計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

天気と博打の経済学

2018年06月07日 | 経済・金融気象分野
 北陸地方も、そろそろ梅雨入りが近づいてきました。

 梅雨前線の位置がちょっとズレるだけで、地域の空模様は大きく変わります。メディア用天気原稿の影の担当者としては、神経をすり減らすシーズンの到来です。日々の予報があたかも博打のように思えてくる心境です。

 最近、天気に保険を掛ける「天候デリバティブ」というのは、「天気と博打の経済学」のようなものだと感じています。保険もそもそも「不幸な状況に見舞われるかどうか」の博打です。金融商品も資産を賭けた博打です。(私の大好きな)時代劇でお馴染みの「丁半」も博打です。実は、原理的(数学的)には全て「確率過程」なのです。

 それでは、保険や金融商品とギャンブル(丁半など)の違いは何か、と言いますと、それは「実用性娯楽性の違い」ではないかと思います。

 保険は「万が一への備え」、金融商品は「資産を増やす」という実用的な意味を持つのに対し、ギャンブルは単に娯楽・道楽としての意味合いが強いのです。どちらも本質的には「確率論」の話ですが、人間との関わり方やその意味合いに応じて、実用的であったり、娯楽であったりするのです。

 また、保険や金融商品は、エビデンスを基に設計された(実用的な)商品です。このエビデンスを与えているのが、数学や物理学に基づく「金融工学」の理論です。直観とインスピレーションで、それこそ適当に「丁!」だの「半!」だのとやっているわけではありません。

 さて、「天候デリバティブ」は「天気の動き」を賭けています。言うなれば「天気を対象にした博打」になります。さらに、その結果として「経済的な見返り」を期待しています。それこそまさに「天気と博打の経済学」です。しかし、博打でありながら「天候リスクを定量的に評価」している興味深い研究対象です。

 ここ2ヶ月ほど天候デリバティブの勉強に取り組んでいました。確率的に変動する金融資産(原資産)を仮定して、そこから派生するデリバティブ商品(コール・オプション)の価値の変動をコンピューターで計算する手法を検討しておりました。

 これをベースに天候デリバティブのシミュレーションに発展させることを目指しておりますが、それは当分先の話になりそうです。

(p.s.)
 私は競馬・競輪・パチンコ・パチスロなどのギャンブルは嗜みません。興味があるのは、あくまで「確率論(数学)」の方です。念のため。

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