快晴無風。天気陽気に誘われて、有田陶山神社の紅葉を見に行くところ。ご婦人を誘って。いま大町。お昼になった。和懐石料理の「山志田」に立ち寄る。前に一度来たことがある。お昼の弁当1620円を注文した。出来上がるのを待っている。会話なし。それぞれがスマホ。明るい部屋。簀の子から日が射し込んでいる。有田には14時には着くだろう。気儘気儘。時間に急かされることもない。
6
大空は無尽蔵。大空は無際限。大空は無制限。大空は無条件。あなたのいいようにどうぞというふうに広がっている。その無のところも、ついでにそれも頂いてしまおう。
どうせちょっぴりだろうが。
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大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
5
この老爺の躰は痩せて曲がって皺皺なのだが、それでも肥える。まるまる健康に肥える。これが短歌のいいところだ。
健康食の短歌食。食通でもないが。喰えるものなら大空でも喰おう。
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大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
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空がまるまると肥えているから、それに倣って、頂いたこの老爺もまるまると肥える。
大空というのは喰えるものなのか。喰えるとも。喰ったらなんでもおいしいはず。
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大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
3
今日は大空を頂く。頂いているが、あらたまって頂く。頂きますと宣言して頂く。時は秋。馬肥ゆる秋。
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大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
2
お願いもしていないがそうなっている。初めから終わりまでそれでいいことになっている。生涯まるまるいただいて生きて行けるようになっている。老爺が太る。
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大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
大空をいただきまする まるまると肥えた秋なり老爺も太る 薬王華蔵
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1
いただいて、いただいて、いただいている。みな何でもいただいている。そうやって生涯いただいていただいて、生きていけるようになっている。
命令す「嬉しく生きろ」 秋の日のわたしを生きているのはわたし 薬王華蔵
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わたしにわたしが命令を下す。「嬉しく生きろ」「今日を嬉しく生きろ」「生きている間は嬉しく生きろ」と。
この男、嬉しく生きていないのだ。つまらぬつまらぬで日々を追いやっているのだ。勿体ない話だが、そうなのだ。嬉しく生きていいはずをそうしていない。
どう生きようと秋の日は秋の日。その秋の日をわたしが生きている。わたし以外がわたしを生きることなどはできぬからだ。
もう一度命令す。命令を下す。「おい、その男、もっと嬉しく生きろ。もっともっと嬉しく生きろ」 嬉しくなく生きてもそれでも生きられるのだが、嬉しく生きてもいいのだぞ。
落葉の紅葉(もみじ)いきなり雲までの汽車となったり風が笛吹く 薬王華蔵
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紅葉の錦が汽車になって空へ上がって行く。風がひゅうと笛を鳴らしたからだ。しばらくしたら雲が一面赤く敷き詰められてしまった。
いろんなことが起こる。この世という処はあり得ないいろんなことが起きる。それを面白がる。面白がるのも短歌の世界。
落葉がそれでも尚且つはらはらはらと落ちる。落ち葉も楽しんでいるのだ。我が身にこれから何がどう起こるか、その実験台を楽しんでいるのだ。
6時には声が掛かるだろう。台所へ行って夕食になる。こう寒いと、日本酒を飲みたくなる。もちろん熱燗である。太めのお猪口で飲む。量も増える。血糖値が高い方だから、日本酒よりも焼酎がいい。だから、いつもは大概焼酎だが、ときおり日本酒に手が出る。