NJWindow(J)

モルモニズムの情報源、主要な主題を扱うサイト。目次を最新月1日に置きます。カテゴリー、本ブログ左下の検索も利用ください。

豊かな、楽しい「LDS聖研グループ研究会」の報告I

2015-06-24 09:59:15 | モルモン教関連
6月20日(土)午後1時から東京駅八重洲中央口からすぐ近くの会場(東京八重洲ホール)で開かれた「LDS聖研グループ研究会」は、小規模ながら熱心な聴衆が質疑を活発に行ない、あっという間に最後の発表にきてしまった。それも部屋の使用時間を超過しても時間不足という、盛り沢山で興味あふれる勉強の機会であった。


[ケント・ギルバート近著四点]

会は第一部が、戦後70年を迎えて日本が直面する諸問題がテーマで、冒頭にケント・ギルバート氏がゲストスピーカーとして1時間講演した。韓国が戦勝国を名乗っているのは筋違いという話に始まって、日本の真珠湾攻撃、マッカーサーの再評価、慰安婦問題など、たっぷりギルバート節をよどみなく、彼一流の視点から講釈した。所謂右寄りの論調著しいものがあるが、近代史・国際政治に精通し、必ず一次資料に当たってから語るという彼の持論は、タフ(頑強)である。その姿勢は驚くほど日本に肩入れしたもので、政治的姿勢が対極にある私などは当惑気味の日本贔屓(びいき)である。それを分かった上で聞いたこの日の論調は、割合抵抗なく聞くことができた。ギルバート氏は、末日聖徒はもう少し政治や国際関係に関心を持つべきではないか、と語った。その点は同感である。
 質疑である出席者が、「著書や講演で語る目的は何か?」と聞いたのに対し、ギルバート氏は「明らかになった事実を人々に知ってもらうこと」と答えていた。質問者は後で私に、「事実を知らせたいと言ってもその影響を考えてするのが責任ある者の取る態度ではないか」と語っていた。知名度の高い彼が、例えば韓国人を非難する内容を投稿すると少なからぬfacebookの読者がshare したり、同感をクリックしたりして、隣国への反感を増幅させることがあると指摘したのであった。

 次にLDS聖研グループの論客、実吉紹郎兄弟が「日中韓問題について末日聖徒としてどうとらえるべきか」というテーマで話した。リアホナ誌2010年3月号の記事「主の手に守られて」に、日本がムッソリーニ、ヒトラーと並んで侵略国家だったと位置づけられているのを読んで、受け容れられず東京とソルトレークシティに抗議したが、反応がなかった。このアメリカの教会にあって、結局自分の国に関する事柄は、「原則を教えられた後・・(どう対処するかは)それぞれの立場で応用する」こととなる。現状を見れば、日本は日韓から汚名を着せられ、国土を脅かされ、人民を拉致され、多くの不正呼ばわりを浴びせられてはいないだろうか、毅然と対応すべきではないかと日頃の持論を展開した。

 第一部の最後は私沼野治郎が、「可能か?寛容と和解の道」と題して話した。細谷雄一慶大教授(国際政治)がパスカルを引用して、「正義(自国の立場に基づく主張)と力は連動している」、力が伴わなくなった日本が正義を国際社会で語るのはナイーブである、と述べたのを引用し、私は、日本は大国化した中国と共存していく道を選ぶのが取るべき選択肢なのではないか、という見解を述べた。最もよいのは正義と力が結びついていることであれば、正しい者(と考える日本)が強くなるか、強い者(中国)を正しくする(再びパスカルの援用)ことである。そのため、中国の民主化運動家たちを応援するのもひとつの道である。また、日中、日韓関係の改善には、被害を被った側の寛容の精神を期待することになる、との見方を示した。(プレゼンのスクリプト
 途中、論客の立ち位置の図で櫻井よし子氏を高く評価したケント・ギルバートに対し、私が彼女は大の苦手である、と応じて笑いが生じた。ただ、最近はレベルの高い論客間にはしばしば共通の認識が見られたり、お互いに相槌を打ったりする場面が見られることにも触れた。


[論客の立ち位置 沼野作成]

 これまで私が企画してきた、末日聖徒のこの種の研究会で政治がらみのテーマを扱うのは初めてのことで、若干不安もあったが、にこやかに活発に交換する機会となり充足感を覚えている。(なお、出席人数は20名弱であった)。

註(沼野文責)
1
「侵略」(aggression)・・国際法上、ある国家・武装勢力が別の国家・武装勢力に対して、自衛でなく、一方的にその主権・領土や独立を侵すこと。侵攻(invasion)が目的を問わず相手方勢力・領域を攻撃する行動を指すのとは異なり、相手の主権・政治的独立を奪う目的の有無に注目した用語。
Aggression is the use of armed force by a state against the sovereignty, territorial integrity or political independence of another state.
1974 国際連合総会決議 3314、 2010 改正決議採択を参考にしたもの According to UN General Assembly Resolution, Definition of Aggression

