今日は、意思決定するときの理性と感情の役割についてです。
まず、質問です。
私 が死んだら、フリードリヒに、魂を一万円で売り渡すことを約束します。
もし、あなたがこの下線の部分に、名前をサインすると、僕から一万円をもらえます。
死後の世界はないと思っていれば、気にしないで、サインしてお金をもらえますよね。
しかし、死後の世界があったら、あなたはあの世で僕の奴隷になります。
どうします?契約します?
ところで、意思決定について、脳神経学者であるアントニオ・ダマシオが、ソマティックマーカー説をとなえました。
ソマティック・マーカー仮説は、意思決定は理性だけではなく、感情が重要な役割と果たしているという考え方です。
ダマシオは、脳腫瘍の手術を受けた患者が、感情に関する部分の損傷を受けているときに、変わった行動をすることに気づきました。
それは、日常生活の意思決定が、きちんとできないというものでした。
どの歯磨き粉にするかとか、レストランでどっちのメニューにするとかです。
論理的な脳の部分が、正常に働いているにも関わらずです。
そこで、彼は意思決定には、理性のほかに感情が必要であるとの説をとなえたのです。
一般的に、カーっとなって感情的なっているときに、意思決定するのはダメだと言われます。
しかし、それを真っ向から否定したのです。
感情は重要だと。
たしかに、瞬間的な判断について、感情の役割は否定できませんね。
たとえば、夜道を歩いている時、後ろから尾行されているとします。
恐れという感情が湧き上がり、ビビって心臓がドキドキしますね。
また、何だコイツと怒りがこみ上げてくるかも知れません。
そのとき、感情に従って、戦うか逃げるかの判断をすることになる。
恐れが強いときには逃げ、怒りが強ければ戦う。
このような判断は、原始時代からの古い脳の機能なのです。
だから、初対面で誰かに会った時、背中がゾクッとするとか、不気味な感じがしたとかそういうことが、すごく重要になる。
この人は信じられる人なのかどうか。
もちろん、合理的な思考も重要です。それは忘れてはいけません。
それで最初の質問に戻ります。
合理的な思考の持ち主だったら、黙ってサインして、一万円をもらったほうが良さそうですね。
しかし、なにか嫌な感じがしたら、やめておくのが良さそうです。
実際、相当数の人が、このような契約を断るそうです。
僕は無神論者ですが、サインしません。
僕みたいなのに魂を売り渡すのは、ちょっとなぁと思います。
僕は人使いが荒いですからね。あの世で大変ですよ。