打つ人も打たるる人ももろとも如露亦如電(にょろやくにょでん)応作如是観(おうさにょぜかん) 良寛禅師
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露のように短い一生を生きているわたしであって、あなたである。雷電のように一瞬を生きているわたしであって、あなたである。こういう考え方に立てば腹も立ちません。すべてはあっという間に過ぎたことですから。あなたはわたしを打ち据えました。わたしはあなたに打ち据えられました。ただそれだけのことだったのです。
この日、月夜の月の下、良寬様は芋畑の中をお歩きになっておられました。そこへ芋畑の主がやってきて、良寛禅師を泥棒とみて捕まえ、穴の中に落として棒で打ち据えました。良寬様は打たれるままになっておられました。そしてしまいに、その声を聞いて良寛禅師だと分かり、平謝りに謝りました。そのときの歌が此の歌です。
加害した側も被害した側もどちらとももうすぐ必ず死ぬ身なのです。それを知っていれば憎しみを湧かせても詮ないこと。良寬様は身繕いをすませるとまたすたすたすたと立ち去って行かれました。
如露亦如電 応作如是観。にょろやくにょでん おうさにょぜかん 露の如く亦電の如し。まさに是の如き観を作すべし。禅の諦観である。良寬様はご自分にそう言い聞かせられたのでしょう。