴史を紹介していただきました
日本で一番ワイナリーが多いのは山梨(81) 長野(35) 北海道(35)…と続き合計303カ所
山梨の文化的景観は 世界農業遺産に登録申請中とのこと
2000年に 和食と相性が合うワインとして認められました
今もワインリゾート構想等様々な試みが続けられています
実ははこのあと うちにあった美味しんぼ第80巻を読み返してしまいました( *´艸`)
* * *
次に 司会の木村先生から 「イタリア農業の底力: アミアータのテリトーリオ」とのテーマでお話いただきました
50年代は食糧自給もままならず(62%) 農業人口の流出に悩んでいたイタリアですが 1980年代からは 農業以外の活動が農村で活発化してゆきました
トスカーナ州グロッセート県のフランチジェーナ街道とアミアータ山のテリトーリオ(都市と農村を結ぶ社会・文化・経済的なまとまり)の試みについて紹介していただきました
19世紀末には水銀鉱山が発達し 1981年に閉山となってからは鉱山産業考古学公園や博物館となり 一方で山栗が採れます
栗は「貧しい人のパン」とも呼ばれ 栗の粉は小麦粉に代わる大切なものでした
鉱山は消えましたが栗は残り トスカーナの栗栽培強化プロジェクトにより 栗の粉のカスタニャッチョ等の特産品や栗のお祭り等 様々な試みがなされてゆきました
生きるための農業から 高付加価値産品を生み出す農業へと変わりました
都市と農村のネットワークが生むイノベーションが次々と生み出されてゆき 既存資源を用いたテリトーリオ価値の回復が進められてゆきました
セッジャーノ(sessiano)のオリーブオイルの試みも紹介していただきました
世界遺産となったオルチャ渓谷に後れを取りましたが ここではセッジャーノのオリーブオイルのブランド化等が進められました
Amiata Oleosという 統合型農業と食品のサプライチェーンプロジェクトです
知恵の根(radici intelligenti)という異業種コラボレーションの中で オリーブの木の根っこを貯水槽(cisterna)に吊るす試みが興味深かったです
また 分散型博物館(museo difuso)も 村全体が博物館という感じですね
アミアータ山のオリーブの黄金の盆地(Monte Amiata Oliveti Conca Oro)という景勝地では 圧搾の様子を見せながらコース料理をふるまったりなど…
次の事例です 生物多様性については 絶滅危惧種の乳でチーズを生産する「希少種のチーズ(Formaggi di Razza)」
そして マレンマ牛 セルヴァの玉ねぎ アミアータの羊やロバなどをご紹介頂きました
体験型農村ツーリズムもあります
トランスマンツァ(移牧/無形文化遺産)も非効率な牧畜として行われていますが イタリアの条件不利地域の酪農は CAP(共通農業政策)の補助金なくしては成り立たないそうです
イタリアでは テリトーリオの関連主体が協力して テリトーリオに埋め込まれた経済活動を実践し 一定の効果を上げています
* * *
次に 陣内先生による「文化的景観を活かしたテリトーリオの再生」のお話をいただきました
イタリアと日本は似ているというお話から centro storicoから territorio storicoへ とのお話
イタリアでは1980年代に それまでは近代化の時代に遅れていたものとされていた田園の再評価がなされ 最大のアドバンテージとなります
1985年に景観法が 1985年にアグリツーリズム法が そして1986年にスローフード運動が生まれました 2004年にオルチャ渓谷が世界遺産となり 2000年代は南イタリアが元気になります
Centro storicoの保存から再生へとつながってゆくのですね
ルーラルツーリズム スローフード 地産地消 キロメトロゼロ cucina povera エノガストロノミアのことなど…
それにしても オルチャ渓谷は昔 人口流出に悩み 産業廃棄物候補にもなったことがあったとはショック…
住民が反対し 逆に自然公園を提案して攻めたのだそうです それが世界遺産に!!
