前回の話の続き。
「それじゃ、僕にも誰かいい子を紹介してよ」
僕は逆襲に出た。いろいろ条件をつけて困らせてやろう。むちゃな要求を出そうとしたとたん、彼女はフフフと不敵に笑う。
「わたしはどう?」
「え?」
勝ち誇ったようなまなざしをした彼女を見て、僕は目が点になった。
「だから自己推薦するわ。わたし自身を紹介するのよ。どう?」
「あのさ、僕は君がさっきいった条件にはまったく当てはまらなんだけど。だいいち、イケメンじゃないだろ」
「格好いいと思うわよ」
ゴマをするなら別の人にしてくれと言いたかったけど、やめておいた。
「僕は料理を作ってもらいたいし、家事だってできるだけやって欲しいんだよ」
「それで」
おいおい、都合の悪いところは素通りか?
「その人だけを見るだなんてできないかもよ。僕は本を読む時間と書きものをする時間がほしいんだ。けっこう時間がかかるんだよ。それに、小説を書いているとほかのことはかまっていられなくなるから、彼女のことなんてほったらかしになりがちだし」
「いいわよ。わたしだって、ずっといっしょにいると気づまりだもん」
「さっき言ってたこととぜんぜん違うんだけどさ。君が僕を追いかける気なんてさらさらないんだろ」
「どうかな」
彼女はとぼけてみせる。なんだかずるいなあ。見え透いているからかわいいものなんだけど。
「その気もないくせに、どうして自分を推薦したりするんだよ」
「だって、いろんな人に追いかけられていたほうがいいでしょ」
彼女はアハハとほがらかに笑う。白馬の王子様に取り囲まれた自分の姿を想像して、ルンルン気分になっている。
そりゃ、誰だって、追いかけてくれる人が多かったら気分いいだろうけどねえ。
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第22話として投稿しました。『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/