12月10日。
諏訪赤十字病院、五階デイルームは
諏訪湖を一望する見晴しが最高の場所です。
対岸の向こうには雪に輝く北アルプスが見えるのですが、
この日は前日までの晴れと打って変わって盆地は終日雲に覆われていた。
「手術は午後4時半までを予定しています」。
つき添いは5階のエレベータまでだ。
緊急連絡用にPHSを渡されて、
手術が終わるまで建物の中に居るように言われた。
朝8時半に病院入りして、終日ほとんどをこのデイルームで過ごした。
長い待ち時間に、カミさんを残して私は短時間でも諏訪湖畔を撮り歩くこともできる。
と思っていたが、曇天の事もあってか、外に出る気持ちになれなかった。
身内の手術が決まったのは1ヶ月ちょっと前の事だった。
このまま放置した場合の事。手術を行うリスクについて。
医師の説明は淡々と進み、予定のごとく手術の道を選んだ。
手術が近づき具体的になるにつれ、この手術が大変なものであることを実感した。
肋骨を外して、心臓を止めて人工心臓に(そうしないと手術は出来ない)。
全身麻酔は自力で呼吸できなくなるので肺に管を入れて空気を送る。
脳梗塞のリスク。細菌感染のリスク・・。 本人ならずとも緊張が高まります。
でもこんな閉じ込められた空間だから出来たのかもしれない。収穫があった。
カミさんが待ち時間にと持ってきた「火花」を読み切ったことだ。
良い本を読んだという気持ちになれた。
実に真面目な本だ。真面目すぎるくらいに純粋な切なさも感じる。
お笑いという芸人の世界を舞台にしているが、
お笑いとはを追及して、地獄まで見てしまう人。
才能があるからといって報われず、努力したからといって報われず。
常に自分の居場所を模索してもがく。
誰もが抱く、社会での自分探しと立ち位置探し。
普遍性のある問題がテーマになっていると思いました。
4時半ちょうどに、PHSが鳴った。
手術が終わってICUで面会できるという。
チューブだらけの当人が居た。
おびただしい数の計器モニターが点滅している。
「出血も少なく、輸血はしませんでした」。「心拍も良いですよ」。
「明日の午前中には意識が戻ると思います」。
長い一日の肩の荷がひとまず降りた。