お涙頂戴ロマンスという苦手なジャンル。ただBBC版LOTRの「一世を風靡した美声」俳優が出演している(^^;),そしてC.S.ルイスの生涯をちょっとお勉強する事が目当てで(おいっ! 順番が違うだろっ!(笑))。。。。
邦題は「永遠の愛に生きて」ですが,日本版は絶版状態。海外版も品切れの事が多くてなかなか在庫のある時に会わなかったのですが,ようやく英国版が買えるのを見つけ,買ってみました。
登場人物の中には親友だったはずのトールキンはクレジットされてなく,正直言って,中身にはそれほど期待していたわけではないのです。
しかし,どっこい,「期待に大きく反して」,かなりツボな映画でございましたよ~。原作は,数多くのLOTR(特にPJ映画に関する物が多い)関連,トールキン,C.S.ルイス関連の書物を出している,あのブライアン・シブリーです。さすがに,C.S.ルイスはもちろん,トールキン,そして彼らの作品に対する愛情が溢れているんですよ。
以下,ネタバレを含みます。
まずは冒頭。私はトールキン,C.S.ルイスゆかりの地に関しては全く不勉強で,もし違っていたら申し訳ありませんが,これは
トリニティ・カレッジ(Trinity College)のチャペルでしょうか? まずはその美しさに圧倒。そして,それに続いて,マントを着た大学の教授陣が,マントを着込んで一列に並んで,イギリス伝統スタイルのダイニングに入るシーンです。ここでいっぺんにこの映画の虜になりました。(笑)
他にも,
シェルドニアン大講堂(Sheldonian Theatre),
モードリン・カレッジ(Magdalen College),などなど,オックスフォード大学のホンモノの風景を楽しむ事ができます。モードリン・カレッジのC.S.ルイスの部屋があった建物を「新しい建物」と言うのはお約束ジョークなのでしょうかね。(笑) また,映画の中に度々出てくる
オックスフォード駅ですが,思わず「あれっ!?」映画のナルニアで子供達が出発する駅に酷似。もしかすると似たような駅はあるのかも(JR中央線みたいに(笑))しれませんが,ひょっとして同一駅ではないでしょうか!?
ジャック(=C.S.ルイス)は兄と2人暮らし。(正確にはメイドさんと3人暮らし) 2人の暮らしぶりがとても微笑ましいです。このお兄さんがまた大変素敵です。ある日,問題の女性ジョイが息子のダグラス君を連れてこの家にやってきますが,お兄さんに案内されて屋根裏部屋を訪問。ナルニアを読んでいると,この屋根裏部屋が超ツボ。古いタンスがあったりするんですよね。(笑)
後にお母さんが入院中に,ルイス兄が自宅でダグラス君を預かるシーンがありますが,その夜ダグラス君のベッドで,「君の本を見つけた!」と言ってベッドの下から取り出した(プレゼントかな?)のは,見間違えるはずもございません。(笑) ホビットの冒険,強烈な特徴のあるトールキン自身の挿絵入り本です。(これって初版の表紙でしょう? 当時というか,映画を撮った当時簡単に見つかったのでしょうかね?)
ジョイ母子がイギリスに移った時に住んでいたのが,イギリス式アパートback-to-back。屋根裏付きだったのかどうかはわかりませんが,ナルニア(1巻)はもちろんですが,ハリポタ(6巻)にも出てくるので,かねてから中を見たいと思っていました。まあイギリス映画にはよく出てくるのですが,キッチンまで出てくるのは珍しく,これは思わぬ収穫です。それにしても,アチラでは家の中を丸見えにしておくのが普通なんだなとここでも実感です。(笑)
トールキンの名前は登場人物にクレジットされていませんが,やはり彼の存在を感じずにはいられません。(笑) 確証はありませんが,どうもいつもジャックの傍にいるクリストファー・ライリーという教授が,トールキンぽいのです。まず息子さんと同じクリストファーという名前が引っ掛かるし,中世を絡めた冗談を言ったり,ジャックとは本の読み聞かせをしているよ!というセリフもありましたし,いかにも最高学府の教授らしくひねくれていて(笑)。。。ただ,顔が長過ぎだし(汗),特にジョイに対しては意地悪通り越して,無礼だし,ラストの"I'm sorry."も心入ってません。お世辞にも好人物ではありません。でも,漏れ伝え聞くトールキンの人となりを考えると,もしかすると,このトールキン(いや劇中はトールキンではないけど‥)は,アリ!?かもしれません。ジョイに意地悪なのは,友達を奪われた嫉妬とも取れるし。
ジャックもまたぶっきらぼうで早口で,特に最初は高慢で素直でなく(当然)女性の扱いも知らない,ちょいひねおやじ。(笑) 最初から優しく暖かい兄貴とは全く対照的です。
実は私は初めて知りましたが,ジャックがジョイと結婚したのは,彼女が当時離婚してアメリカを離れて再出発したがっていた為,イギリスの市民権を与える為というのが表向きの理由だったようです。しかもそれとほぼ同時に彼女は不治の病に罹っている事が判明。呆れたトールキンが,「C.S.ルイスが死にそうな女性と結婚しようとしている」その結婚を嘆く様子が196番の手紙に残っています。また,後に彼はC.S.ルイスが亡くなった時「あのstrange marriage以来疎遠になってしまったが。。。」なんて超~ヒドイ事(汗)を手紙に書いているんですよね。何故そんな事を言ったのか,ようやくその謎が解けました。
2人が新婚旅行に行った場所は,まるでシャイア(shire)です!(実際
ヘレフォードシャー(Herefordshire)という所だそうです) C.S.ルイスの映画でこんなにトールキンばかり思い出すのは失礼ですが,でもやっぱし,イギリスはホビットの国なんだなあと感じました。
既に余命僅かなジョイの「痛みも幸せの一部なの。」というセリフがとっても心に残ります。で,うっかり?忘れておりましたが,この映画は単なるロマンスでなく,愛する事と生きる事について,真摯に教えてくれる,質の高い映画です。。。
ところで,このDVDをわざわざ買った大きな目的は,アレ(笑)‥だったのですが,そちらの収穫はと言うと。。。。実は,BBC版LOTRのホームページ
Wellinghallのクリップで見た覚えのある顔が,何と冒頭の賛美歌シーンにいきなり登場。。。しますが,どうやらオックスフォードの教授陣の1人のようなのですが,どうもそれ以降ほとんど顔を見る事もできないし,せっかくの美声も他のオジサン達の声に混じって認識する事ができませんでした。残念。
この映画の日本版は,残念ながら,DVDにしろVHSにしろ,現在非常に手に入れにくい状況になっています。せっかくナルニアの映画が公開されましたので,是非,復刻して頂きたいです~。