[natural man, ψυχικὸς ἄνθρωπος]
「生まれながらの人」(natural man) は、御霊の促しより肉欲の影響下にある人を表す的確な表現である。アルマ26:21にも出てくる。聖書では第一コリント 2:14に一度出てくる。
モルモン書を物語論(narratology) から分析したマーク・D・トマスは、モルモン書に出てくる「生まれながらの人」という概念は19世紀初頭に至るまでの福音主義派の影響を受けていると見る。パウロも「生まれながらの人は、神の御霊の賜物を受けいれない。それは彼には愚かなものだからである」と書き、霊の人と対比している。彼も罪が万人に及び、人が罪の奴隷であるとしているが、福音主義派はそれをさらに推し進めて人には生得的な腐敗性がつきまとい、そのような人は神の敵であると表現した。回心により力強い変化が生じ、生まれながらの人は新しい、霊的な者となる、と説いていた。
それとは異なる立場の人もあり、単純にはひとくくりにできないが、モルモン書のテキストに反映し、当初の読者は回心前の人の性質について説かれてきたことをよく知っていたとトマスは言う。
参考
Mark D. Thomas, “Digging in Cumorah : Reclaiming Book of Mormon Narratives” Signature Books, 1999. pp. 128-130.
説得力のある定義ですね。