プーリア州のValle d’Itriaの田園風景 ロコロトンドのマッセリア(農場を改装した宿泊施設) オストゥーニの分散型レストラン チステルニーノの路上レストラン…
観光もまだなかった頃から 典型的な袋小路を歴史的都市空間の魅力を引き出す素敵な演出でもって 洗練された旧市街へと変身させた写真の数々にうっとり...💛
中でも廃墟から蘇ったトゥルッリの集落を改装した宿泊施設は魅力的でしたね💕
地域の唯一無二の資源を生かし また食文化は農村と都市を結びつけるものだ との熱い言葉がとても印象的でした
* * *
次のクロストークでは 長本先生のクチーナ・ポベラ(庶民料理)とクチーナ・リッカ(貴族料理/記録に残る)のお話 何度聞いても感動的です(^.^)
それぞれの食材の起源と時代 歴史と郷土にまつわるお話を頂きました イタリア人の自己肯定感はすごい とのポジティブなお話も忘れられません
陣内先生の 壊して作る開発ではなく修復型まちづくりの大切さを とのお話も心に残り 「小さなまちの底力」「イタリアの街角から スローシティを歩く」の著書を読んでみたくなり 早速読み始めました(^.^)
合計3時間もあったのに 最後のクロストークは5名もいらして 時間が短く感じてしまいました
すばらしいオンラインシンポジウムを開催してくださいました 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター様に心よりお礼申し上げます
昨年まではイタリア文化会館に出向いて イタリア料理週間での様々なシンポジウムに参加したり試食したりしていましたが オンラインであってもこうして貴重なお話が聞けて 本当に嬉しいです
シンポジウムのお知らせは こちら
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毎年11月になるとイタリア文化会館で「イタリア料理週間」が開催され 食文化のセミナーや試食・本の紹介セミナーや映画等があり 毎日のように足を運んでいました...懐かしい限りです ずっと行っていませんイタリア文化会館(涙)
なので日伊協会のHPで見つけたこのオンラインシンポジウムに参加しました:
エノガストロノミアとテリトーリオ - 日本とイタリアの農業文化の発展 -
エノガストロノミアとは ワインを中心とした美食術 テリトーリオとは 都市と農村の繋がりを包括的に捉え直す概念のことです
イタリアの農業・食品産業のありようは 生産活動以外にも 環境保護や食糧問題などの多機能性を持つことから 日本社会の在り方を考える上でより重要になってきています
まず最初に 「山梨のワイン産業はどう発展してきたか」というテーマで 「美味しんぼ」(第80巻)にも登場された山梨の観光推進機構理事長の仲田氏より 山梨ワインの歴史を紹介していただきました
日本で一番ワイナリーが多いのは山梨(81) 長野(35) 北海道(35)…と続き合計303カ所
山梨の文化的景観は 世界農業遺産に登録申請中とのこと
2000年に 和食と相性が合うワインとして認められました
今もワインリゾート構想等様々な試みが続けられています
実ははこのあと うちにあった美味しんぼ第80巻を読み返してしまいました( *´艸`)
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次に 司会の木村先生から 「イタリア農業の底力: アミアータのテリトーリオ」とのテーマでお話いただきました
50年代は食糧自給もままならず(62%) 農業人口の流出に悩んでいたイタリアですが 1980年代からは 農業以外の活動が農村で活発化してゆきました
トスカーナ州グロッセート県のフランチジェーナ街道とアミアータ山のテリトーリオ(都市と農村を結ぶ社会・文化・経済的なまとまり)の試みについて紹介していただきました
19世紀末には水銀鉱山が発達し 1981年に閉山となってからは鉱山産業考古学公園や博物館となり 一方で山栗が採れます
栗は「貧しい人のパン」とも呼ばれ 栗の粉は小麦粉に代わる大切なものでした
鉱山は消えましたが栗は残り トスカーナの栗栽培強化プロジェクトにより 栗の粉のカスタニャッチョ等の特産品や栗のお祭り等 様々な試みがなされてゆきました
生きるための農業から 高付加価値産品を生み出す農業へと変わりました
都市と農村のネットワークが生むイノベーションが次々と生み出されてゆき 既存資源を用いたテリトーリオ価値の回復が進められてゆきました
