日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

イタリアブックフェアの思い出: 講演会「明治期のイタリア留学 文化受容と語学習得」(4/6)を聞いてきました(2017.3.27~4.9)@イタリア文化会館

2017年05月26日 | イタリアの本・絵本・雑誌
イタリアブックフェアの思い出: 講演会「明治期のイタリア留学 文化受容と語学習得」(4/6)を聞いてきました(2017.3.27~4.9)@イタリア文化会館


イタリアブックフェア2017ですが~ 今年はナント3回行きました(笑)  まずは2日目に行きざっと見て ちょうど探していたテーマで2冊ゲット!! 次は「本の紹介セミナー」を全部聞きとおし さらにこの講演会「明治期のイタリア留学」を聞きました(^_^)v
最近届いた日伊協会の会報には昨年出版されたイタリア関連本のリストがあり 買った本等も含まれていました♪

ブックフェアで展示されていた本のカテゴリーは 言語(いろんなテキストや問題集など) 音楽 料理 建築 地理・紀行 映画その他 歴史 社会 児童図書 文学など...

今回気になった一冊は 「国際比較 若者のキャリア」(新曜社) それとテキストでは Edilingua社の 「L'Italia cultura/storia, arte, geografia, letteratura, musica, cinema, teatre等)のシリーズでしたが こちらは展示のみ... ちょうどイタリア語で読めそうな分量で 日本語で読むと忘れますが(笑) イタリア語でせっせと読むと定着するので できるだけイタリア語で読むようにしてます

次には4月1日に「著者による本の紹介」を聞いて文法書「本気で学ぶ中・上級イタリア語」をゲット!! 詳しくは こちら ←日伊学院で買うとちょっと安いそうです♪

とうとうこの日は 読みたかった「展示のみ」のイタリア語テキストが 手に入れるのが大変そうなので) 早めに行って集中して読んでから 講演を聞いてきました(^_^)v 

      *       *       *


明治期のイタリア留学 文化受容と語学習得』(石井元章著、吉川弘文館)は 1873年から1887年という日伊交流の黎明期に、トリノとヴェネツィアに留学し、文字通り命を懸けて己の道を模索した日本人学生に関する近年の研究をまとめた著作です(日伊交流150周年記念)


明治期の若者がいかに真摯に人生と向き合っていたのかを 講演では語ってくださいました
まずは 12歳でトリノのイタリア国際学院に入学し 未知のイタリア語を習得しながら常にトップを歩み続けた井尻儀三郎について

本当に12才で留学されたそうで 5年間のトリノの留学生活の中で うち4年間はトップの成績を収め 井尻の肖像画が学校に飾られたというエピソードも残っているそうです 
また彼の実家の詳しい研究もなされ(林徳左衛門という三田製糸所を作った人が実父だったかもしれない) 帰国後の情報が見つかっていないことは残念ですね

次に 同じく国際学院に学んだ後に ヴェネツィアの高等商業学校で日本語を教え ヴェネツィア女性マリア・セロッティと結婚 間もなく若くして異郷に斃れた緒方洪庵の第十子 緒方惟直(おがた これなお/1853~1878)について紹介してくださいました

行く前にネットで予備知識を入れておいたのですが 緒方洪庵のご子息惟直のお話がどうも森鴎外の「舞姫」に似ているなぁ~と感じていたら 講演の中で森林太郎(森鴎外)が出てきました!! ビックリ( ゚Д゚) 
惟直とマリア(惟直の死後に困窮)との間に生まれたエウジェニア豊という娘が 母マリアが1890年に亡くなり その後1892年にはとうとう日本に来るのですが その時に出てきました 
森林太郎が惟直の実家に手紙で 娘がいることを知らせ めぐりめぐって来日に結びついたようです


次に アメリカ・パリを経て王立ヴェネツィア美術学校(今のアカデミア美術館)で絵画を学び 当時のヨーロッパ人画家に伍して新しい美術を模索した川村清雄と 同じくヴェネツィア美術学校で彫刻を学び 優秀な成績を上げて帰国後に 東京美術学校(現東京藝術大学)初の洋風彫刻教授となった長沼守敬(もりよし/1857-1942)についてご紹介くださいました

緒方惟直はヴェネツィアのサン・ミケーレ島に葬られたのですが その墓碑を制作したのが ヴェネツィアに留学して日本の西洋彫刻の祖となったその長沼守敬とのことで 写真も見せていただきました 字が間違っていることも 逆に長沼の作であることの証となっているのですね

著者は1995年に川村清雄との出会いがあり ルネサンスとこの研究をつなぐことを志されたとのこと この研究をするに至った著者の履歴もとても興味深いものでした   

会場にはこの方たちの子孫の方も見えられていて 貴重なお話を聞くことが出来ました 


美術史を学び研究するということは こういう風にしてゆくものなんだなぁ...と 文献を探しに現地に行き ヴェネツィアの地方紙Gasettaの数年分の記事すべての中から 該当する日本人の名前や 当時在席していたヴェネツィア美術サークルの記事をくまなく探し 他の文献にあった詳細な金額や絵の名前をぴったり合致させたというエピソードに感じ入りました こうやって丹念に掘り起こしてゆくのだなと...

また 川村のデッサンが どの絵画のどの人物をモデルに いつどこで描かれたのかという研究も 詳細に両方の絵を見せてご説明くださいました 
ひとつ手がかりが見つかると 研究はさらに次へと進んでゆく その手がかりはまるで天啓のように目の前に現れる その瞬間の喜びたるや... そして めでたく論文にはなることのなかった死蔵ファイルが実はとても多いということも伺いました

それはスマホの画面をツーツーなぞるのとは正反対の 地道で深い根気のいる作業なのだなと 昔の文献が残っていることの貴重さ(特に明治時代の大判のパスポートの現物など)を思いました

「どんな些細な事実でも安易な推測を排し、一次資料によって実証しようとする姿勢は、歴史学の範である。留学生の詳細な交友関係や彼らの直面した金銭問題が、こうした資料によって生き生きと浮かび上がっている。」との「週刊読書人」の書評の言葉に感じ入ります

すばらしい講演会を開催してくださいましたイタリア文化会館様にお礼申し上げます

私はここで買った本がきっかけで 色々と調査を進めているところです(^^)/ これも本との出会いですね♡

講演会のお知らせは こちら


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