
ワーグナーの指輪4部作の第2作で代表作。
当ブログが今作をみるのは、これで5回目。
ロシア系日本公演、METライブビューイング、英ロイヤルオペライブビューイング、MET本拠地、そして今回。
このプロダクションの画期的な点は、演出がロベール・ルパージュ(Robert Lepage)だということ!
ラスベガス「カー」KA のステージ演出は超有名。
「アンデルセン・プロジェクト」などの自身のプロダクションでもユニークな味を発揮している。
その彼が思いついたのが、ステージ全体を覆う金属製のバーが自在に組み代わる「マシーン」(写真)
全オペラ界「戦慄」ものの、他を寄せ付けないプロダクション。
ステージに横幅いっぱいに、細長い「面」が自在に動く仕掛け(写真)
かつi表面は演技者がさわると反応するセンサーがあり、リアルタイムに表示される映像が切り替わる。
かかった費用はなんと!、$16ミリオン!(12~13億円)
いろいろな意味で、実に革新的!(笑)
METで「生」鑑賞のあとで、今回はライブビューイングで。
今期はジークリンデ役のエヴァ=マリア・ヴェストブルック続投を除き、歌手陣を一新。
ブリュンヒルデ = クリスティーン・ガーキー
ヴォータン = グリア・グリムスリー
ジークムント = スチュアート・スケルトン
フリッカ = ジェイミー・バートン
フンディンク = ギュンター・グロイスベック
新しい面々は誰を取っても若々しく、個々の「歌唱の力」に十分に圧倒された!
特に クリスティーン・ガーキー のパワーは安定しており、キャラも安定感が頼もしい(笑)
強いていうと グリア・グリムスリーは歌う際に目をつぶりため、前回のタファレルの「目力」には劣る(笑)
キャスティングの力の入りようだけでなく、幕間の企画にも力が入っていて感心。
まずは先の2010〜11シーズン × 4部作の制作を追ったドキュメンタリー
Wagner's Dream (ワーグナーの夢)=当ブログ紹介済
ここで先のルパージュ演出がどういう発想からスタートしたかわかる!
また、METの金管パートが「ライトモティーフ」を解説する企画も面白い。
「ワーグナー」チューバ、コントラバス・トロンボーンなどにお目にかかれるとは珍しい!
そして3幕の クライマックスで、また気づきが!
ヴォータンと娘ブリュヒンデのやり取り。
ヴォータンの自己矛盾をはらんだ指示を、娘ブリュヒンデがヴォータンの真意を察した結果、違う行動をとる。
これを許さないヴォータン。
思い出したのは、読中評:フェイスブック時代のオープン企業戦略 よいオープンリーダーとは?!
読み進むにつれ、この本がfbの本というよりは、SNS時代のリーダーシップについて論述している本だということに気付く(原題もOPEN LEADERSHIPだし)
そこを読んでいて、ヴォータンが下した結論の過ちを思い出したのだ。
<こうした背景から、リーダーシップは決定的な分岐点にさしかかっていると言える。
<ところが私が取材したエグゼグティブの多くには、まだその自覚がなく、危機的な局面や
<重大な変革を手動する場面では、強力なリーダーシップが不可欠だと主張していた。
<情報も意思決定も手の内でコントロールする従来型の指揮統制スタイルから離れられないらしい(抜粋)
ヴォータンは自分が引き起こした決定的な自己矛盾が、娘の命令不服従の原因であるにもかかわらず、一方的な判断を下す。
その自覚がないことが、今後の「神々の黄昏」を確定させる「引き金」となる。
「権力」という最終兵器を行使することが抱える「危険性」への自覚が欠如しているのだ。
もとい、オペラの演出で面白かったのが、この判断の決定的瞬間をルパージュも大事にしていること。
そのシーンの背景になっている冬山が、その決定的瞬間に小さな雪崩を起こす。
ここで思わず「おっ~!」となった。
(あくまでもセリフまわしが理解できるこのシリーズならからこその感想かな、と)
しかも今回確認できたのがこの雪崩は、2回に分かれ起こることを確認。
見るたびに発見があるわねえ!!!!(笑)
結論:見るたびに発見がある、ワーグナー渾身の作なだけでなく、かつ ルパージュ演出の妙に唸る!