溜め息と共に胸の中に落ちる言葉。
どんな意味があろうと信じられる。
あたしは熱くなった胸を掌でギュッと抱いていた。
そこに、おんぷちゃんが手をパンパンと叩いて、
「そうだ! なら、わたし達の婚約をはづきちゃん達にも報告しに行きましょう。いい加減、あなたも3人と仲直りしないとね」
「うげっ!? それは……!!」
「わたしと一緒ならきっと大丈夫。それに3人共、とっくにあなたのことを許してるのよ?」
「……えぇぇぇ~~~!?!?」
「あなた、ハナちゃんやぽっぷちゃんの話をろくに聞いてないものね」
おんぷちゃんが飽きれて肩を竦める。
あたしは唖然として何も言えなくなる。
嬉しいより先に動揺してしまう。おんぷちゃんのプロポーズ並の仰天発言だ。
ずっと悩んでたことが取り越し苦労だったなんて、そんなのあり~!?
「¨あり¨よ」
「心を読まないでよ! おんぷちゃん!」
「アハハ! ……ねぇ、どれみちゃん。そろそろ……答え、聞かせてくれる?」
おんぷちゃんが声のトーンを落として、静かに聞いてきた。
沈黙。けれど、決して嫌な雰囲気じゃない。
真剣さと気恥ずかしさが混じって、少しだけ心地よさを感じる。
話し合った結果、結婚するために必要な物は全て揃ったし、障害もなくなって……。
なんだこれ、すごく……照れ臭い!!
あたしは照れを誤魔化すように咳払いをして、
「……え~っ、まぁ、ね……」
言葉に詰まる。
いや!! こういう時、どう言ったらいいの!?
普通に言えばいい? なんか洒落たことが言いたいけど何も思い浮かばない!
一生の思い出になるのに~! 下手なことしたら笑い者になっちゃう!!
心中であ~!と嘆いていると、あたしの頬におんぷちゃんの手がそっと触れた。
あたしの心を掬い取るように、顔を上げさせてくれる。
「ねぇ、どれみちゃん。あなたはわたしのことをよく綺麗だとか美しいって言ってくれるけど……わたしだっていつかはしわしわのおばあちゃんになっちゃうわ。それでも……醜くなったわたしでも、あなたはわたしのことを愛してくれる?」
その言葉に、あたしの中にあった迷いや不安が粉々に砕かれた。
今まで抱いていた辛さや後悔すら残らず消えて、それ以上に、勇気が沸き上がってくる。
今日はおんぷちゃんに助けられてばかりだな、と頭を抱えたくなるけど、いつものことだ。
おんぷちゃんはうじうじするあたしに呆れたり苛ついたりしながらも、知らん顔はせずに励まして背中を押してくれる。
そんな日々がこれから毎日でも続く。
あたしも、おんぷちゃんに返していかないといけない。
おんぷちゃんと一緒にいることが堪らなく幸せで、おんぷちゃんが喜ぶことなら全て、なんだってしてあげたい。
あたしから言えることは、たった一つ。
「――愛してるよ、おんぷちゃん。これからも、ずっと」
目の前にいるのは最愛の人。花開く笑顔。
月の輝きをそのまま借りてきたような艶やかな髪に深く染まった紫の瞳、透き通るような白い肌。たおやかな肢体。どの角度から見ても計算し尽くされたように理想的な美貌。
自身が望まずとも、彼女は美しかった。
だけど、その中にはひねくれたところや子供っぽいところとか、色んな物が詰まってて、あたしは、そんなおんぷちゃんが全部大好きだった。
まぁ、正直、今の姿からしわしわのおばあちゃんになる姿は想像つかないんだけどね。
てか、そうなるまで何百年かかるんだよって話。金寿でもすごいのに魔女となったら……。
でも、楽しいことばかりも言ってられない。
これから先、何が起きるか。
おんぷちゃんが言うように、争いや混乱が幾度も巻き起こって、幸せな気持ちや互いを想い合う心も、いつか引き剥がされたり、脆く崩れ去る。
マジョトゥルビヨン様が苦しんだように、現実や世界を恨んでしまう瞬間が――
……考えても仕方ないか。きっと大丈夫!!
