渡部氏の解説の前に、頼山陽の「書き下し文」と徳岡氏の「大意」を紹介します。
〈「書き下し文」( 頼山陽 ) 〉 七行詩
遣唐使 留学生
臣清河(きよかわ) 臣朝衡(ちょうこう)
使いする所は何の命ぞ 学ぶことは何の道ぞ
顔(がん)あり 能(よ)く結ぶ李家の纓(えい)
猶(なお)知る 頭(こうべ)を回(めぐ)らして出月(しゅつげつ)を望むを
月の出(い)づる処は 即ち日の出(い)づる処
月光明明として海光はるかなり
〈 「大 意」( 徳岡氏 ) 〉
遣唐使がいた 留学生がいた
臣清河(きよかわ)であり、 臣朝衡(ちょうこう)である
どのような命を受けて遣唐使となったのか、何を学ぶへく留学生となったのか
面目あることに 立派に唐朝の官職に就いた
それでもやはり、東方に月の出を望まずにいられなかった君
月の出るところは、とりもなおさず " 日出づる処 " 日本 君の故国だから
月の光はしらじらと冴え 海は月光にきらめいて限りないその距離・・・
ここで渡部氏は直接頼山陽の漢詩の説明をせず、思いがけない話をします。
「留学生というのは、明治以来の日本の青年にとって、最も魅力的な言葉であった。日本を代表するに相応しいと目された青年が、欧米先進国の学問・文化・制度などを研究して、日本の近代化の先達になろうというのである。」
「日本の陸海軍を作り、ロシアに勝つ制度を作った人たちも、学問の諸分野で権威と言われるようになった人たちも、たいていは留学生だったのである。」
遣唐使の漢詩が、どのように明治維新時の留学生の話と繋がるのか、何となくわかる気もしますが、真意はまだ掴めません。
「そして明治政府の留学制度は、成功であったと言ってよいであろう。日本は最も遅く欧米の勢力に門戸を開いたにもかかわらず、たちまち近代化に成功した、唯一の有色人国になったからである。」
唯一のアジアの国と言わず、氏は有色人の国と説明します。世界史を理解する上で、白人と有色人という言葉は重要な意味を持ちますが、人種差別につながるので世間的には曖昧にされている部分です。白人対有色人の話を始めると、それだけで何冊もの本となり、しかも未解決の難題です。
氏も、この問題に重点を置いている訳でありませんから、別の説明をしています。
「日本の成功は、他の有色人種の国々によっても真似られた。あの誇り高きシナ人 ( 当時は清朝末期 ) も、日本の近代化の成功を見て甚大なる衝撃を受け、千年以上も続けてきた科挙の制度を廃止して、代わりに日本へ留学生を送ることとしたぐらいであった。」
この辺りの話になりますと、中国や韓国・北朝鮮の政府が反発し、「歴史認識が間違っている」と文句をつけてきますが、氏は事実を語っていると思います。
「第二次世界大戦で日本は敗れたけれども、欧米の大国と対等に近代戦をやれるほど近代化に成功した唯一の有色人種の国として、世界の各地に新しく独立した数十の国々の手本になった。」
こういう氏の説明も今日の日本では歓迎されず、認められません。単に事実を述べているに過ぎないと、私は思いますが、日本国中に根を張った反日左翼勢力が大反対します。少しでも戦前の日本を肯定的に語ると、大合唱が始まります。
「軍靴の響きがする。」「他国を侵略した軍国主義を賛美している。」「反省のない植民地主義者の居直りだ。」
昨日まで「ねこ庭」で取り上げていたNHKが、マスコミの先頭に立ち世間を扇動します。こういう風潮を知りながら、氏はなぜ明治政府の話をするのか、何か別の意図があるのでしょうか。自分のブログでもそうですから、テーマを外れて横道へ入ることには慣れています。
「遣唐使の話」とどこで繋がるのか、次回も息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々へ続きを紹介します。