セッジャーノ(sessiano)のオリーブオイルの試みも紹介していただきました
世界遺産となったオルチャ渓谷に後れを取りましたが ここではセッジャーノのオリーブオイルのブランド化等が進められました
Amiata Oleosという 統合型農業と食品のサプライチェーンプロジェクトです
知恵の根(radici intelligenti)という異業種コラボレーションの中で オリーブの木の根っこを貯水槽(cisterna)に吊るす試みが興味深かったです
また 分散型博物館(museo difuso)も 村全体が博物館という感じですね
アミアータ山のオリーブの黄金の盆地(Monte Amiata Oliveti Conca Oro)という景勝地では 圧搾の様子を見せながらコース料理をふるまったりなど…
次の事例です 生物多様性については 絶滅危惧種の乳でチーズを生産する「希少種のチーズ(Formaggi di Razza)」
そして マレンマ牛 セルヴァの玉ねぎ アミアータの羊やロバなどをご紹介頂きました
体験型農村ツーリズムもあります
トランスマンツァ(移牧/無形文化遺産)も非効率な牧畜として行われていますが イタリアの条件不利地域の酪農は CAP(共通農業政策)の補助金なくしては成り立たないそうです
イタリアでは テリトーリオの関連主体が協力して テリトーリオに埋め込まれた経済活動を実践し 一定の効果を上げています
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次に 陣内先生による「文化的景観を活かしたテリトーリオの再生」のお話をいただきました
イタリアと日本は似ているというお話から centro storicoから territorio storicoへ とのお話
イタリアでは1980年代に それまでは近代化の時代に遅れていたものとされていた田園の再評価がなされ 最大のアドバンテージとなります
1985年に景観法が 1985年にアグリツーリズム法が そして1986年にスローフード運動が生まれました 2004年にオルチャ渓谷が世界遺産となり 2000年代は南イタリアが元気になります
Centro storicoの保存から再生へとつながってゆくのですね
ルーラルツーリズム スローフード 地産地消 キロメトロゼロ cucina povera エノガストロノミアのことなど…
それにしても オルチャ渓谷は昔 人口流出に悩み 産業廃棄物候補にもなったことがあったとはショック…
住民が反対し 逆に自然公園を提案して攻めたのだそうです それが世界遺産に!!
プーリア州のValle d’Itriaの田園風景 ロコロトンドのマッセリア(農場を改装した宿泊施設) オストゥーニの分散型レストラン チステルニーノの路上レストラン…
観光もまだなかった頃から 典型的な袋小路を歴史的都市空間の魅力を引き出す素敵な演出でもって 洗練された旧市街へと変身させた写真の数々にうっとり...💛
中でも廃墟から蘇ったトゥルッリの集落を改装した宿泊施設は魅力的でしたね💕
地域の唯一無二の資源を生かし また食文化は農村と都市を結びつけるものだ との熱い言葉がとても印象的でした
* * *
次のクロストークでは 長本先生のクチーナ・ポベラ(庶民料理)とクチーナ・リッカ(貴族料理/記録に残る)のお話 何度聞いても感動的です(^.^)
それぞれの食材の起源と時代 歴史と郷土にまつわるお話を頂きました イタリア人の自己肯定感はすごい とのポジティブなお話も忘れられません
陣内先生の 壊して作る開発ではなく修復型まちづくりの大切さを とのお話も心に残り 「小さなまちの底力」「イタリアの街角から スローシティを歩く」の著書を読んでみたくなり 早速読み始めました(^.^)
合計3時間もあったのに 最後のクロストークは5名もいらして 時間が短く感じてしまいました
すばらしいオンラインシンポジウムを開催してくださいました 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター様に心よりお礼申し上げます
昨年まではイタリア文化会館に出向いて イタリア料理週間での様々なシンポジウムに参加したり試食したりしていましたが オンラインであってもこうして貴重なお話が聞けて 本当に嬉しいです
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