@ 海に出て木枯らし帰るところなし 山口誓子
木枯らしは秋から初冬にかけて吹く強く冷たい風。木をも吹き枯らしてしまう。木は山に生えている。木枯らしは、だから、木の生えている山を訪ねて回る。それが一旦海に出てしまったのだ。風は行くばかりだ。どんどん沖へ行くばかりだ。帰るところがない。帰るところがないのは、木枯らしばかりではない。生涯、人を枯れさせてきたわたしも、帰るところがない。
木枯らしは秋から初冬にかけて吹く強く冷たい風。木をも吹き枯らしてしまう。木は山に生えている。木枯らしは、だから、木の生えている山を訪ねて回る。それが一旦海に出てしまったのだ。風は行くばかりだ。どんどん沖へ行くばかりだ。帰るところがない。帰るところがないのは、木枯らしばかりではない。生涯、人を枯れさせてきたわたしも、帰るところがない。