2
フェイスブックのLDS聖書研究同好会グループがOff の催しを開いたのは、4年前以来二回目である。2011/12/17 に東京青山の「子供の城」で座談会を開いている。





最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
勉強させていただきました (昼寝ネコ)
2015-06-24 10:48:58
時間の都合で、前半だけの参加でしたが、勉強になりました。政治マターは、なかなか取り扱いが難しいと思いますが、意欲的に取り組まれて貴重な企画だったと思います。お疲れさまでした。
返信する
確かに難しい事柄です (NJ)
2015-06-24 10:57:36
ありがとうございます。お忙しい中、お時間を割いてくださり、感謝いたします。
返信する
道場、参加させていただきましたぁ (たまWEB)
2015-06-25 11:03:15
このさい出血大サービスで、‘論客の立ち位置’のほかに、あと9ヶ、プレゼン(『可能か?寛容と和解の道』)で用いたの、ブログ記事に載せるというのは、いかがなものでしょう?!
せっかく準備されたのですから、広く衆にいきわたるように・・・・
返信する
そうですね (nj)
2015-06-25 13:43:47
ご提案ありがとうございます。そうさせていただこうかと考えています。
返信する
参加できず残念。 (オムナイ)
2015-06-30 15:38:11
ケント・ギルバートさんのお話はサイト上で拝見していました。
興味深い一方、実はここ数ヶ月でロンドン、ニュヨーク、ボストンと出張しておりました。

町並みは丸の内にそっくり。ペリーの強制開国がそれをもたらしたのですからアメリカ人がそれを言うか。。的な気持ちも少しあります(笑)

有益で楽しい会だったのが眼に浮かぶようです。


返信する
そうだったのですか (NJ)
2015-06-30 17:06:43
すごい出張、今は昔。次回(未定ですが)は是非!
返信する
楽しいはないべなぁぁ (たまWEB)
2015-07-01 08:24:12
うぅぅんん、“楽しい”というのはぁ、当たらないでしょうねぇ、心情左派的、たまWEBとしてはぁぁ・・・・

ケントさんは、イラク戦争時も、アメリカ代弁者としてイケイケだったですかぁぁ・・・・ネットで拾うと・・・・

ケント・ギルバート イラク戦争
http://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%20%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89

「ケント・ギルバート氏 自衛官のリスクを主張するのは偽善? 米国のために死ねということだね。  2015/06/05  弁護士猪野 亨のブログ
・・・・イラク戦争のときでしたが、このケント・ギルバート氏は、筑紫哲也さんの番組に出ていたときにこのようなやり取りがありました。
 視聴者から米国はイラクの次はイスラエルに軍事行動を起こすんでしょうねと指摘され、それに対して、ケント・ギルバート氏は、イスラエルは正義だという趣旨の発言をしていて、何だこの人は、単なる米国の国益を代弁しているだけじゃないのと思いました。筑紫さんからもイスラエルも変わらないと思いますけれどねと指摘されても何のその、イスラエルは正しいと言い切る人です。

 今回の件も、要は米国のために、米兵の代わりに日本人が死ねと言っているだけのことです。
 これに便乗するのが日本の極右勢力、ネットウヨクですから、どうにもなりません。
 欺されないようにしましょう。

」     http://inotoru.blog.fc2.com/blog-entry-1360.html

「ケント・ ギルバート始めこいつらって黄色い日本人を戦地で盾に使いたいだけ
」、2ch


『対米依存の起源――アメリカのソフト・パワー戦略』(岩波現代全書)   2015/2 松田 武 (著) )なんていう本、面白そうじゃん・・・・
対米依存の起源
http://search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E5%AF%BE%E7%B1%B3%E4%BE%9D%E5%AD%98%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90


こちらは、飯山一郎さんの、ロシア主導がいいとかって、今や、こういった意見もあるんすよねぇぇ・・・・「2015/06/29(月)  親友・池田 敏君を悼む(いたむ) 春日局の夫君は…
」  http://grnba.com/iiyama/
返信する
ごもっとも (NJ)
2015-07-01 10:00:12
強すぎるほどの刺激が冒頭に置かれたことは否定しません。率直な感想と指摘(引用)に感謝いたします。
返信する
Unknown (Unknown)
2015-07-07 00:18:10
ケント・ギルバート氏に関しては、たまWEBさんと同じ意見ですね。隣国について彼の言っていることは正しいと思いますが、それを強調することは戦争へと導くためにやっていると感じてしまいますね。彼が意図的にやっていたとしたら何らかの背景も感じますね。
返信する
何らかの背景ね (NJ)
2015-07-07 00:29:30
Unknown さん、コメントありがとうございます。私にとっても対極に位置する方であります。
返信する

コメントを投稿