これを読んだ頃、たまたまNHKで某俳優(^^;)の特集をやっていて、大脱走の話を聞く機会がありました。ご存知のように、大脱走は,第2次対戦中、ドイツの捕虜収容所から、多数の捕虜が逃げ「出そうとした」実話を基にした話です。実はこの話、実話ではアメリカ人は1人もいなかったとか(^^;)映画でも某俳優ばかりが目立ちます(笑)が、他は殆どイギリス人将校です。ビリー達がドレスデンに着く前に、何度も脱走を試みたイギリス将校達が、みょ~に優遇されている収容所に立ち寄りますが、この話と何か関連があるのでしょうかね?
また、もう1つ、偶然この本に出てくる出来事に関連した話が出てくる某5夜連続
ドラマが放映されました。ビリー達が命からがら逃げまどい、連行されたまさにちょうどその頃、日系人を中心とした442部隊がすぐ近くで大活躍、ピンチに陥っていたテキサス出身者中心の部隊を救出したり、他の捕虜収容所を解放したりしていました。
という事で、同じ時代に起きた出来事を、いろいろな視点で見るのは面白いですね。
ここでビリー達の前に、摩訶不思議な人物が現れます。アメリカ人でありながら、アメリカ兵捕虜を愚弄した
Howard W. Campbell Jr.です。CampbellはVonnegutさんの作り上げた人物ですが、全く不思議な人ですねぇ。服装も奇抜そのもの。テンガロンハットにカウボーイブーツ‥だけど、鍵十字のチャーム付き。これだけでも、何かすげー勘違いしたどっかの国の若者がやりそうな格好です。さらに青と黄色の縞のストッキング、鍵十字のついたアームバンド‥‥(汗)
ビリーはシロップ舐め過ぎで胸焼け中(笑)
Campbellは、栄養不足で疲労困憊している捕虜達に、自分の組織Free American Corp(ロシア人とのみ戦うそうな)に参加すれば、ステーキ、マッシュポテト、グレービー、肉パイなどを配布すると言います。しかしだ~れも反応なし。Campbell曰く「いずれ共産主義と戦わなくてはならんのだぞ、何故、今のうちにやっておかないんだ?」
しかし、全く質問がなかったわけでもありません。兵士達は捕虜生活で「個」を奪われ、元気を無くしていたのですが、ダービーは別でした。ダービーは頭にパンチを受けたボクサーのような感じ、ではありましたが、Campbellを蛇野郎と呼びました。いや蛇じゃなくて、蛇以下の奴、鼠か血でお腹一杯の蚊にも値しない奴‥‥そして、ダービーは、アメリカ人は自由と正義と公平の為に死ねない奴はいないと言います。そしてロシアとは友人で、世界に蔓延しようとするナチズムの病を根絶する為、いかに戦うかを述べます。
しかしその時空襲警報が悲しげに響き、皆は仕方なく食肉処理場の地下壕へ。肉倉庫には豚や羊や馬が逆さにぶら下がっていました。(So it goes) Campbellはあたかもガードのように立ったまま、上手なドイツ語でドイツ兵とお話。彼の奥さんは、クリミアに兵が侵攻してきた時に亡くなったそうです。(So it goes.)
ドレスデン爆撃は翌日の夜‥という所で、ビリーは再び娘との会話に戻ります。「どうすればいいの?」‥‥そして「誰を殺せば良いか知ってるでしょ。」「誰を殺すってんだ?」「Kilgore Trout」
その頃ビリーは既に
Kilgore Troutと友人でした。
Troutはビリーの瀟洒な家から2マイルの場所に地下室を借りてました。彼の小説は売れず、新聞配達等で生計を立てていました。彼らの出会いは1964年、ビリーは少年少女の前で説教している当時62才の髭爺がいて、自分の車が進めなくなります。それにしても、実物のTroutは、みょーにどこかで会ったような人。。。ビリーは、きっとドレスデンで捕虜になっていた誰かだろうと思います。実際、Troutは捕虜のような外見をしていました。
ビリーは車を止めて待機。すると最後まで新聞配達の少年が残っています。実は少年は、仕事が厳しく時間が長く、給料が割に合わない為、辞めようとしていました。Trout曰く「このいくじなし(Gutless wonder)」実はGutless Wonderとは彼の著書でもあります。それはロボットの話ですが、1932年に書かれたにもかかわらず、ゼラチン化ガソリン(ナパーム弾の事)が広く使われる事を予測したのだそうです。(小説の中で飛行機からゼラチン化ガソリンが人をめがけて落ちてくるとか‥(汗))
少年はついにTroutの説得を聞かず、新聞のバッグを置いて出ていきました。そこへビリーがやってきました。
「Troutさんですか?」
「そうだ。」
「Kilgore Trout?」
「そうだ。」
「小説家の?」
「何?」
Troutは、自分が小説家という自覚がなかったんですね。あまりに本が売れないので。
ビリーは新聞配達をお手伝い。
「俺は自分の本が売られているのを見たことがない」
「でもファンレターは送られてくるでしょう?」
「1通だけな。」
と、言って見せてくれた手紙の差出人はローズウォーター。ビリーは、彼は友達だと説明。
「大人だったのか。14才かと思ってたよ。」
ビリーは結婚18周年のパーティにTroutを招待しました。検眼医ばかりのパーティで、唯1人眼鏡をかけず、本物の小説家であるTroutは、皆の注目の的。TroutはMaggie Whiteという若い女性と話し込んでます。Troutは、以前フレンチシェフの葬式の話を書いたそうな。棺桶を閉める前に、皆でパセリとパプリカを蒔いたそうです。(^^;)
