1
善逝。ぜんぜい。善く逝きし人。
2
これは仏陀の別称である。
3
煩悩を断じ尽くして、迷妄を放ち去って、仏陀の智慧の世界に逝(い)った人は、こう呼ばれた。
4
煩悩は断じ尽くされるのだ。迷妄は放たれていくのだ。しまいにはこうなる。
5
煩悩の主体者がなくなってしまうのだから、こうなるしかない。迷妄の動揺を起こす主体者がなくなってしまうのだから、こうなるしかない。
6
これでよい。こうなるしかない。煩悩が尽きる。迷妄が尽きる。恐れが尽きる。
7
みながみな、万人が万人、だから善逝になるのだ。仏陀が一人こうなるのではない。
8
一人だけの善逝快楽をむさぼるようなら、それは仏陀ではない。
9
万人にそっくり共通体験を体験させてはじめて、そのひとは仏陀になれる。
10
心配は要らない。恐れることはない。やすらかであっていい。
11
人は仏陀と同じくみな善逝をして行くのだ。
12
その道が準備されている。しっかりと確保されている。万人が善く逝く。