だって、あたし達は――
おんぷちゃんは何も言わず、そっとあたしの手を取った。
摘ままれた指輪が、ゆっくり、あたしの指へと嵌め込まれる。
左手の薬指。
緩くもきつくもなく、すんなりと収まる。
あたしはこの上ない充実感に包まれて、しばらく指輪に見とれていた。
宝石の輝きが目に染みて泣きそうになる。
おんぷちゃんの手があたしの顎に添えられて、導かれる。
すぐ目の前に甘い吐息を感じる。あたしは自然と目を閉じた。
永遠を誓い合う二人に祝福を贈るように。
笑う月だけが見守っていた。
幸せな一時を。誰よりも愛を込めて。
☆★
どんな意味があろうと信じられる。
あたしは熱くなった胸を掌でギュッと抱いていた。
そこに、おんぷちゃんが手をパンパンと叩いて、
「そうだ! なら、わたし達の婚約をはづきちゃん達にも報告しに行きましょう。いい加減、あなたも3人と仲直りしないとね」
「うげっ!? それは……!!」
「わたしと一緒ならきっと大丈夫。それに3人共、とっくにあなたのことを許してるのよ?」
「……えぇぇぇ~~~!?!?」
「あなた、ハナちゃんやぽっぷちゃんの話をろくに聞いてないものね」
おんぷちゃんが飽きれて肩を竦める。
あたしは唖然として何も言えなくなる。
嬉しいより先に動揺してしまう。おんぷちゃんのプロポーズ並の仰天発言だ。
ずっと悩んでたことが取り越し苦労だったなんて、そんなのあり~!?
「¨あり¨よ」
「心を読まないでよ! おんぷちゃん!」
「アハハ! ……ねぇ、どれみちゃん。そろそろ……答え、聞かせてくれる?」
おんぷちゃんが声のトーンを落として、静かに聞いてきた。
沈黙。けれど、決して嫌な雰囲気じゃない。
真剣さと気恥ずかしさが混じって、少しだけ心地よさを感じる。
話し合った結果、結婚するために必要な物は全て揃ったし、障害もなくなって……。
なんだこれ、すごく……照れ臭い!!
あたしは照れを誤魔化すように咳払いをして、
「……え~っ、まぁ、ね……」
言葉に詰まる。
いや!! こういう時、どう言ったらいいの!?
普通に言えばいい? なんか洒落たことが言いたいけど何も思い浮かばない!
一生の思い出になるのに~! 下手なことしたら笑い者になっちゃう!!
心中であ~!と嘆いていると、あたしの頬におんぷちゃんの手がそっと触れた。
あたしの心を掬い取るように、顔を上げさせてくれる。
「ねぇ、どれみちゃん。あなたはわたしのことをよく綺麗だとか美しいって言ってくれるけど……わたしだっていつかはしわしわのおばあちゃんになっちゃうわ。それでも……醜くなったわたしでも、あなたはわたしのことを愛してくれる?」
その言葉に、あたしの中にあった迷いや不安が粉々に砕かれた。
今まで抱いていた辛さや後悔すら残らず消えて、それ以上に、勇気が沸き上がってくる。
今日はおんぷちゃんに助けられてばかりだな、と頭を抱えたくなるけど、いつものことだ。
おんぷちゃんはうじうじするあたしに呆れたり苛ついたりしながらも、知らん顔はせずに励まして背中を押してくれる。
そんな日々がこれから毎日でも続く。
あたしも、おんぷちゃんに返していかないといけない。
おんぷちゃんと一緒にいることが堪らなく幸せで、おんぷちゃんが喜ぶことなら全て、なんだってしてあげたい。
あたしから言えることは、たった一つ。
「――愛してるよ、おんぷちゃん。これからも、ずっと」
目の前にいるのは最愛の人。花開く笑顔。
月の輝きをそのまま借りてきたような艶やかな髪に深く染まった紫の瞳、透き通るような白い肌。たおやかな肢体。どの角度から見ても計算し尽くされたように理想的な美貌。
自身が望まずとも、彼女は美しかった。
だけど、その中にはひねくれたところや子供っぽいところとか、色んな物が詰まってて、あたしは、そんなおんぷちゃんが全部大好きだった。
まぁ、正直、今の姿からしわしわのおばあちゃんになる姿は想像つかないんだけどね。
てか、そうなるまで何百年かかるんだよって話。金寿でもすごいのに魔女となったら……。
でも、楽しいことばかりも言ってられない。
これから先、何が起きるか。
おんぷちゃんが言うように、争いや混乱が幾度も巻き起こって、幸せな気持ちや互いを想い合う心も、いつか引き剥がされたり、脆く崩れ去る。
マジョトゥルビヨン様が苦しんだように、現実や世界を恨んでしまう瞬間が――
……考えても仕方ないか。きっと大丈夫!!
だって、あたし達は――
おんぷちゃんは何も言わず、そっとあたしの手を取った。
摘ままれた指輪が、ゆっくり、あたしの指へと嵌め込まれる。
左手の薬指。
緩くもきつくもなく、すんなりと収まる。
あたしはこの上ない充実感に包まれて、しばらく指輪に見とれていた。
宝石の輝きが目に染みて泣きそうになる。
おんぷちゃんの手があたしの顎に添えられて、導かれる。
すぐ目の前に甘い吐息を感じる。あたしは自然と目を閉じた。
永遠を誓い合う二人に祝福を贈るように。
笑う月だけが見守っていた。
幸せな一時を。誰よりも愛を込めて。
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