ビリーとバレンシアの為に乾杯、の後、検眼医カルッテットが、That Old Gang of Mineの歌を始めます。(あ~もちろん、飛行機事故の前の話だったわね(^^;))
しかし、ビリーは、突然、この歌を聞いていて、何故か落ち着きません。彼は古い仲間も古いカノジョもいないのですが、1人気になる人がいるのです。コードが妙に恐ろしく酸っぱかったり、締め付けられる程甘かったり、あまりの耐え難い状況に顔がグロテスクになっていく‥周囲も気づいて心配してます。(心臓発作ではないかと(^^;))ビリーは自分の中に、何か自分も知らない大きな秘密を抱えていたのです。
「幽霊でも見たかのようだったわ」と、バレンシア。そこへKilgor Trout「何か過去か未来でも見たのかね?」ビリーがいずれも「No」と答えます。彼は小さな箱を取り出してバレンシアへ。ホントは歌が終わったら皆の前であげる予定だったのですが、Troutだけが見る事に。しかしバレンシアは中をみてほとんど悲鳴「Oh, mt God!」人が集まってきました。中身は星のついた見事なサファイアでした。
そもそも、ビリーが戦場から持ち帰ってバレンシアにあげたダイヤについてはかねがね噂になってました。もう1つ金歯の一部はカフボタンの箱の中です。(家族は父の日にはビリーにカフボタンをあげるのがならわし)
ビリーはその後はパーティで普通に過ごしましたが、Troutは興味津々で彼を追います。「床に鏡を置いて犬を立たせた事ある?」「いや」「犬は突然自分が空気の中に立っていると気付いて、飛び上がるよ。」「ほんと?」「今の君のようだ。突然空気の中に立っているとわかった時みたいだ。」
床屋カルテット(床屋だったんか?)が歌い出すと、またビリーはみょ~な気分に。で、気付きます。彼のヘンな思いは歌詞ではなく、この4人組に結びついていると。
ビリー、2階に駆け上がります。
2階でふと気付くと、当時17才の息子もそこにいました。将来グリーンベレーに入隊する息子ですが、ビリーは彼の事良く知らんなあと気付きます。彼はその日パールピンクのエレキギターを買ったのですが、結局弾かずじまいに終わりますけど(^^;)
ビリーは寝室に入ると、お客さんがいるのに構わず横たわり、Magic FingersのスイッチON。ベッドの下から犬が思わず飛び出し、部屋の隅にうずくまります。
ビリーはようやく、何故自分がカルテットの音楽に反応したのか「思い出し」ました。(今回は回想のみ(笑))
‥ビリーはドレスデン爆撃の当日、肉貯蔵部屋にいました。頭上では巨人の足音のような爆撃音。そこは安全なシェルターでした。当日は、アメリカ兵捕虜とガードが4人、それと包装された肉が幾らか。他のガードは休暇で家に戻っていて、爆撃の犠牲になりました。(汗)ビリーが見た裸の女の子達も、シェルターが十分深くなかったので犠牲に。。
翌日の昼まで爆撃が続きました。(
Wikiによれば、第1波で後片づけに出た人を狙い、その後もう1度狙い、と、執拗に攻撃されたそうです(汗))ようやく外に出た時、空は真っ黒、太陽はピンの頭のよう、街は月のように鉱物以外何も見えず、近くにいる人以外は死体だけ。。So it goes.
(So it goes.には(汗)という意味もありそうだ(汗))
その時、生き残ったドイツ人の4人のガード達が動いている様子が、まるでカルテットのサイレントフィルムのように、時々口パクしながら歌っているかのように見えました。
「お話聞かせて」Montanaがビリーにせがみます。今Montanaは妊娠6ヶ月。ビリーは、ドレスデンが破壊されたのは、1945年2月13日…と、話を始めます。
床屋カルテットにそっくりだった4人のガードの事とか、フェンスのなくなった家畜置き場、屋根や窓がなくなった家々、丸太のような物があちこちに転がっている…(実は焼死した人々(合掌))建物に使われていた材木が消え、石は崩れ落ち、他の建物も破壊し尽くされ「まるで月のようだった」
ガードはアメリカ兵に4列に並ぶよう言います。彼らが宿舎だった所へ戻ると、ほとんど灰と溶けたガラス。そして、食べ物、飲み物、生き残りもない事を知ります。生き残るには、瓦礫を越えて行かなくてはなりません。
(これ原爆じゃなくて良かったですね。生き残れたら、とりあえず大丈夫だもんねぇ)
瓦礫は遠くで見るほど平らではなく、とても危険でした。この町に住んでいた人は、誰であろうと皆死に絶えたようでした。
アメリカの空軍機が来ました。彼らは動く物を捜しています。ビリー達を見つけると、マシンガンを撃ってきました。すんでの所でセーフ。。しかし彼らは、川で動いていた誰かを撃っていました。(滝汗)
ビリー達は郊外で空襲に遭ってないビジネスホテルに到着。ホテルオーナー達はドレスデンが失われた事を知ってます。彼らは燃え盛る町を見て、砂漠のへりにいるという事をわかってます。そこへ4人のガードが100人のアメリカ人を連れて登場したわけです。宿の主人が、他にも誰か来るのかと尋ねると、ガードは、我々は難しい道を選んで来た。他に生きている物とは会わなかった、と、答えます。
宿の主人はアメリカ兵を厩に案内し、スープと代用コーヒーとビールを出して、「おやすみなさい」と言ってくれました。(ドイツの人は寛大だねぇ…これがドレスデンでなく東京だったら、100人のアメリカ兵捕虜はどうなっていた事やら(滝汗))