中国の台湾武力統一論は、いくつかの文書によっている。
①解放軍が2020年台湾武力侵攻計画あることに基づく。この計画は、意図的にリークされたという説がある。
アメリカの保守派シンクタンク「プロジェクト2049」の研究員イアン・イーストン氏(Ian Easton)が新著『中国の侵略脅威』(TheChinese invasionthreat)で、中国人民解放軍の内部資料「2020年台湾武力侵攻計画」を紹介した。そして、解放軍資料は中国側がわざとリークして台湾の法理独立をけん制するための工作だというが、中国はすでに台湾内部で政治勢力や暴力団を通じて硝煙のない戦争をしている。イアン・イーストン氏も実際2020年の武力侵攻の可能性は低いと述べているが、中国は台湾の武力併合を排除しないと宣言しており、武力侵攻の可能性は当然中国共産党政権の選択肢の一つであることを認識しなければならない。それにも関わらずアメリカの政治家たちは台湾海峡の危機に関心が薄いと著者は嘆いている。
②中国の民間シンクタンクに所属する政治評論家で、元中央党校機関紙・学習時報編集者の鄧聿文による論文が1月3日のサウスチャイナモーニングポストに掲載されたが、それによれば、中国は2020年に台湾を武力で統一する可能性がある、と改めて指摘している。
③政治的背景からの推論:、これまで曖昧模糊としてきた台湾統一のタイムスケジュールは、第19回党大会の“新時代”目標の一つとして“祖国統一”の実現が打ち出されたことではっきりしてきた。習近平の計画では2050年ごろまでに中華民族の偉大なる復興を実現するということだが、そのためには遅くとも、次の台湾総統選が行われる2020年までに台湾をコントロール下に置かねばならない。台湾統一以前に、“復興”などありえないからだ、という。2020年というのは、中国が二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となる。さらに、今は中国に比較的融和的にみえる米トランプ政権だが、昨年末に中国とロシアに対する定義を「戦略的ライバル」とする国家安全戦略を公布し、台湾との緊密関係を維持する姿勢を改めて打ち出したことを受けて、中国としては武力を使ってでも早期に台湾統一計画を実現する必要がある、と考えたかもしれない。
いずれにしろ、台湾統合の問題は、尖閣列島、ひいては沖縄の課題にも続いて大きく影響する。日本政府は当然、この話は把握して対応策は練っているだろう。実際、防衛省は「中国安全保障レポート2017― 変容を続ける中台関係」なるものを発表しているから、対策を検討していることは明らか。しかい大新聞はこの問題を全く報道していない。