秋づけば尾花が上に置く露の消(け)ぬべくも吾(わ)は思ほゆるかも 日置長枝娘子(へさのながえのをとめ) 万葉集 巻の8
すっかり秋の気配になって尾花ススキの葉末に露がたまるほどの涼気。わたしはあなたが去って行った後には、この尾花ススキの露のようになってしまうことでしょう。あなたの葉末を落ちた露は(この世を)消えてしまうしかありません。(わたしの生き死にの主宰者はあなたです。もっと強くわたしを抱いていてください)
恋の歌としないでもいいかもしれない。露の命のわたしが消えて行ってしまうという無常を噛みしめていると読んでもいいかもしれないが、そこに好きな人を配置すると歌が人間の体温を貯めて俄然あたたかくなってくるようだ。
いやはや、そこまで思われている殿御にあやかってみたいものである。よほどのイケメンだったのだろう。よほどの人間的魅力を醸していたのだろう。セックスアピールを放っていたのだろう。とするとそこで、三郎ははやばや失格してしまうのだった。
明日からは九月。尾花はすでに穂を見せている。途端に涼しくなってきた。露も置くようになるだろう。秋になれば、万葉の時代の歌びとたちはいよいよ人を恋する力をいや増して加えていくのだが、現代を生きるさぶろうは、情けないことにこれ(情の厚さ)を羨んでいるばかりのようだ。
すっかり秋の気配になって尾花ススキの葉末に露がたまるほどの涼気。わたしはあなたが去って行った後には、この尾花ススキの露のようになってしまうことでしょう。あなたの葉末を落ちた露は(この世を)消えてしまうしかありません。(わたしの生き死にの主宰者はあなたです。もっと強くわたしを抱いていてください)
恋の歌としないでもいいかもしれない。露の命のわたしが消えて行ってしまうという無常を噛みしめていると読んでもいいかもしれないが、そこに好きな人を配置すると歌が人間の体温を貯めて俄然あたたかくなってくるようだ。
いやはや、そこまで思われている殿御にあやかってみたいものである。よほどのイケメンだったのだろう。よほどの人間的魅力を醸していたのだろう。セックスアピールを放っていたのだろう。とするとそこで、三郎ははやばや失格してしまうのだった。
明日からは九月。尾花はすでに穂を見せている。途端に涼しくなってきた。露も置くようになるだろう。秋になれば、万葉の時代の歌びとたちはいよいよ人を恋する力をいや増して加えていくのだが、現代を生きるさぶろうは、情けないことにこれ(情の厚さ)を羨んでいるばかりのようだ。