「京石工芸品」
Description / 特徴・産地
京石工芸品とは?
京石工芸品(きょういしこうげいひん)は、京都府京都市や宇治市周辺で作られている石工品・貴石細工(きせきざいく)です。京都は比叡山や北白川の里などから良質な花崗岩(かこうがん)が採取されやすい土地柄で、数多くの石工芸品が生み出されてきました。現在も国内有数の日本庭園や迎賓館などに京石工芸品が残っています。
京石工芸品の特徴は、すべての工程を一人の石工(いしく)が担う伝統的な技法です。京文化のもとで育まれた美的感覚と優れた技術力を持つ職人が、石灯籠や層塔、鉢物などの庭園装飾作りを手掛け、京特有の石工芸品に磨きをかけてきました。
石の表面に施されている模様は、加工の力加減ひとつで表情が変わってしまうほどに繊細で、京石工の巧みな技の象徴です。
History / 歴史
石造文化が生まれたのは、奈良時代後期と言われていますが、京都で石造りが発展したのは平安遷都のときに、建設に多くの石造品が必要だったことが始まりです。そして平安時代から鎌倉時代にかけて仏教が広がっていき、それに伴い寺社造営に用いられる石仏や石塔、そして石燈籠などの石造品が造られました。
京都は鎌倉時代以降も、文化の中心として様々な伝統工芸品が発達していく中、京石工芸品も繊細な技術から作られる美しい作品が生み出されていきます。
安土桃山時代に入ると、京都では茶道文化が盛んになり、石工芸品も多大な影響を受けました。茶人の美と石工芸品の美が相まって、伝統技術が著しく高まっていきます。日本庭園などで、石燈籠などが置かれるようになったのは、茶道文化が背景にあると言われています。
*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/kyoishikogeihin/ より
京石工の技と誇りを後世に
京都・白川地区。比叡山麓のここはかつて上質の白川石を産出し、村中で石工芸に従事していた石工のふるさとの地。その地で、伝統の技で古典の姿を蘇らせる日本屈指の名石工、西村金造さんにお話を伺った。
目利きに鍛えられる京都の職人
石工芸は、平安時代に仏教とともに発展、室町時代には庭の装飾品として茶人たちによって愛好されるようになったとか。特に仏教の本山がひしめき、茶道文化の中心の京都では、伝統と格式を重んじる寺社仏閣、数寄者で目の肥えた茶人たちに鍛えられ、石工芸に磨きがかけられた。もちろん今も京都には目利きが多く、京都の職人は「自分も目を肥やさなあきません。学ぶことが多いです。」と語る。
実測で古典に学び、応用する
職人として最大の転機は二十代で見た韓国の石工芸品。以来、日本の石文化の原点のような韓国に通い詰めた。「やっぱり本物はすごいと感動して、いいものをもっと見たい、と。しかし見ているだけではだめ。」「どんな風にできているのか、実測する。それで初めて自分のものになります。」めったに触らせてもらえない名品も、つてを頼って実測、図面におこした。「形やバランスのよさが数字でわかると、次にそれを応用できるんです。」技術や感性は、勘だけに頼っていては身につかないということだろう。
柔らかな石の感触
店の裏手の陳列場に案内してもらう。山を切り開いてできた野趣あふれるそこには、西村さんが作ってきた燈篭と気に入って買い集めた燈篭が渾然と並んでいて壮観だ。いいものは、作られた時代や場所に関係なく調和する。「新品の燈篭は、味わいが少ないものです。ここに置いておくと、いい具合にさびがついて、なんともいえん風情になります。」西村さんの燈篭に触らせてもらった。石なのに、掌に吸い付いてくるような柔らかい感じ。「全部手でやってますから。機械で削るとつるつるです。」と教えてくれた。
死んでからも責任をもてるものを。だから、ライバルは先人達
堅牢で永続性の象徴でもある石。しかし石素材でも後世に伝わるのはほんとうによい作品だけ。「自分は死んでも石は残りますわな、だから責任もってつくらなあきません。自分が生きてる間に精一杯ええもん、あとに残るもんつくらなあかん思てます。」と西村さん。石を扱う職人の覚悟だ。また「鎌倉や室町のころに比べたら、道具も技術もようなってる。昔の人には負けてられません。」「先人よりも、ええもんつくらなあかんのです。」現代の名工のライバルは遠い先人達だ。
京の石工芸を守り受け継ぐ
西村さんは、日本の技術の伝承を絶ってはいけないと強調する。京都の石工芸は、京都の石で、京都の職人が、守り育ててきた。だから白川で石が採れない今も、あくまでも国産の石で国産の職人がやる仕事にこだわる。受け継いで培ってきた技に自信があるからこそ、「技術の安売りはすんな。」と若い者に口うるさく言う。「なんぼ石が硬い言うたかてね、つまらんもんは壊されます。安い大量生産のもんは残らんものですよ。そんなもんにせっかくの技術を使うようなことすんな、言いますねん。」「わたしらはね、後世に残す価値のあるようなもん、作らなあかんのですよ。」石工の自負は石よりも硬く、これがある限り、技は後世に継がれていくのだろう。
職人プロフィール
西村金造 (にしむらきんぞう)
「西村石灯呂店」4代目。
昭和13年生まれ。
代表作に金沢兼六園の琴柱燈篭の写しなど。
こぼれ話
京都石工芸の歴史を辿る~茶道文化と石工芸
古くは古事記に登場する「石工」。京都では、平安遷都によって大内裏の造営とともに、石造品が盛んに作られるようになり、また仏教の隆盛とともに寺社造営の礎石、石仏、石塔、石燈篭など、石工技術がますます発展しました。
鎌倉時代以降、政治の中心が関東に移っても、依然、文化の中心であった京都には優れた石工芸品が残っています。桃山時代から江戸初期にかけては築城と造園、さらに茶道文化との結びつきが石工芸に大きな影響を与えます。茶人の求めるわび、さびの表現として、古くから伝わる石燈篭の模作を庭の装飾にし、水鉢、層塔、その他の彫刻物が盛んに庭に持ち込まれました。茶の心に則る「美」が追求され、それに応えるべく石工芸技術は著しく向上しました。現在、庭園装飾用に石灯篭等を用いるには、こんな歴史的背景があったのですね。
*https://kougeihin.jp/craft/1103/ より
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